神経皮膚症候群に関する診療科横断的な診療体制の確立

文献情報

文献番号
201711072A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群に関する診療科横断的な診療体制の確立
課題番号
H29-難治等(難)-一般-021
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 倉持 朗(埼玉医科大学医学部)
  • 太田 有史(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 古村 南夫(福岡歯科大学口腔歯学部)
  • 吉田 雄一(鳥取大学医学部)
  • 松尾 宗明(佐賀大学医学部)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 今福 信一(福岡大学医学部)
  • 齋藤 清(福島県立医科大学医学部)
  • 水口 雅(東京大学大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 森脇 真一(大阪医科大学医学部)
  • 林 雅晴(淑徳大学看護栄養学部)
  • 上田 健博(神戸大学医学部附属病院)
  • 中野 英司(国立研究開発法人国立がんセンター)
  • 中野 創(弘前大学医学部)
  • 竹谷 茂(関西医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
19,200,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 中野 英司 神戸大学大学院医学研究科(平成29年4月1日~平成29年6月30日)→国立研究開発法人国立がんセンター(平成29年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
神経皮膚症候群は神経と皮膚を中心に多臓器にわたる症状が出現し,整容上,機能上,生命の危機の問題がある難病で,神経線維腫症1(NF1),神経線維腫症2(NF2),結節性硬化症(TSC),色素性乾皮症(XP),ポルフィリン症(ポ症)が含まれるが,根治療法はなく,患者・家族の治療に対する要望は強い為診療科横断的に研究を推進し,地域差なく適切な診断と最適な治療を全国の患者に提供できる診療体制を構築するための組織的研究を行うことを目的とした.NF1,NF2,TSC,XPについては新しい診療ガイドライン(GL)に沿って小児期から成人期への移行をふまえた最適な診療体制の確立を進め,ポ症については診療GLの策定を進めた.
研究方法
NF1: 結節状蔓状神経線維腫の画像モダリティーによる診断・治療指針の検討, 216名の患者のNF1遺伝子解析,カフェオレ斑(CAM)に対するピコ秒レーザー治療の有用性,35例の骨密度,骨代謝・骨質マーカーと骨折既往との関連性,CAMと蒙古斑(MS)が重なる際にみられるCAM周囲のhalo現象の検討を行った.2001~14の特定疾患個人調査票の新規登録患者3,243例の基本属性,家族歴,発病時期,重症度等を分析した.UMINを用いてNF1のWeb登録システムを作成した.同意を得た新診断基準を満たす15歳以下の患者を登録対象とし,患者数,診断時年齢,症状の年齢別発現率,知的レベル,ADHD, 頭痛について調査した.
NF2: 患者が専門医を受診できる体制を全国で確立するため,全国の脳神経外科基幹病院および連携施設に治療経験数,治療内容,治療専門病院登録の可否などの調査を行い, bevacizumabの有効性を確認する治験の準備をした.
TSC:日本における結節性硬化症の総合的GL改訂版の内容を普及させる活動と臓器別GL策定の準備をした.
XP: 患者の診断ならびに診療録に基づく実態調査,XP-A群患者の剖検例の解析.小児整形外科を対象にリハビリテーション医療の調査. XP症例における頭部MRIにおける灰白質容積の算出,XPの全国調査の詳細な解析を行った.
ポ症: 診療GLの策定と15家系28名についてサンガー法,MLPA法,mRNA解析による遺伝子診断,酵素活性の測定を行った.
結果と考察
NF1: 患者216名中185人に病因と考えられるNF1変異が判明し,NF1変異と臨床症状相関がないことを再確認した.ピコ秒レーザーはCAMに対する効果が期待できる一方で,光音響作用による副作用とコスト面を含めた有用性については検討の余地がある.NF1の病的骨折には骨質劣化が大きく関与している可能性が示唆された.NF1におけるMS上のCAMのhalo現象は必ずしも生じるものではないことが分かった.個人調査票の調査では新規登録患者3,243例のうち1,770例が女性で,約半数に家族歴があった.都道府県により年度別・重症度別の登録状況には大きな相違が見られた.登録時年齢は35歳以上が約半数を占め,青年期以降の症状の進行で受診・登録につながったと考える.登録時の重症度分類は約半数がステージ5で,発病から登録までの期間の長い例では機能障害・悪性末梢神経鞘腫瘍の併発の割合が高く,短い例では高度・進行性の神経症状ありの割合が高い.NF1患者レジストリを立ち上げ班員間でレジストリの使い勝手も討議した.
NF2: bevacizumab治療による腫瘍成長抑制について医師主導治験のプロトコルを作成しPMDAの事前面談を実施した.
TSC: 現段階でmTOR阻害薬による薬物療法は益が害を上回ると判断したが長期的な益と害に関する知見が不足しており,今後の蓄積が必要.副作用の発現率は高いが概ね制御可.効果による医療費減免効果は不明.
XP: 剖検例からXP-Aにおける急性膵炎の存在が示唆され, 糖尿病リスクの評価が今後の臨床的検討課題である.重症型XP-Aでの頭部MRIにおける灰白質容積の算出では5歳以降に急激な低下がみられ,5歳頃から脳萎縮や末梢神経障害が進行していた.患者の年齢分布は10代と60代にピークが有り,各々A群とV型のピークに一致する. 重症度分類の改定を行い,表情と意欲が特に年齢との相関が高かった.
ポ症: 15家系中10家系で原因遺伝子に変異を認め, 9家系を骨髄性プロトポ症,1家系を先天性骨髄性ポ症と診断した。遺伝子解析による病型に応じた診療計画と遺伝カウンセリングが望ましく,その点が診療GLにも記載されるべきであると考えた.
結論
神経皮膚症候群の適切な診断と最適な治療を全国の患者に提供できる診療体制を構築する為の組織的研究を行い, NF1のWeb登録システムとGL紹介のHPの作成, NF2の全国治療体制の構築,XPの実態調査,ポ症の診療GL策定等の成果を得た.

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711072Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,960,000円
(2)補助金確定額
24,471,000円
差引額 [(1)-(2)]
489,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,383,329円
人件費・謝金 3,622,753円
旅費 1,972,394円
その他 3,733,431円
間接経費 5,760,000円
合計 24,471,907円

備考

備考
489,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2019-02-25
更新日
-