角膜難病の標準的診断法および治療法の確立を目指した調査研究

文献情報

文献番号
201711062A
報告書区分
総括
研究課題名
角膜難病の標準的診断法および治療法の確立を目指した調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-011
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(大阪大学大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学))
研究分担者(所属機関)
  • 坪田 一男(慶應義塾大学医学部眼科学教室)
  • 村上 晶(順天堂大学医学部眼科学)
  • 島崎 潤(東京歯科大学市川総合病院眼科)
  • 宮田 和典(医療法人明和会宮田眼科病院)
  • 山田 昌和(杏林大学医学部眼科学教室)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学大学院医学研究科眼科学)
  • 白石 敦(愛媛大学大学院医学系研究科眼科学)
  • 臼井 智彦(東京大学医学部附属病院眼科・視覚矯正科)
  • 山田 知美(大阪大学医学部附属病院未来医療開発部)
  • 川崎 諭(大阪大学大学院医学系研究科眼免疫再生医学共同研究講座)
  • 東 範行(国立成育医療センター眼科・視覚科学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
13,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
角膜は眼球の最前部に位置し、眼球光学系で最大の屈折力を持つため、わずかな混濁や変形であっても著しい視力低下を来す。本研究では難治性の角膜疾患として、無虹彩症、前眼部形成異常、Fuchs角膜内皮ジストロフィ、眼類天疱瘡、膠様滴状角膜ジストロフィの5疾患を対象とする。いずれも希少な疾患で、原因ないし病態が明らかでなく、効果的な治療方法がいまだ確立しておらず、また著しい視力低下を来すため早急な対策が必要な疾患である。
我々はこれまでに作成した診断基準と重症度分類をより質の高いものに改定する。またMindsに準拠した方法でエビデンスに基づいた診療ガイドラインを作成する。これらを医師、患者ならびに広く国民に普及・啓発活動を行うことで、国内における診療の均てん化を図ることを目的とする。さらに対象疾患における視覚の質の実態調査を行い、患者の療養生活環境改善への提案に資することとする。これにより希少難治性角膜疾患の医療水準の向上、予後改善が期待でき、最終的には医療費や社会福祉資源の節約に大きく寄与すると期待される。
研究方法
診療ガイドラインの作成についてはMindsに準拠して行うこととし、ガイドライン統括委員会、診療ガイドライン作成グループ、システマティックレビューチームの3層構造を構築する。また外部評価委員を設定する。
実際のガイドラインの作成に当たっては、まず診療ガイドライン作成グループによりスコープを作成する。スコープ作成の後は、作成したclinical questionに対してシステマティックレビューチームによる文献検索を行う。
視覚の質の実態調査に関しては、NEIが作成したVFQ-25アンケートを用いて行うこととする。このアンケートでは条件設定を厳密に行うことが要求されており、多施設でアンケート実施条件を統一することを目的として標準手順書の作成を最初に行い、それ従ってコールドランを行い問題点を見出し、アンケートを実施する。
また指定難病データベースへの入力、指定難病の認定条件の修正等への協力および対象5疾患の疾患レジストリへの入力についても行うこととする。
結果と考察
H28年度から始まった無虹彩症の難病申請では遺伝子検査が認定に必須であったが、PAX6遺伝子の遺伝子検査を行える施設が全国にほとんどなかったことから、全国の医療現場で少なからぬ混乱が生じた。そこで改めて無虹彩症の診断基準を研究班で見直し、遺伝子検査を行わなくとも認定可能となるように診断基準をやや緩和した。
また診療ガイドラインの作成を行うための体制構築を行い、外部評価委員として2名に協力を仰ぎ了承を得た。ガイドライン作成はまず指定難病である無虹彩症と前眼部形成異常の2疾患から行うこととし、今年度は無虹彩症のスコープの草案を作成した。Mindsに準拠した診療ガイドラインの作成は、希少疾患では強いエビデンスがほとんど得られないことから、一般的な意味からは簡単とは言えない。それにも関わらずMindsのシステムによって診療ガイドラインを作成することが推奨されるのは、作成過程の透明性の担保、権威者の主観や思い込みを可能な限り排除するシステマティックな作成手順、外部評価による適正な修正ということが挙げられる。この点をよく理解したうえで診療ガイドラインの作成にあたりたいと考えている。
VFQ-25アンケート調査は対象疾患患者の視覚の質の実態調査を目的としている。今年度はまず大阪大学にてSOPを作成してコールドランを行い、来院した2名の無虹彩症患者に対してアンケート調査を行った。
計画当初はアンケートを郵送し、患者に自己記入してもらい返送してもらうことを想定していたが、対象疾患患者の視力が不良であることから自己記入が困難な場合があること、自己記入よりも面接式の方がスコアが上がりやすい傾向があること等の理由から面接式で行うこととした。またこの調査では心理的な要因を調整することが重要とされており、質問者の読み上げる速度や声色等の細々とした点についても可能な限り一定にすることが望ましいとされている。またアンケートを行う部屋についても、可能な限り静寂な閉ざされた部屋で行うことが望ましいとされている。実際の臨床の現場においてはこのような環境を得ることは施設によっては難しいが、これらの因子はアンケート結果に強く影響するため可能な限り研究班内で統一したいと考えている。
結論
今年度はMindsに準拠した診療ガイドラインの作成のための体制構築、スコープの草案作成を行った。VFQ-25アンケートによる視覚の質の実態調査については、SOPの作成とコールドランを行い、大阪大学の無虹彩症患者2例でアンケート調査を行った。

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711062Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,000,000円
(2)補助金確定額
17,015,000円
差引額 [(1)-(2)]
985,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,938,164円
人件費・謝金 6,843,566円
旅費 2,883,181円
その他 1,197,726円
間接経費 4,153,000円
合計 17,015,637円

備考

備考
985,000円返還

公開日・更新日

公開日
2019-02-08
更新日
-