もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断、治療に関する研究

文献情報

文献番号
201711083A
報告書区分
総括
研究課題名
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断、治療に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-032
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宝金 清博(国立大学法人北海道大学)
研究分担者(所属機関)
  • 冨永 悌二(国立大学法人東北大学)
  • 宮本 享(国立大学法人京都大学)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学)
  • 黒田 敏(国立大学法人富山大学)
  • 小泉 昭夫(国立大学法人京都大学)
  • 高橋 淳(国立研究開発法人国立循環器病研究センター)
  • 佐藤 典宏(国立大学法人北海道大学)
  • 数又 研(国立大学法人北海道大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,731,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
もやもや病は1960年代に日本の脳神経外科医が疾患概念を構築した稀少な脳血管疾患である。本研究班の母体となった特定疾患ウィリス動脈輪閉塞症研究班は多数の基礎、臨床研究を行うことにより今日の診療の基盤となる科学的根拠を創出した。
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する政策研究班はもやもや病診断基準の適正化、重症度基準に関するエビデンス構築、QOL調査、診療ガイドラインの適宜改訂を主な課題とする。また、行政機関、関連学会、患者会(もやの会)の組織間コミュニケーションを可能にする国内で唯一の組織である。
本年度は、診療ガイドラインや診断基準に伴う関連学会における承認と成果の出版を主な課題としていた。また、疾患レジストリ構築を進め、病態解明に迫るゲノム研究を促進するとともに、医療費助成の対象とならない軽症例等を含めた登録による疾患の包括的な把握、的確な医療行政への助言を目指す。さらに、診療エビデンスの構築を目的とする複数の多施設共同臨床研究を施行し、それぞれの研究で新たなエビデンスが創出されている。
研究方法
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する研究課題を達成するため、日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本脳卒中の外科学会、及び日本を代表するもやもや病の研究者を招集し研究組織を構築した。分担研究者、研究協力者は、診療に関する科学的根拠の集積に寄与する多施設共同臨床研究の主な研究者で構成されている。研究班会議の開催は当該年度に4回行った。現在進行中の多施設共同臨床研究の進捗状況報告、レジストリの構築に関する議論、ガイドライン改訂に関する事項、等について討議を行った。
結果と考察
本年度は、新診断基準、診療ガイドライン等を主要な関連学会である「日本脳卒中学会」と「日本脳卒中の外科学会」において、正式に審議・承認を受けた1。これまで、本疾患の診断基準・診療ガイドラインは、関連学会との連携のないものであったが、本年度、初めて、関連医学会における学術委員会・理事会の承認を受けた。これは、診療ガイドライン出版(もやもや病ガイドライン2017(改訂版))として学会誌(日本脳卒中の外科学会誌)にも発表された1。難病情報センターのホームページにおける診断基準の記載もこれに準じたものした。
これと並行して、従来から継続的に進めて来た、診療エビデンスの構築を目的とする多施設共同臨床研究、無症候性もやもや病 (AMORE study)、高次脳機能研究 (COSMO japan study)、出血に関するバイパスの予防効果に関する研究 (JAM trial)、高齢者の自然歴に関する研究(MODEST study)などの研究も順調に成果を上げた2。成人の再出血に対する外科的血行再建術の予防効果に関するRandomized control study (Japan Adult Moyamoya Trial)の後、出血に関与する画像診断マーカーchoroidal anastomosisを特定することができた3。保存的治療群の縦断解析によりchoroidal anastomosisの発達が再出血の独立予測因子であることが明らかにされた2。無症候性もやもや病の自然歴を明らかにする多施設共同研究(AMORE)は, 2012年1月1日~2015年12月31日の期間に109症例が集積され、脳卒中イベントの発生を注意深く観察中である。高次脳機能障害の体系的診断化の確立に関する多施設共同研究は患者登録を終了し解析が行われ中間解析において帯状回における優位なベンゾジアゼピンレセプター結合の低下が明らかになりつつある。60歳以上のもやもや病患者の自然歴、治療合併症を検討するMODEST研究は患者登録を継続している。
疾患レジストリの構築はweb登録システムの構築が終了し北海道大学内の倫理委員会において承認された。これにより研究参加依頼施設への、研究計画書、患者同意書等、標準的手続き書の作成を行った。各研究機関の生体試料バンキングと匿名で連結するプラットフォームが完成し、今後症例の蓄積が期待される。

結論
診断基準、重症度基準、診療ガイドラインの関連学会での承認が順調に行われた。疾患レジストリの構築が進みゲノム研究の推進が期待される。発症機序、発症リスク評価など診療に関する科学的根拠は未だ十分とはいえず、クリニカルクエスチョンに答えるための新たな基礎、臨床研究が必要である。現在、もやもや病に関する臨床、基礎研究は日本が世界をリードしているが、診断基準、治療指針の国際標準は確立されていない。このため今後、本研究班で得られた成果に関する情報発信が来年度以降の本研究班の重要な課題の一つとなる見込みである。

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711083Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,750,000円
(2)補助金確定額
8,750,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,750,174円
人件費・謝金 0円
旅費 1,362,356円
その他 1,633,533円
間接経費 2,019,000円
合計 8,765,063円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-03-27
更新日
-