軟骨炎症性疾患の診断と治療体系の確立

文献情報

文献番号
201711095A
報告書区分
総括
研究課題名
軟骨炎症性疾患の診断と治療体系の確立
課題番号
H29-難治等(難)-一般-044
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
  • 天野 宏一 (埼玉医科大学 医学部)
  • 末松 栄一(国立病院機構九州医療医療センター)
  • 村上 孝作(京都大学医学部附属病院)
  • 佐野 統(兵庫医科大学 医学部)
  • 田中 良哉(産業医科大学 医学部)
  • 峯下 昌道(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 川合 眞一(東邦大学 医学部)
  • 武井 正美(日本大学 医学部)
  • 川畑 仁人(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 遊道 和雄(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科)
  • 清水 潤(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 RPなど軟骨炎症性疾患は希少性ゆえに本邦における疫学臨床情報は不十分であり、診断治療のための指針も作成されていない。RPでは呼吸器、心血管系や、中枢神経系の臓器病変を持つ患者は予後不良であり診断、治療法の標準化・広報が急務である。本研究は疫学調査や厚生労働省の個人票データなどによる患者臨床情報を用いて該当3疾患における診断・治療のガイドライン作成を第一の目的とする。
 我々は、これらの解析を通じて各合併症間に相関があることに気づき、相関検討を実施した。その結果RPは「耳介軟骨を中心とした患者群」と「気道軟骨を中心とする患者群」に二分されることを報告した。
 本年度は、本邦RP患者を耳軟骨炎群と気道軟骨炎群に分け、群間検討をすることで患者重症度に寄与する因子を選別した。
研究方法
(疾患群の定義)耳介軟骨炎群は耳介軟骨炎があり気道軟骨炎がない患者、気道軟骨炎群は気道軟骨炎があり耳介軟骨炎がない患者とした。(群間検討)主要臨床症状や検査所見異常の有無を、それぞれ1および0として表を作成。群間検討をt検定にて実施した。p<0.05を有意とした。群間検討の結果を受けて、新規にリクルートした患者22名の血清MMP3濃度をElisaにて測定した。
結果と考察
 239名の患者のうち、耳介軟骨炎群には118名(49.4%)、気道軟骨炎群には47名(19.7%)が含まれた。興味深いことに、4名を除いて残りの70名(29.3%)は耳軟骨炎と気道軟骨炎を合併しており、この群を「合併群」として3群比較を実施した。現在の年齢、発症年齢、男女比に3群間に有意差を認めなかったが、合併群の罹病期間(平均5.7年)が耳介軟骨炎群(平均4.1年)に比較し有意に長期であった。同様の傾向は合併群と気道軟骨炎群(平均4.8年)の間にも認められた。
 「耳介軟骨炎群」と「気道軟骨炎群」との比較では、耳介軟骨炎群にて、有意に結膜炎、関節炎、中枢神経障害の合併が多かった。気道軟骨炎群では有意に鞍鼻の合併が多く、進行性病態を示す頻度や生物製剤の使用例数が高かった。
 .「耳介軟骨炎群」と「合併群」との比較では、耳介軟骨炎群にて有意に結膜炎と中枢神経障害をきたす症例が多かった。合併群においては鞍鼻や心血管合併症をきたす症例が多いほかに、進行性病態、MMP3高値、生物製剤の使用を示す頻度が高く、さらには罹病期間が長いという結果が得られた。
 「気道軟骨炎群」と「合併群」との比較では、合併群にて心血管合併症が有意に多いという所見のみであった。
 新規にリクルートした22名の患者の血清MMP3濃度測定の結果は、耳介軟骨炎群および気道軟骨炎群に比較して、有意に合併群の濃度が高値であった。
 今回の研究の結果以下のことが判明した。①耳介軟骨炎群には約5割、気道軟骨炎群には約2割の患者が含まれる。②残りの3割は気道軟骨炎と耳介軟骨炎の両方を合併している。③耳介群には中枢神経障害や心血管合併症が多い(頻度は低いが合併すると重症化)。④気道軟骨炎群および合併群には全般に予後不良例が多い、等を発見した。
 近年、フランスの研究チームもRPにおける同様の群間検討を実施している。その研究においても、臨床症状によるクラスタリング解析を実施したのちに、3群に患者を分類している。中でも心血管合併症と血液疾患合併する群が存在し、予後が不良であるとしている。
 そのフランスの研究者らは我々の研究と同様に、各症状の有無における線形回帰を実施・報告した。その結果は、耳介軟骨炎と気道軟骨炎の罹病に有意差をもって逆相関が認められるというものであった。その他の面でも我々のデータと一致する部分を認め、これらの所見はRPの病態と密接に関連するものと考えられる。
 興味深いことにフランスの研究と我々の研究に共通する所見として、気道軟骨炎群には心血管合併症がみられていない。機序の検討が待たれるところである。
結論
 平成30年度は、再度全国主要機関を介してRP疫学調査を実施する予定である。患者動態の新規把握とともに、腎合併症の現状について解析する。
 現在の診断基準は1970年代に作られたもである(マクアダムスとダミアニの診断基準)。診断項目としては、疾患特異的なバイオマーカーが欠落するため、軟骨炎の部位別の有無の把握が中心である。そこで我々は本年度、前述した研究結果を診断基準に織り込みながら改定を図り、本邦での診断ガイドの作成を試みる。すなわち気道群と耳介群の存在を診断ガイドに記載する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711095Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 540,830円
人件費・謝金 1,607,087円
旅費 124,030円
その他 1,190,053円
間接経費 1,038,000円
合計 4,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-02-07
更新日
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