文献情報
文献番号
201711046A
報告書区分
総括
研究課題名
カーニー複合に関する疫学調査と診断基準の普及に向けた調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H28-難治等(難)-一般-031
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
向井 徳男(JA北海道厚生連 旭川厚生病院)
研究分担者(所属機関)
- 西川 哲男(横浜労災病院)
- 西條 泰明(旭川医科大学 医学部)
- 棚橋 祐典(旭川医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,018,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
カーニー複合(CNC)は粘液腫、皮膚色素斑、内分泌機能亢進状態を合併した症例をまとめて名付けられた比較的新しい疾患概念で、合併する内分泌疾患から診断に至ることが多いとされる、多発性の家族性腫瘍症候群である。罹患率は不明だが、2001年に海外から診断基準が提唱され、これまで世界で700例以上の報告や症例登録がある
改めて全国調査を実施してCNC患者の本邦における実態把握を行い、診断基準の整合性・有用性を再検討し、診断基準の一層の普及を図り、多彩な症状を呈するが故に診断が遅れる可能性のある本疾患の認知をより一層広めて早期の診断・治療・長期管理など、本邦におけるCNC診療レベルの向上を目指す。
改めて全国調査を実施してCNC患者の本邦における実態把握を行い、診断基準の整合性・有用性を再検討し、診断基準の一層の普及を図り、多彩な症状を呈するが故に診断が遅れる可能性のある本疾患の認知をより一層広めて早期の診断・治療・長期管理など、本邦におけるCNC診療レベルの向上を目指す。
研究方法
本疾患との関連が深いと考えられる内科、循環器内科、内分泌内科、皮膚科、小児科、循環器(胸部)外科、形成外科を標榜する全国の医療機関を対象に調査票を送付し、郵送形式で回答を得た。調査内容は、①CNCという疾患についての認知ついて、②難病指定された事実に関する認知について、③診断症例の有無について、というように単純化して実施した。
また、診断確定に関連して遺伝子変異の解析を依頼されたのが5例あった。5例すべてについてPRKAR1A遺伝子解析をこれまで通りのダイレクトシークエンス法で実施した。
また、診断確定に関連して遺伝子変異の解析を依頼されたのが5例あった。5例すべてについてPRKAR1A遺伝子解析をこれまで通りのダイレクトシークエンス法で実施した。
結果と考察
調査対象となった送付先は合計16,629で、このうち有効な回答が得られたのが3,907(23.5%)であった。
① 疾患の認知度に関して回答が寄せられた3,907のうちCNCを疾患として知らなかったのは3,296(84.4%)にのぼり、疾患として知っていたのは611(15.6%)に過ぎなかった。
② また、疾患として認知していた611のうち難病に指定されたことを知っていたのは203(33.2%)で、知らなかったのは384(62.9%)、不明24(3.9%)であった。
③ CNC症例に関して把握できたのは診断確定例32例(男13例、女16例、不明3例)、疑い例3例であった。診断確定32例のうち遺伝子診断されていたのは15例(46.9%)、難病認定を受けているのは13例(40.6%)であった。32例のうち病状について把握できた29例(男13例、女16例)についてまとめると、実年齢は4~70歳(中央値30歳)で、診断時年齢は1~56歳(中央値23歳)であった。比較的多い病変としては、心粘液腫58.6%、成長ホルモン産生腺腫による先端肥大症51.7%、点状皮膚色素沈着44.8%、皮膚粘液腫41.4%、クッシング症候群37.9%、原発性色素性結節状副腎皮質病変(PPNAD)31.0%、甲状腺病変27.6%、乳房粘液腫17.2%、乳管腺腫13.8%などがあり、これまでの報告に比して皮膚病変がやや少ない割に、心病変が多い傾向であった。内分泌病変については既報と同様、合併例が多い傾向であった。その他、精巣超音波検査での石灰化像が男性患者の23.1%に、卵巣嚢腫が女性患者の12.5%に認められた。家族歴を有する症例が44.8%、遺伝子診断を行ったのは44.8%であった。
次に、PRKAR1A遺伝子解析を実施した5例のうち変異を同定できたのが3例、変異を同定できなかったのが2例であった。同定した遺伝子変異は以下の通りである。
1)c.446-5insT (IVS4-5insT)
2)c.815delC (p.E272N fx25)
3)c.190C>T (p.Q46X)
① 疾患の認知度に関して回答が寄せられた3,907のうちCNCを疾患として知らなかったのは3,296(84.4%)にのぼり、疾患として知っていたのは611(15.6%)に過ぎなかった。
② また、疾患として認知していた611のうち難病に指定されたことを知っていたのは203(33.2%)で、知らなかったのは384(62.9%)、不明24(3.9%)であった。
③ CNC症例に関して把握できたのは診断確定例32例(男13例、女16例、不明3例)、疑い例3例であった。診断確定32例のうち遺伝子診断されていたのは15例(46.9%)、難病認定を受けているのは13例(40.6%)であった。32例のうち病状について把握できた29例(男13例、女16例)についてまとめると、実年齢は4~70歳(中央値30歳)で、診断時年齢は1~56歳(中央値23歳)であった。比較的多い病変としては、心粘液腫58.6%、成長ホルモン産生腺腫による先端肥大症51.7%、点状皮膚色素沈着44.8%、皮膚粘液腫41.4%、クッシング症候群37.9%、原発性色素性結節状副腎皮質病変(PPNAD)31.0%、甲状腺病変27.6%、乳房粘液腫17.2%、乳管腺腫13.8%などがあり、これまでの報告に比して皮膚病変がやや少ない割に、心病変が多い傾向であった。内分泌病変については既報と同様、合併例が多い傾向であった。その他、精巣超音波検査での石灰化像が男性患者の23.1%に、卵巣嚢腫が女性患者の12.5%に認められた。家族歴を有する症例が44.8%、遺伝子診断を行ったのは44.8%であった。
次に、PRKAR1A遺伝子解析を実施した5例のうち変異を同定できたのが3例、変異を同定できなかったのが2例であった。同定した遺伝子変異は以下の通りである。
1)c.446-5insT (IVS4-5insT)
2)c.815delC (p.E272N fx25)
3)c.190C>T (p.Q46X)
結論
カーニー複合に関する全国調査を実施した。有効回答率は23.5%と低かったが、診断を確定している症例を少なくとも32例把握することができた。また、希少疾患という事情もあって疾患認知度については回答者の15.6%とやはり低い結果であったが、疾患概要や診断基準を送付したことで疾患としての認知は高められたものと察せられた。原因遺伝子であるPRKAR1A遺伝子解析を5例に実施し、うち3例に遺伝子変異を同定して診断を確定した。
今後は、本疾患の診断確定のための遺伝子解析を継続的に実施していく体制を整えることが重要だと考えられた。
今後は、本疾患の診断確定のための遺伝子解析を継続的に実施していく体制を整えることが重要だと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2018-05-25
更新日
-