難病患者の福祉サービス活用によるADL向上に関する研究

文献情報

文献番号
201711042A
報告書区分
総括
研究課題名
難病患者の福祉サービス活用によるADL向上に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-027
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院 臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 野田 龍也(奈良県立医科大学 公衆衛生学)
  • 糸山 泰人(国際医療福祉大学 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「難病の患者に対する医療等に関する法律」の成立と施行により、難病患者の支援制度は整備されてきたが、就労系福祉サービス(福祉的就労)については活用されているとは言い難い。われわれはH25~27年度に難病患者および全国の作業所を対象に大規模調査を行い、難病患者で作業所利用経験者はきわめて少なく、福祉的就労を「知らなかった」という回答が70%に及んだ。一方、職場で受けたい配慮として難病患者があげた項目(作業時間・内容・場所、通院・ケア等)は、作業所で「すでに行っている配慮」の項目と一致していた。すなわちすでにある程度環境が整備され、支援ニーズベースの就労系福祉サービス事業所を活用することで、難病患者の日中活動の幅を広げ、ADL、QOL向上を図ることが期待できる。本研究の目的は、主として在宅生活をおくる難病患者が就労系福祉サービス事業を利用し、ADL、QOL向上をはかる手法を開発、提言することである。同時に、難病相談支援センターを中核とし、障害福祉制度周知および地域支援ネットワーク構築の推進に益するために効果的なシンポジウム開催を実施し、そのパッケージ化を試みる。
研究方法
(1)難病患者の就労系福祉サービス活用によるQOL向上に関する研究:サービス利用が決定し、開始直前の16~65歳の難病患者20名の登録と評価を行った。評価はWorld Health Organization Quality of Life 26、World Health Organization Disability Assessment ScheduleおよびBarthel Indexを行った。
(2)福祉サービス活用による就労支援シンポジウムのパッケージ化:基調講演2件(福祉系就労支援および労働・障害者雇用分野研究の成果報告)と、難病相談支援センターが構成するパネルディスカッション(地域の医療、福祉、保健、労働関係者と当事者等をパネラーとする)を基本企画とし、4ヵ所の難病相談支援センターと当研究班でシンポジウムを共催した。
結果と考察
(1)難病患者の就労系福祉サービス活用によるQOL向上に関する研究;20名の対象者に介入前評価を行った。難病患者の就労系福祉サービスの利用がQOL、ADLを変化させるのか、という検討は同サービスのエビデンスを明らかにする上で重要と考える。休職中の就労系福祉サービスの利用については、企業および主治医が「復職に関する支援を受けることにより復職することが適当」と判断し、市町村が「より効果的かつ確実に復職につながることが可能」と判断すれば、支給決定が可能、と今般厚労省より明文化された。就職後に発症し、診断・治療のため休職し、復職を希望する難病患者は多く、現時点ではほとんど活用されていないが今後復職支援の重要な選択肢の一つとなると考えられる。20例について介入前評価を行い、一部介入後評価を開始した。来年度はサービス利用の効果について介入前後のデータを比較検討する。
(2)福祉サービス活用による就労支援シンポジウムのパッケージ化;沖縄県、群馬県、高知県ならびに福岡県で開催し、参加人数はそれぞれ66名、57名、15名、99名であった。福祉的就労を含む難病のある人の就労および就労支援にかかる基調講演に加え、地域で就労を支援する支援者(難病相談支援センター、ハローワーク、就労系福祉サービス事業所、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター)および実際に支援サービスを利用して就職した難病当事者と企業がパネリストをつとめるパネルディスカッションの構成は、参加者に高い評価を受けた。基調講演で総論的な知識を得て、パネルディスカッションで具体的な事例等を知ることは、参加者にとって有意義であり、高評価につながったと考えられる。シンポジウムの開催が、地域の支援ネットワーク拡大を進める契機とするにはさらに検討が必要である。来年度は、シンポジウム企画のパッケージを完成させたい。
結論
難病患者が就労系福祉サービス事業(就労移行支援、就労継続A型、B型)を利用し、ADL、QOL向上をはかる手法を開発、提言することを目的とし、研究2年目である今年度は、(1)難病患者の就労系福祉サービス活用によるQOL向上に関する研究におけるサービス開始時の症例登録および初回評価の事例を20例に増やした。また(2)難病相談支援センターを中核とした地域支援ネットワーク構築の推進および障害福祉の制度周知を目的とした就労支援シンポジウムの基本企画を決定し、4ヵ所の難病相談支援センターと共催した。(3)シンポジウムの企画に活用するため、厚労科研データベース等を利用し、1998~2016年度の難病患者支援に関する厚生労働科学研究報告書60件を抽出し、研究概要を電子化した。

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,600,000円
(2)補助金確定額
3,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 772,204円
人件費・謝金 475,410円
旅費 1,408,853円
その他 943,533円
間接経費 0円
合計 3,600,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-02-13
更新日
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