文献情報
文献番号
201711044A
報告書区分
総括
研究課題名
成人発症白質脳症の医療基盤に関する調査研究班
課題番号
H28-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
研究分担者(所属機関)
- 水野 敏樹(京都府立医科大学大学院)
- 池内 健(新潟大学 脳研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
成人発症の白質脳症には、禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症(CARASIL)、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、那須・ハコラ病等が含まれる。本疾患群は、一般に進行性の運動機能障害と認知症を来たし、その療養も長期に亘るために、本人及び家族の負担も大きい。その為に、これらの疾患群の現状の把握と共に、そのニーズ、情報提供の必要性がある。成人発症の白質脳症は、近年、遺伝子の単離が進み、疾患の同定が可能となってきた。しかし、その診断には諸症状がそろうことが必要とされ、早期診断には適切では無い。また臨床症状も多彩で有り、遺伝子診断無しでは生前診断が困難なことも多い。また、遺伝子診断陰性の症例も、まだ数多く存在する。それらの患者さんに対し、十分な医療体制が提供できていない現状がある。本研究申請では、これらの成人発症の白質脳症の早期診断を可能とし、適切な医療提供が行われるようにする事を目的とする。
研究方法
結果と考察に各、疾患毎に示す。
結果と考察
CARASILについては、150例の白質脳症患者の臨床情報とDNAを収集し、HTRA1 遺伝子解析を行った。その結果、CARASILの確定例を2例、優性遺伝性CARASILの確定例を2例見いだした。これら4例について詳細な臨床情報を追加収集した。150例の白質脳症患者の臨床情報とDNAを収集し、HTRA1 遺伝子解析とNOTCH3 遺伝子解析を行った。その結果、非CARASILかつ非CADASILである症例は129例であった。このうち第2親等以内の類症が明らかであり、遺伝性疾患が強く疑われる22症例について、エクソーム解析を追加した。
CADASILについては、新たに遺伝子診断で確定した65例と遺伝子診断で否定された53例を用いて妥当性を検証した結果、従来の診断基準と比較して特異度は劣るものの、97%と高いその感度があることを国際誌ならびに国際学会で報告した。CADASIL scale-Jを検証し、感度83%、特異度77%、AUC0.86でCADASIL陽性例と陰性例を弁別できることを国内学会で発表した。平成30年3月4日、東京八重洲ホールにてAMED研究班(代表冨本秀和教授)と共に患者向けの公開講座を開催した。
HDLSに関しては、遺伝子診断で確定されたHDLSについて、診断基準に合致するか否かを後方視的に検討することで、診断基準の感度を算出した。また、遺伝子診断でNOTCH3変異が確定されたCADASIL症例及び遺伝子診断でCSF1R変異が陰性であった成人発症大脳白質脳症を対象に診断基準に合致するか否かを後方視的に検討することで、診断基準の特異度を算出した。遺伝子診断でHDLSが否定された成人発症の大脳白質脳症106例の臨床・画像情報を検討した。これらの症例の中に、LMNB1関連白質脳症、AARS2関連白質脳症の特徴を有する症例が存在することを見出した。さらにHDLSにて、特徴的な石灰化パターンは、診断に有効であることを明らかとした。またその表現型は、性別によって影響を受ける事を明らかとした。
那須・ハコラ病に関しては新規患者を同定できなかった。
CADASILについては、新たに遺伝子診断で確定した65例と遺伝子診断で否定された53例を用いて妥当性を検証した結果、従来の診断基準と比較して特異度は劣るものの、97%と高いその感度があることを国際誌ならびに国際学会で報告した。CADASIL scale-Jを検証し、感度83%、特異度77%、AUC0.86でCADASIL陽性例と陰性例を弁別できることを国内学会で発表した。平成30年3月4日、東京八重洲ホールにてAMED研究班(代表冨本秀和教授)と共に患者向けの公開講座を開催した。
HDLSに関しては、遺伝子診断で確定されたHDLSについて、診断基準に合致するか否かを後方視的に検討することで、診断基準の感度を算出した。また、遺伝子診断でNOTCH3変異が確定されたCADASIL症例及び遺伝子診断でCSF1R変異が陰性であった成人発症大脳白質脳症を対象に診断基準に合致するか否かを後方視的に検討することで、診断基準の特異度を算出した。遺伝子診断でHDLSが否定された成人発症の大脳白質脳症106例の臨床・画像情報を検討した。これらの症例の中に、LMNB1関連白質脳症、AARS2関連白質脳症の特徴を有する症例が存在することを見出した。さらにHDLSにて、特徴的な石灰化パターンは、診断に有効であることを明らかとした。またその表現型は、性別によって影響を受ける事を明らかとした。
那須・ハコラ病に関しては新規患者を同定できなかった。
結論
CARASILの確定例を2例、優性遺伝性CARASILの確定例を2例見いだした。これら4例について詳細な臨床情報を追加収集し、既報の16例を加えてデータベース作成を完了し、軽症例の診断を可能とするフローチャートを作成できる情報を得た。また、非CARASILかつ非CADASILである症例のうち第2親等以内の類症が明らかであり、遺伝性疾患が強く疑われる22症例について、エクソーム解析を追加した。CADASILに関しては、CADASIL scale-Jを検証し、感度83%、特異度77%、AUC0.86でCADASIL陽性例と陰性例を弁別できることを国内学会で発表した。また、平成30年3月4日、東京八重洲ホールにてAMED研究班(代表冨本秀和教授)と共に患者向けの公開講座を開催した。HDLSに関しては、診断基準の感度、特異度を算出した。またこれらの症例の中に、LMNB1関連白質脳症、AARS2関連白質脳症の特徴を有する症例が存在することを見出した。
公開日・更新日
公開日
2018-05-31
更新日
-