脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究

文献情報

文献番号
201711043A
報告書区分
総括
研究課題名
脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-028
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
冨田 哲也(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院医学研究院)
  • 高木 理彰(山形大学・医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学)
  • 杉本 英治(自治医科大学)
  • 亀田 秀人(東邦大学医学部)
  • 竹内 勤(慶応義塾大学医学部)
  • 田村 直人(順天堂大学医学部)
  • 小林 茂人(順天堂大学医学部)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学)
  • 中島 利博(東京医科大学医学部)
  • 松野 博明(東京医科大学医学部)
  • 西本 憲弘(東京医科大学医学部)
  • 門野 夕峰(埼玉医科大学)
  • 森田 明理(名古屋市立大学)
  • 岡本 奈美(大阪医科大学)
  • 松井 聖(兵庫医科大学)
  • 山村 昌弘(岡山済生会総合病院・)
  • 中島 康晴(九州大学・大学院医学研究院)
  • 川上 純(長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis; AS)は、10代〜30代の若年者に発症する原因不明で、体軸関節である脊椎・仙腸関節を中心に慢性進行性の炎症を生じる疾患であり、進行期には脊椎のみならず四肢関節の骨性強直や関節破壊により重度の身体障害を引き起こす疾患である。脊椎関節炎(Spondyloarthlitis; SpA)はASに代表される体軸性と末梢性SpAを含め全国規模での疫学調査はなく、実態は未だ不明である。以上我が国での背景に基づき、下記の項目を目的とした。
1.難病の疫学研究班で確立された全国疫学調査法による、本邦でのASに代表されるSpAの正確かつ最新の疫学データ収集とその解析。2.本邦の実情に適合した的確かつ精度の高い診断基準を確立し、体軸性SpAの客観的診断の標準化。3.SpA診療ガイドライン策定。4.SpAと鑑別が必要なSAPHO症候群の実態解明。

研究方法
全国疫学調査に関して平成29年度は厚生労働省難病疫学研究班で確立された全国疫学調査マニュアル第3 版に従い調査を行うことを決定した。対象医療施設の抽出、一次調査はがき、二次調査項目の質問票の作成を行った。疾患レジストリーに関しては日本脊椎関節炎学会で先行して行われている登録状況を検討した。体軸性脊椎関節炎診療の手引きについては、ASAS体軸性脊椎関節炎分類基準を基に鑑別、除外診断をリストアップすることで診断に使用できる方向性でまとめる方法を採用した。SAPHO症候群についてはこれまでの歴史的検証、本邦で現状・課題の提起を行い研究班参加施設で特にSAPHO症候群に積極的に取り組んでいる4施設での患者背景分析を行った。SAPHO症候群国際共同比較のためのアンケート調査を実施した。
結果と考察
1)全国疫学調査:調査項目は、AS及びX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non radiographic axial SpA; non-rad ax-SpA)の患者数とした。対象施設は、整形外科・リウマチ科・小児科の3科とし具体的な施設数は、整形外科が1116施設、リウマチ科が290施設、小児科が847施設とした。全体として26.5%の抽出率(2253施設/8488施設)となった。
2)日本脊椎関節炎学会での多施設共同前向きコホート研究:52例のSpAについて検討した。炎症性背部痛は93.8%で認められ、関節炎・付着部炎は62.5%, 44.0%であった。NSAIDsの反応性は84.8%と良好であった。BASDAIの平均は4.3と高い傾向であった。HLA-B27陽性群では、仙腸関節炎のX線所見と発症年齢に有意差が見られた。
3)体軸性脊椎関節炎診療の手引き:AS、non-rad ax-SpAを含め、的確な除外・鑑別診断の必要な疾患について内科的疾患、整形外科的疾患、皮膚科的疾患をリストアップした。特に線維筋痛症については詳細に示した。小児・成人期への移行をスムーズに行うためJSpAの観点から体軸性SpAについて示した。non-rad ax-SpAに関しては “X線基準を満たさない”という日本語を使用することにした。画像読影精度向上のため仙腸関節3次元モデルを作成し2次元画像と比較した。
4)SAPHO症候群:本邦でのSAPHO症候群の疫学調査は我々の渉猟しえた範囲ではみあたらなかった。本邦でのSAPHO症候群は掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis: PAO)が多く、積極的に診療している施設間でもその治療法の選択は異なっていた。
H29年度は全国疫学調査の準備を進めた。ASのみでなく本邦でのnon-rad ax-SpA の実態解明は必須と考えられる。H30年度以降の疫学調査の結果が期待される。
疾患レジストリーに関しては今後可能であればAMEDの難病プラットフォームとの連携の可能性を探る方向で疾患レジストリー構築を進めるべきと考えられた。
整形外科的、内科的、皮膚科的に除外・鑑別すべき疾患のリスト、さらには高頻度に混同される線維筋痛症、小児脊椎関節炎などを取り上げ体軸性脊椎関節炎診療の手引き(案)を作成した。今後作成予定の末梢性脊椎関節炎診療の手引きと合わせ、脊椎関節炎診療の手引きを公開する予定である。
SAPHO症候群は脊椎関節炎と鑑別すべき疾患の一つである。今後国際比較などを通じて実態解明と治療法の標準化が課題であると考えられた。



結論
本邦におけるASに代表される脊椎関節炎の診断基準を作成し、これを基づいた疫学調査・継続的調査が必要である。

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201711043B
報告書区分
総合
研究課題名
脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-028
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
冨田 哲也(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院医学研究院)
  • 高木 理彰(山形大学・医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学)
  • 杉本 英治(自治医科大学)
  • 亀田 秀人(東邦大学医学部)
  • 竹内 勤(慶応義塾大学医学部)
  • 田村 直人(順天堂大学医学部)
  • 小林 茂人(順天堂大学医学部)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学・聖路加国際病院)
  • 中島 利博(東京医科大学医学部)
  • 松野 博明(東京医科大学医学部)
  • 西本 憲弘(東京医科大学医学部)
  • 門野 夕峰(埼玉医科大学)
  • 森田 明理(名古屋市立大学)
  • 岡本 奈美(大阪医科大学)
  • 松井 聖(兵庫医科大学)
  • 山村 昌弘(岡山済生会総合病院)
  • 中島 康晴(九州大学・大学院医学研究院)
  • 川上 純(長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis; AS)は、10代〜30代の若年者に発症する原因不明で、体軸関節である脊椎・仙腸関節を中心に慢性進行性の炎症を生じる疾患であり、進行期には脊椎のみならず四肢関節の骨性強直や関節破壊により重度の身体障害を引き起こす疾患である。脊椎関節炎(Spondyloarthlitis; SpA)はASに代表される体軸性と末梢性SpAを含め全国規模での疫学調査はなく、実態は未だ不明である。以上我が国での背景に基づき、下記の項目を目的とした。
1.難病の疫学研究班で確立された全国疫学調査法による、本邦でのASに代表されるSpAの正確かつ最新の疫学データ収集とその解析。
2.本邦の実情に適合した的確かつ精度の高い診断基準を確立し、体軸性SpAの客観的診断の標準化。
3.SpA診療ガイドライン策定。
4.SpAと鑑別が必要なSAPHO症候群の実態解明。
研究方法
全国疫学調査に関して平成29年度は厚生労働省難病疫学研究班で確立された全国疫学調査マニュアル第3 版に従い調査を行うことを決定した。対象医療施設の抽出、一次調査はがき、二次調査項目の質問票の作成を行った。疾患レジストリーに関しては日本脊椎関節炎学会で先行して行われている登録状況を検討した。体軸性脊椎関節炎診療の手引きについては、ASAS体軸性脊椎関節炎分類基準を基に鑑別、除外診断をリストアップすることで診断に使用できる方向性でまとめる方法を採用した。SAPHO症候群についてはこれまでの歴史的検証、本邦で現状・課題の提起を行い研究班参加施設で特にSAPHO症候群に積極的に取り組んでいる4施設での患者背景分析を行った。SAPHO症候群国際共同比較のためのアンケート調査を実施した。
結果と考察
1)H28年度は強直性脊椎炎全国診療体制の構築を行なった。疫学調査の手法につき検討した。
2)全国疫学調査:調査項目は、AS及びX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non radiographic axial SpA; non-rad ax-SpA)の患者数とした。対象施設は、整形外科・リウマチ科・小児科の3科とし具体的な施設数は、整形外科が1116施設、リウマチ科が290施設、小児科が847施設とした。全体として26.5%の抽出率(2253施設/8488施設)となった。
3)日本脊椎関節炎学会での多施設共同前向きコホート研究:52例のSpAについて検討した。炎症性背部痛は93.8%で認められ、関節炎・付着部炎は62.5%, 44.0%であった。NSAIDsの反応性は84.8%と良好であった。BASDAIの平均は4.3と高い傾向であった。HLA-B27陽性群では、仙腸関節炎のX線所見と発症年齢に有意差が見られた。
4)体軸性脊椎関節炎診療の手引き:AS、non-rad ax-SpAを含め、的確な除外・鑑別診断の必要な疾患について内科的疾患、整形外科的疾患、皮膚科的疾患をリストアップした。特に線維筋痛症については詳細に示した。小児・成人期への移行をスムーズに行うためJSpAの観点から体軸性SpAについて示した。non-rad ax-SpAに関しては “X線基準を満たさない”という日本語を使用することにした。画像読影精度向上のため仙腸関節3次元モデルを作成し2次元画像と比較した。
5)SAPHO症候群:本邦でのSAPHO症候群の疫学調査は我々の渉猟しえた範囲ではみあたらなかった。本邦でのSAPHO症候群は掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis: PAO)が多く、積極的に診療している施設間でもその治療法の選択は異なっていた。
H29年度は全国疫学調査の準備を進めた。ASのみでなく本邦でのnon-rad ax-SpA の実態解明は必須と考えられる。H30年度以降の疫学調査の結果が期待される。
疾患レジストリーに関しては今後可能であればAMEDの難病プラットフォームとの連携の可能性を探る方向で疾患レジストリー構築を進めるべきと考えられた。
整形外科的、内科的、皮膚科的に除外・鑑別すべき疾患のリスト、さらには高頻度に混同される線維筋痛症、小児脊椎関節炎などを取り上げ体軸性脊椎関節炎診療の手引き(案)を作成した。今後作成予定の末梢性脊椎関節炎診療の手引きと合わせ、脊椎関節炎診療の手引きを公開する予定である。
SAPHO症候群は脊椎関節炎と鑑別すべき疾患の一つである。今後国際比較などを通じて実態解明と治療法の標準化が課題であると考えられた。
結論
本邦におけるASに代表される脊椎関節炎の診断基準を作成し、これを基づいた疫学調査・継続的調査が必要である。

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201711043C

収支報告書

文献番号
201711043Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,452,000円
差引額 [(1)-(2)]
48,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,372,450円
人件費・謝金 54,119円
旅費 1,078,320円
その他 909,131円
間接経費 1,038,000円
合計 4,452,020円

備考

備考
48,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2019-02-14
更新日
-