特発性後天性全身性無汗症の横断的発症因子、治療法、予後の追跡研究

文献情報

文献番号
201711039A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性後天性全身性無汗症の横断的発症因子、治療法、予後の追跡研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-024
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 貴浩(防衛医科大学校 皮膚科学講座)
  • 室田 浩之(国立大学法人大阪大学 大学院皮膚科学教室)
  • 渡邉 大輔(愛知医科大学 皮膚科)
  • 中里 良彦(埼玉医科大学 神経内科)
  • 朝比奈 正人(医療法人同和会 神経研究所)
  • 岩瀬 敏(愛知医科大学 第2生理学教室)
  • 下村 裕(国立大学法人 山口大学 大学院 皮膚科学講座)
  • 新関 寛徳(国立成育医療研究センター 皮膚科)
  • 芳賀 信彦(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部)
  • 久保田 雅也(国立成育医療研究センター 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではまず無汗外胚葉形成不全症の診断基準を作成、本邦における全国的な疫学調査を継続して施行し無汗外胚葉形成不全症の発症頻度を明らかにするとともに重症度基準、分類、生活指導を作成して適切な治療法の確立を目指す。さらに、無汗外胚葉形成不全症のアレルギー疾患などの合併症を解析していきたい。
また、先天性無痛無汗症は遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー(HSAN)に属する疾患で、このうち4型を先天性無痛無汗症と呼ばれておりすでに診断基準、遺伝子異常も解明されているが新たな疫学調査も必要である。一方、後天性の無汗症である特発性後天性全身性無汗症(AIGA)は現在、診療ガイドラインが改定(自律神経)され指定難病となっているが治療に苦慮する疾患である。
本研究では、すでに改正されたAIGAの診療ガイドラインにある診断基準、重症度基準、治療アルゴリズムを用いて本邦における全国的なアンケート用紙を用いた予後追跡調査を施行し、AIGAの発症頻度、発症因子、悪化因子を明らかにするとともに重症度基準とQOLの相関関係、ステロイドパルス療法の有用性を検討して重症度基準、治療法を確立する。
研究方法
Ⅰ.無汗性外胚葉形成不全症の疫学調査、診療ガイドライン作成 【平成28-29年度】
Ⅱ.無汗症外胚葉形成不全症のアレルギー疾患合併の疫学解析【平成28-29年度】 
Ⅲ.AIGAの疫学調査、診療ガイドライン改訂 【平成28-29年度】
Ⅳ.先天性無痛無汗症の疫学調査、診療ガイドライン改正【平成28-29年度】
結果と考察
本研究では改正された特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の診療ガイドラインにある診断基準、重症度基準、治療アルゴリズムを用いて全国的なアンケート用紙を用いた予後追跡調査を施行しAIGAの発症頻度、発症因子、悪化因子を明らかにするとともに重症度基準とQOLの相関関係、ステロイドパルス療法の有用性を検討して重症度基準、治療法を確立する。今年度は東京医科歯科大学に受信したAIGA32例の検討では、ステロイドパルス療法が有効であった例は8例(25%)であり、発症から治療開始までの期間が短いほうがステロイドパルス療法の有効性が高い傾向があったことから、時期を逸しないよう早期のステロイド治療を開始するのが望ましいと考えられた。
さらに、中里班員はAIGAの1型であるIdiopathic pure sudomotor failure(IPSF)の49例の臨床所見をまとめ,その病態を検討した.IPSFは若年男性を中心によく汗をかく人に発症し,無汗は暑熱順化に関係して夏に寛解,冬に増悪する.軽症例では低汗である体幹部にコリン性蕁麻疹や疼痛発作を伴う.無汗は全身で均一ではなく,能動汗腺密度が高い手掌・足底や発汗能の高い前額部は障害されにくい.軽症で早期であればステロイパルス3回以内で寛解するが,手掌・足底まで無汗となった重症例ではステロイド反応性が悪いとの臨床所見より予後が予測できる可能性が示唆された。本症の臨床症状は汗腺・肥満細胞CHRM3の発現低下で説明可能である。AIGAは、汗腺そのものに器質的変化はないものとされてきたが、今回AIGA症例の発汗部位と無汗部位との比較で、AIGA症例の無汗部位では汗腺暗細胞の脱顆粒と細胞収縮が生じている可能性が高いことが判明した。また、主として暗細胞に発現しているCEAの変動が、血清CEA高値の原因となっている可能性がある。
また、無汗性外胚葉形成不全症の診療の手引きも策定し日本皮膚科学会雑誌にて発表された(日皮会誌:128(2),163-167, 2018)。山口大学医学部附属病院皮膚科を受診した低汗性外胚葉形成不全症の2家系について、遺伝子診断目的に遺伝子解析を施行した。
本年度より追加となった無痛無汗症に関する研究の発展も考え本指針の改訂が必要と判断し、第2版の作成に向けた準備を進めた。具体的には、他の研究分担者、研究協力者、さらには先天性無痛無汗症の患者家族会と議論を行い、第2版の内容と執筆者を検討した。
結論
特発性後天性全身性無汗症(AIGA)は、発症から治療開始までの期間が短いほうがステロイドパルス療法の有効性が高い傾向があったことから、時期を逸しないよう早期のステロイド治療を開始するのが望ましいと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,412,201円
人件費・謝金 1,562,505円
旅費 581,120円
その他 829,860円
間接経費 1,615,000円
合計 7,000,686円

備考

備考
自己負担金:686円

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-