脊柱靭帯骨化症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201711091A
報告書区分
総括
研究課題名
脊柱靭帯骨化症に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-040
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大川 淳(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 幹季((独)労働者健康安全機構 大阪労災病院 )
  • 中嶋 秀明(国立大学法人福井大学 医学系部門地域高度医療推進講座)
  • 川口 善治(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部(医学))
  • 山崎 正志(国立大学法人筑波大学 医学医療系整形外科)
  • 中村 雅也(慶應義塾大学 医学部 )
  • 松本 守雄(慶應義塾大学 医学部 )
  • 竹下 克志(自治医科大学 整形外科)
  • 今釜 史郎(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 松山 幸弘(国立大学法人浜松医科大学 医学部   )
  • 芳賀 信彦(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 森 幹士(国立大学法人滋賀医科大学 医学部整形外科)
  • 山田 宏(公立大学法人和歌山県立医科大学 医学部 整形外科学)
  • 遠藤 直人(国立大学法人新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小宮 節郎(国立大学法人鹿児島大学 学術研究院医歯学域医学系)
  • 高畑 雅彦(北海道大学 大学院医学研究院   )
  • 小澤 浩司(東北医科薬科大学 医学部 整形外科学)
  • 村上  英樹(金沢大学 医薬保健研究域医学系 整形外科学)
  • 種市 洋(獨協医科大学 医学部)
  • 山本 謙吾(東京医科大学 医学部医学科   )
  • 渡辺 雅彦(東海大学 医学部外科学系)
  • 藤林 俊介(京都大学 医学研究科 )
  • 田中 雅人(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 )
  • 田口 敏彦(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 中島 康晴(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 鬼頭 浩史(国立大学法人名古屋大学 大学院医学系研究科   )
  • 吉井 俊貴(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 波呂 浩孝(山梨大学 大学院総合研究部医学域整形外科学講座)
  • 古矢 丈雄(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
  • 和田 簡一郎(国立大学法人弘前大学 医学部附属病院)
  • 佐藤 公昭(久留米大学 医学部)
  • 筑田 博隆(国立大学法人群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 海渡 貴司(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 石井 賢(学校法人国際医療福祉大学 医学部)
  • 大島 寧(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 )
  • 藤原  武男(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
14,748,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊柱に靭帯骨化をおこす、後縦靱帯骨化症(OPLL)、黄色靭帯骨化症(OYL)、びまん性特発性骨増殖症(DISH)、進行性骨化性線維異形成症(FOP)の診断基準、重症度分類の作成、診療ガイドライン(GL)の作成、改訂に資するエビデンス集積のため、各疾患に対する多施設研究を中心とした臨床研究を行う。
研究方法
1)ハイリスク脊椎手術における術中脊髄モニタリングのアラームの検証、2)CTを用いた頸椎OPLLにおける全脊柱評価、3)DISHにおける脊椎損傷、4)頚椎OPLL患者における転倒による症状悪化に対する手術の影響、5)胸椎OPLLの手術成績、6)FOP患者のQOL調査など、複数の多施設共同研究を遂行し、医学的根拠を蓄積していく。
結果と考察
1)16施設で行われたハイリスク脊椎手術症例(2432例)に対して行った術中モニタリングに関して感度93.3%,特異度91.0%,陽性的中率35.0%,陰性的中率99.6%であった。神経合併症率は,頚椎OPLLは1.1%,胸椎OPLLは12.0%であった。術中波形回復する割合が高かった疾患は側弯症と頚椎OPLLであり、特に頚椎OPLLは82.1%に回復が見られ、これらの症例の術中モニタリングの有用性が示された。
2)OPLL発生頻度で最も高かったのは、男性でT1(14.9%)およびT1/2(13.6%)、女性ではT1(27.5%)およびT3/4(33.8%)であった。また下位胸椎・腰椎では、男性でL1(5.8%)とT12-L1(14.5%)、女性ではL1とL2(11.3%)およびT12-L1(27.5%)と男性と同じであった。本研究において骨化巣のパターンは性差があることが示された。
3)参加18施設で本損傷に対して治療を行った285例 を受傷高位により頚椎群84例(29.5%)、胸腰椎群201例(70.5%)に分類、男女比は頚椎群では90.5%が男性であり、胸腰椎群の71.1%に比較して有意に多かった。受傷形態は低エネルギー外傷が頚椎58.3%、胸腰椎損傷59.2%で同等であったが、受傷後の診断の遅れは頚椎群では24.0%しか認めなかったのに対し胸腰椎では46.8%と有意に多く認めた。これらから受傷部位によって病態が異なることが示唆された。
4)全国11施設から350例の症例集積を行った。その結果、1年間に1回以上の転倒・転落を経験した患者の割合は、術前171名(49%)から術後98名(28%)と有意に減少し、転倒の際に症状の悪化を自覚した患者は、術前102名(29%)であったが、術後28名(8%)と有意に減少することがわかった。このことから手術治療は外傷を契機とした症状の悪化を予防することが確認された。
5)胸椎OPLL手術115例が前向きに登録され、その手術成績を調査した。術後麻痺は37例 (32%)に認めたが、麻痺出現有無の2群比較では、 OPLL椎間数 (p<0.005)、OLF併存 (p<0.01)、術前JOAスコア低値 (p<0.001)、術前PST陽性 (p<0.001)、手術時間 (p<0.01)、出血量 (p<0.05)、術中エコーで脊髄浮上なし (p<0.05)、術中脊髄モニタリング電位低下 (p<0.0001)に有意差を認めた。術後運動麻痺回復期間はOPLL椎間数が多く、 術前JOAスコアが低く、 出血量が多いと有意に長かった (p<0.05)。

6)FOP患者46名の性別の内訳は男性26名、女性20名であった。46名中41名で遺伝子検査を受けており、うち38名は617G>A (R206H)のcommon mutationを示した。その他の3名はそれぞれ774G>T(2015に研究班が報告)、587T>C(2014に研究班が報告)、982G>A、であった。生年による診断時年齢の違いを調査すると、2007年までに出生した患者では、28名中24名が2歳以降に診断を受けていた(R206H以外の遺伝子変異の3名を含む)のに対し、2008年(研究班設置の翌年)以降に出生した患者では、7名中6名が1歳までに診断を受けていた。16歳以上の患者6名を対象とした横断的なBI調査では、高い年齢ほどBI値は低かった(RS=-0.77, p=0.72)。J-HAQによる機能障害の項目別では、起き上がり、食事、歩行、grip、活動の項目が低いが、2年間の縦断調査で変化がなかった。
結論
靭帯骨化症調査研究班として新たな1年目を終えたが、前体制から引き継いだ多施設研究から多数の結果が出ており、これらを随時まとめて国際誌に報告していく。また研究班で得られた成果を、新たに作成中の診療ガイドラインに反映させていく。

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711091Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,172,000円
(2)補助金確定額
19,164,000円
差引額 [(1)-(2)]
8,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,785,665円
人件費・謝金 2,386,891円
旅費 4,393,871円
その他 4,174,013円
間接経費 4,424,000円
合計 19,164,440円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-03-04
更新日
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