乾癬性関節炎の不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発見と治療を目指した診療ガイドライン策定に関する研究

文献情報

文献番号
201711055A
報告書区分
総括
研究課題名
乾癬性関節炎の不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発見と治療を目指した診療ガイドライン策定に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
朝比奈 昭彦(東京慈恵会医科大学  医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 秀己(東京慈恵会医科大学・医学部)
  • 梅澤 慶紀(東京慈恵会医科大学・医学部)
  • 照井 正(日本大学・医学部)
  • 大槻 マミ太郎(自治医科大学・医学部)
  • 佐野 栄紀(高知大学・医学部)
  • 山本 俊幸(福島県立医科大学・医学部)
  • 加藤 則人(京都府立医科大学・大学院医学研究科皮膚科学)
  • 森田 明理(名古屋市立大学・大学院医学研究科)
  • 奥山 隆平(信州大学・医学部)
  • 亀田 秀人(東邦大学/医療センター大橋病院・医学部医学科 内科学講座膠原病学分野)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学・聖路加国際病院・アレルギー膠原病科)
  • 金子 敦史(国立病院機構 名古屋医療センター・統括診療部 整形外科)
  • 福田 国彦(東京慈恵会医科大学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学・医学部医学科 社会医学講座医療政策・経営科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,545,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乾癬性関節炎(PsA)は,従来まれで進行も緩やかであると考えられていたが,実際は進行が急速で,関節障害が日常生活や就労の支障となって労働生産性やQOLの著しい低下を引き起こす。したがって,早期の診断と治療介入が必須であり,本邦の診療実態の把握とともに,診療ガイドライン策定が望まれる。当研究班は,そのためのデータの収集とともに,日本人における不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発見と治療を目指した診療ガイドライン策定と国民への知識の普及を最終目標とする。
研究方法
①各標榜医のPsA治療スタンスの意識調査:皮膚科,整形外科,リウマチ科など各専門医がPsAをどのように診療し,また他科との連携が取れているかに関して国内のデータがない。こうした診療の実情を把握し,現場における問題点や医師の希望,意見を抽出できるアンケートの作成を行った。②PsAガイドラインの作成:本研究の目標であるガイドラインの作成にあたり,以下の方針を決めた。皮膚科医に役立つものとして日本皮膚科学会雑誌へ公表すること,科の枠を超えて横断的に使用できること,日本皮膚科学会ガイドライン委員会とリンクして作業すること,他のガイドラインと整合性を持たせること,指定難病である強直性脊椎炎(AS)と指定が検討されている関節型の若年性特発性関節炎(JIA)につき,疾患の相互関係を整理すること,である。討論を通じてガイドラインの方向性と具体的な作業方法を決定し,SCOPEおよびCQの作成を行った。③分担研究として,乾癬患者の疫学調査,患者登録カードの作成,血清中の疾患活動性マーカーの解析,PsAを早期に診断し評価するための画像診断に関する研究を行った。
結果と考察
医師に対するPsAの診療実態関するアンケートは,いずれの専門分野からも回答できるよう設問を工夫した。皮疹と関節症状のそれぞれが軽症,重症,あるいは評価困難な場合,連携をどう行うか確認し,また,連携結果の満足度を,自由記載も含めて調査し,具体的な使用薬剤についての設問も設けた。インターネット上で短時間に回答できるようアンケートサイトを作成した。アンケートの解析を通じ,本邦における皮膚科医と整形外科/リウマチ科医のPsAの診療と連携の実態,現時点での診療上の問題点が明らかとなるため,本邦の診療に根差すガイドラインを作成するうえで有益な情報が得られると期待される。次にPsAガイドラインについて,海外では,国をまたがるGRAPPA, 欧州EULARのガイドラインが,recommendationの形ですでに公表されているほか,米国のACR/NPFが同様のrecommendationをドラフトとして公開し,一年以内に確定予定となっている。これら海外のrecommendationを参考にするほか,国内における治療薬の状況を勘案して本邦のガイドラインを作る方針を再確認し,SCOPEを定めた。日常診療における課題や疑問点など,臨床上で重要な事項はCQを策定した。CQごとに執筆担当者を割り振り,作業を開始した。このガイドラインの公表を通じ,本邦のPsA患者の早期発見と治療,QOLの向上が見込まれる。これと並行して,地域の疫学調査を行い,軽症の乾癬患者が通院するクリニックまで調査すればPsAの割合が5.9%と少ないことが分かった。また,PsA患者の臨床像の詳細な検討と,併存疾患,リスク因子,現行の治療法を明らかにするための患者登録ケースカードを,日本乾癬学会も関わる形で作成(改訂)した。今後,基幹病院で使用し,匿名ではあるがデータベースを充実させる予定である。血清中の疾患活動性マーカーについては,ロイシンリッチα-2 グリコプロテイン (LRG) が健常人より乾癬患者では有意に高値で疾患活動性と強く相関し,PsA患者では生物学的製剤治療前後のLRG 変化率がdisease activity score (DAS)28-ESR の変化率と有意な相関を示すこと,一次無効や二次無効の予測に血清LRG のモニタリングが有用であることを見出した。画像診断では,DE-CT iodine mapが単純X線写真で捉えられない付着部炎や滑膜炎などの炎症性変化を捉え,生物学的製剤による治療効果判定に有用であること,治療の前後で定量的集積ヨード量と半定量的スコア値の推移の間に相関性があって治療効果を定量的評価できる可能性が示唆された。
結論
本邦におけるPsAの診療実態と科間の連携を確認するための,医師を対象としたアンケートを作成した。また,PsAのエビデンスや新知見を整理しつつ,PsA診療ガイドラインの策定に向けて,その骨子の確認とCQを作成し,具体的な作業に着手した。本邦のPsAの診療が整備され,患者診療に役立つことを期待する。

公開日・更新日

公開日
2018-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-24
更新日
2018-05-29

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711055Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,700,000円
(2)補助金確定額
1,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,288,676円
人件費・謝金 0円
旅費 153,460円
その他 102,864円
間接経費 155,000円
合計 1,700,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-03-07
更新日
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