多系統蛋白質症(MSP)の疾患概念確立および診断基準作成、診療体制構築に関する研究

文献情報

文献番号
201711052A
報告書区分
総括
研究課題名
多系統蛋白質症(MSP)の疾患概念確立および診断基準作成、診療体制構築に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
山下 賢(熊本大学大学院生命科学研究部 神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 安東 由喜雄(熊本大学 大学院生命科学研究部 神経内科学分野)
  • 青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 勝野 雅央(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 木村 円(国立精神・神経医療研究センター トランスレーション・メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 多系統蛋白質症(multisystem proteinopathy: MSP)は、筋や骨、中枢神経系など多臓器に蛋白凝集体を呈する遺伝性疾患である。封入体ミオパチーや骨Paget病、前頭側頭葉変性症 (FTLD)を合併し、以前は「IBMPFD」と称されたが、筋萎縮性側索硬化症 (ALS)をはじめ多彩な神経症状も呈することから、2013年にVCP(Valosin-containing protein)関連多系統蛋白質症(MSP)と呼ぶ疾患概念が提唱された。しかしMSPの疾患概念は国際的なコンセンサスに至っておらず、診断基準も制定されていないため、単一臓器のみの発症に留まる症例では診断に苦慮する。近年の分子遺伝学の進歩によってMSPの原因遺伝子が同定され、治療を目指した病態研究が進展しているが、一方で正確な診断に基づく疫学や自然歴の情報を得ることが難しく、新規治療法を確立するために必要な臨床研究の実施が困難である。
 本研究の目的は、MSPの臨床診断基準を確立し効率的な診断体制を構築することにより、単一臓器の発症に留まる潜在患者を発掘すると同時に、本疾患の原因遺伝子は中枢神経系および筋、骨変性疾患の原因となるため、共通の病態を有するALSやFTLDなどの神経変性疾患の病態研究に寄与する知見を見出すことである。
研究方法
 本研究において平成29年度に既知の遺伝子変異を有するMSP患者の臨床情報を解析し、臨床診断基準と重症度分類を策定するとともに、MSPが疑われる患者に対して包括的な診断体制を構築する。平成30年度は、診断基準に基づいて全国のMSP患者の実態調査を行い、その臨床および疫学的情報を収集するとともに、指定難病データベースの運用に必要な臨床パラメーターを同定し、将来的な臨床試験の基盤を確立する計画である。
結果と考察
 平成29年度の計画として、研究代表者および分担者施設において経験したMSP症例を蓄積し、文献レビューを通してMSP各型の表現型を明らかにし診断基準の暫定案を作成した。
 山下および安東らはmatrin 3 (MATR3)遺伝子変異を有するMSP5姉妹例について報告し、青木らは、常染色体優性遺伝形式を示す純粋封入体ミオパチー2家系の原因としてMSP3に関連するhnRNPA1変異を見出した。勝野らは、MSP1の原因であるVCP遺伝子変異を認めた4家系の臨床像を解析した。木村らは、同じくMSP1の原因となるVCP遺伝子変異を有する4症例について報告した。
 上記解析を踏まえて、MSP診断基準案(下記)を作成し、A. 症状およびB. 家族歴(遺伝学的情報)、C. 検査所見、D. 凍結筋病理学的所見、E. 骨病理学的所見、F. 責任遺伝子の変異の確認、G. 他の類縁疾患の除外、の各項目を設定した。診断カテゴリーとして、Aのいずれか1つ以上と、FとGを満たすものをDefinite、Aのいずれか2つ以上と、BとGを満たすもの、あるいはAのいずれか2つ以上と、それに対応するCのいずれかと、Gを満たすもの、Aのいずれか2つ以上と、DもしくはEのいずれかと、Gを満たすものをProbableと定義し、これらを対象とすることを検討している。今後ブラッシュアップを通して、最終的な診断基準を確定予定である。
結論
 既知の遺伝子変異を有するMSP症例の臨床的解析を踏まえて、MSP診断基準案を作成した。今後ブラッシュアップを通して確定された診断基準に基づいて全国のMSP患者の実態調査を行い、その臨床および疫学的情報を収集するとともに、指定難病データベースの運用に必要な臨床パラメーターを同定し、将来的な臨床試験の基盤を確立する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711052Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,700,000円
(2)補助金確定額
1,683,000円
差引額 [(1)-(2)]
17,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 982,258円
人件費・謝金 186,126円
旅費 121,040円
その他 2,376円
間接経費 392,000円
合計 1,683,800円

備考

備考
17,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2019-02-20
更新日
-