先天性呼吸器・胸郭形成異常疾患に関する診療ガイドライン作成ならびに診療体制の構築・普及に関する研究

文献情報

文献番号
201711092A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性呼吸器・胸郭形成異常疾患に関する診療ガイドライン作成ならびに診療体制の構築・普及に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-041
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 規朗(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 小児外科)
研究分担者(所属機関)
  • 田口 智章(九州大学 大学院医学研究院 小児外科分野)
  • 早川 昌弘(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 奥山 宏臣(大阪大学 大学院小児成育外科)
  • 照井 慶太(千葉大学医学部附属病院  小児外科)
  • 甘利 昭一郎(国立成育医療研究センター 周産期母性診療センター)
  • 増本 幸二(筑波大学 医学医療系小児外科)
  • 漆原 直人(静岡県立こども病院 小児外科)
  • 岡崎 任晴(順天堂大学 医学部)
  • 稲村 昇(近畿大学医学部 小児科学教室)
  • 豊島 勝昭(神奈川県立こども医療センター 新生児科)
  • 古川 泰三(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 岡和田 学(順天堂大学 小児外科)
  • 黒田 達夫(慶應義塾大学 医学部)
  • 広部 誠一(東京都立小児総合医療センター 外科)
  • 渕本 康史(慶應義塾大学 小児外科)
  • 松岡 健太郎(獨協医科大学埼玉医療センター 病理診断科)
  • 野澤 久美子(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 放射線科)
  • 前田 貢作(神戸大学大学院医学研究科 小児外科学分野)
  • 西島 栄治(社会医療法人愛仁会高槻病院 小児外科)
  • 守本 倫子(国立成育医療研究センター 感覚器形態外科部耳鼻咽喉科)
  • 肥沼 悟郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 二藤 隆春(東京大学 医学部附属病院)
  • 藤野 明浩(国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部)
  • 小関 道夫(岐阜大学 医学部附属病院)
  • 上野 滋(東海大学医学部 外科学系小児外科学)
  • 川上 紀明( 国家公務員共済組合連合会名城病院 整形外科/脊椎脊髄センタ)
  • 渡邉 航太(慶應義塾大学医学部  整形外科学教室)
  • 山元 拓哉(鹿児島大学 整形外科)
  • 小谷 俊明(聖隷佐倉市民病院 整形外科)
  • 鈴木 哲平(国立病院機構神戸医療センター 整形外科)
  • 佐藤 泰憲(千葉大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、先天性呼吸器・胸郭形成異常疾患である先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫(リンパ管奇形)・リンパ管腫症、肋骨異常を伴う先天性側弯症につき、診断基準や重症度分類を整備したうえで、学会等と連携しながら診療ガイドラインを整備し、長期的なフォローアップ体制を構築し、小児から成人への移行期医療を推進しながら、難病拠点病院と連携した適切な診療体制を構築することである。
研究方法
本研究では先天性呼吸器・胸郭形成異常疾患として5つの疾患、すなわち先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症、肋骨異常を伴う先天性側弯症を取り上げ、各疾患について研究分担者が統括責任者となり研究を遂行した。先天性横隔膜ヘルニアについては、本研究班に参加している15施設の症例について、昨期に構築したREDCapを用いた症例登録システムの稼働を開始し、AMED研究班との研究連携を開始した。先天性嚢胞性肺疾患については、先天性嚢胞状腺腫様肺形成異常(CPAM)のみを単独で抜き出して、CPAMを特定するための臨床的、病理学的要件を検討した。これに従って、新たなCPAMの診断基準を作成し、その疾患個票も合わせて見直した。また、診療ガイドラインについては、10題のクリニカルクエッションのうち、昨期に続く重要課題について検討した。気道狭窄については、16個のクリニカルクエッションを選定し、文献検索を行った。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症については、リンパ管拡張症も研究対象として含めたうえで、指定難病や小児慢性特定疾病の助成対象の拡大や整理を提言した。また、社会への情報還元の一貫としてホームページの全面改訂を行った。肋骨異常を伴う先天性側弯症については、発生頻度、ギプス装着効果、6分間歩行テスト、Dynamic MRIによる解析、患者立脚型アンケート調査の準備などを行った。
結果と考察
先天性横隔膜ヘルニアでは、症例登録システムに参加する15施設において2011-2016年に出生した446例の症例が登録された。今後は、各症例の長期的な身体的・神経学的予後も登録され、解析可能となる見込みである。また、国際的なCDH研究グループとの共同研究を開始した。先天性嚢胞性肺疾患では、診療ガイドラインにおいて複数肺葉罹患症例に対して肺全摘は行わないことを提案する推奨文が策定された。また、先天性肺気管支形成異常(CPAM)の診断基準が再策定され、新たな個票がまとめられた。気道狭窄では、クリニカルクエッションに対する文献検索と二次スクリーニングが完了した。また、先天性気管狭窄症及び先天性声門下狭窄症が指定難病に認定された。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症では、ウェブサイトのリニューアルとコンテンツの全面改訂を行った。また、難治性リンパ管異常に対するシロリムス治験が開始され、データベースを利用する見込みである。肋骨を伴う先天性側弯症では、先天性脊椎奇形を伴う胸郭不全症候群の発生率の再確認と6分間歩行テストの臨床的意義などが再確認された。また、ギプス治療の側弯悪化抑制効果が確認された。
かかる難治性希少疾患では、症例数の少なさからエビデンスレベルの高い研究が行われている場合が非常に少なく、「Minds 2014診療ガイドライン作成の手引き」に従って系統的文献検索を行っても、適切な文献が見当たらない場合が多かった。本研究を通じて、このような難治性希少疾患に対する診療ガイドラインを作成することの困難さが実感された。研究が対象とする先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症、肋骨変形を伴う脊椎側弯症などのうち、半数以上の疾患でこれまで診療ガイドラインが作成されたが、難治性希少疾患であるがゆえに、推奨文のエビデンスレベルはいずれも低いものに留まった。今後はさらに科学的根拠の高い研究を企画・立案して臨床実態の解析を行いながら、指定難病や小児慢性特定疾病の指定を通じて本症の社会保障制度を充実させるとともに、患者支援のための診療体制を確立することが重要と考えられた。
結論
難治性希少疾患である先天性呼吸器・胸郭形成異常疾患、すなわち先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症、肋骨変形を伴う脊椎側弯症について、さらなる症例の蓄積と科学的根拠を高めるための臨床研究の遂行によって、エビデンスレベルを高めるとともに、本症の社会保障制度を充実させながら、患者支援のための診療体制を確立することが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711092Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,100,000円
(2)補助金確定額
9,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,581,115円
人件費・謝金 190,000円
旅費 3,098,513円
その他 1,132,565円
間接経費 2,100,000円
合計 9,102,193円

備考

備考
自己負担2,192円、預金利息1円があったため

公開日・更新日

公開日
2019-03-25
更新日
-