ワーデンブルグ症候群の診断基準および重症度分類策定に関する調査研究

文献情報

文献番号
201711058A
報告書区分
総括
研究課題名
ワーデンブルグ症候群の診断基準および重症度分類策定に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 茂木 英明(国立大学法人信州大学 学術研究院医学系 )
  • 西尾 信哉(国立大学法人信州大学 学術研究院医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ワーデンブルグ症候群は常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性疾患であり、症候群性難聴の一つである。聴覚障害および色素異常症を呈することが知られており、毛髪、肌、虹彩などの全身の色素異常、部分白子症や、先天性難聴、眼角離解を呈することが特徴である。また、稀な症状として精神発達遅滞やHirschsprung病を合併する例もある。常染色体優性遺伝形式をとる症候群性難聴の中では最も頻度の高い疾患の一つで、先天性難聴患者の2-4%に見られると報告されているが、現在までに大規模な疫学調査は行われておらず、その実態は必ずしも明確となっていない。
そこで、本研究ではワーデンブルグ症候群に関する疫学調査および遺伝子解析を行い、①遺伝子診断を用いた新しい診断法の確立、②遺伝子診断に基づいた診断基準の確立を目的に全国80施設の共同研究施設を対象に疫学調査研究を行う。本研究では臨床情報データベース(症例登録レジストリ)を構築し、全国の拠点医療機関より患者データを収集するとともに、データベースより得られた臨床的所見(臨床像・随伴症状など)を基に、タイプ毎の臨床的特徴を取りまとめ、適切な治療方針を示す計画である。特に、近年の補聴器・人工内耳の発達により、聴覚障害に関しては医学的介入によるQOLの改善が可能となってきたため、遺伝子診断に基づいたタイプ分類と、分類に応じた適切な介入により聴覚障害を軽減しQOLを向上させることが可能であると期待される。

研究方法
平成29年度は研究計画初年度であることより、診断基準(案)を策定するとともに、データベースに症例登録を行うための患者選定基準を設け、対象患者を明確にした。また、選定された調査項目に関して症例登録レジストリを開発するとともに、信州大学において試験運用を開始し、臨床情報および遺伝子サンプルを収集を行った。
さらに、上記患者選定基準を満たす症例を対象にDNA試料を取得して次世代シークエンサーを用いた網羅的解析を行い、サブタイプ分類を行った。具体的には、現在までにワーデンブルグ症候群の原因遺伝子として報告されている既知原因遺伝子のスクリーニング解析をAMEDのデータベース事業「感覚器障害領域を対象とした統合型臨床ゲノム情報データストレージの構築に関する研究班」との連携で行った。
また、ワーデンブルグ症候群の主要な症候の浸透率(有症率)を明らかにすることを目的に、システマティックレビューを行い、過去に報告のある家系の情報を集積するとともに、原因遺伝子の種類毎の浸透率(各症候の有症率)を明らかにした。
結果と考察
平成29年度は研究初年度であることより、海外の診断基準を参考に臨床症状を基盤にした診断基準(案)を作成した。この際、臨床診断に遺伝子診断を加え特異度を高めるよう改定を加えた。これは、前項までに記載したように、ワーデンブルグ症候群の各症候の浸透率(有症率)が100%の完全浸透にならない場合が多いことより、臨床症状の組み合わせだけで診断を行うと、部分的に症候を有している症例を見逃す恐れがあると考えられるためである。
また、信州大学にて症例登録レジストリの試験運用を開始するとともに、登録を行った18家系27例を対象に、AMED班との連携で既知原因遺伝子のスクリーニング解析を行った。その結果、12家系(67%)より原因遺伝子変異を同定することに成功した。
また、ワーデンブルグ症候群の主要な症候がいずれも不完全浸透であることより、システマティックレビューを行い、過去に遺伝子解析の報告のある家系の情報を集積するとともに、原因遺伝子の種類毎の浸透率(各症候の有症率)を明らかにした。その結原因遺伝子の種類により、症候の浸透率が大きく異なることが明らかとなった。
今後全国規模で症例収集を行うことで、効率的にサブタイプ分類が行われ、重症度分類の確立や治療方針確立のためのエビデンスが得られると期待される。
結論
平成29年度は、ワーデンブルグ症候群の各種症状の臨床的特徴と重症度、また補聴器・人工内耳などの治療効果を解析可能となるよう臨床情報調査項目の選定を行った。また、選定した調査項目を元に症例登録レジストリを開発し、信州大学での試験運用を開始した。また、診断基準(案)に合致する症例の登録を行うとともに、AMED班との連携により遺伝子解析を実施するとともに臨床情報の分析を行った。また、ワーデンブルグ症候群のシステマティックレビューを行い、各症状の浸透率の詳細に関して検討を行った。
次年度以降、全国の共同研究施設から症例登録を進めることで、レジストリに集積されたデータを基に詳細な検討を行うことで、臨床実態の把握が行われるとともに適切な医学的介入のための基盤となる情報が得られると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711058Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,690,000円
(2)補助金確定額
1,690,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,300,000円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 390,000円
合計 1,690,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
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