先天性骨髄不全症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201711031A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性骨髄不全症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの確立に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-015
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 悦朗(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
  • 真部 淳(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 小島 勢二(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 菅野 仁(東京女子医科大学 医学部医学科)
  • 高田 穣(京都大学 大学院生命科学研究科附属放射線生物研究センター)
  • 大賀 正一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 小原 明(東邦大学 医学部)
  • 照井 君典(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 古山 和道(岩手医科大学 医学部)
  • 多賀 崇(滋賀医科大学 医学部医学科)
  • 小林 正夫(広島大学 大学院医歯薬保健学研究科)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立病院機構静岡県立こども病院)
  • 金兼 弘和(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 國島 伸治(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 山口 博樹(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主要な先天性骨髄不全症には、先天性赤芽球癆(DBA)、Fanconi貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血(SA)、congenital dyserythropoietic anemia(CDA)、Shwachman Diamond syndrome(SDS)、先天性角化不全症(DKC)、先天性好中球減少症(SCN)、先天性血小板減少症(CTP)の8疾患がある。平成26年度から、発症数が少なく共通点の多いこれらの8疾患の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合した厚労省難治性疾患政策研究班「先天性骨髄不全班」(伊藤班)が発足し、研究を推進してきた。本研究申請では、先天性骨髄不全班の先行研究を発展させ、より優れた「診断基準・重症度分類・診断ガイドライン」の確立を目指す。これまでの研究を通じて確立した解析基盤を共有し、日本小児血液・がん学会の中央診断事業と疾患登録事業とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行う。共通の基盤で遺伝子診断を含めた中央診断を行い、正確な診断に基づいた疫学調査を行い、遺伝子診断の結果や治療経過も含む、精度の高い疾患データベースを作成する。
研究方法
研究申請では、発症数が少なく共通点の多い先天性造血不全症の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。本研究班は、8つの疾患別研究拠点から構成され、各研究拠点は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当する。研究代表者(伊藤)が、DBAの研究を担当するとともに研究全体を統括する。平成28年度は、遺伝子診断の結果も含む精度の高い先天性骨髄不全のデータベースの作成を進め、診療ガイドラインの小改訂を行った。平成29年度は、我が国における正確な患者数の把握と治療法と予後に関する疫学研究を推進し、先天性骨髄不全のより精度の高い疾患データベースの確立を目指す。また、重症度分類の改訂を行う。
結果と考察
正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行い、先天性骨髄不全のより精度の高い疾患データベースの構築を推進した。DBAは、14例が新規登録され、11例に既報の遺伝子変異を認めた。これまでに192例のDBAの臨床情報と検体収集および遺伝子解析を行い、113例に原因遺伝子の変異を見出した。SAは、3例の新規症例が登録され、うち1例において原因遺伝子が同定された。FAは、3例の新規症例を解析した。さらに、これまでの症例の解析結果の見直しを進め、合計117例の症例について解析した。同定された変異遺伝子では、FANCAとFANCG変異が58%と24%を占めた。FAの長期生存例における固形がんの発症について調査した。同種造血細胞移植を施行した52例のうち15例に固形がんの発症を認めた。同種造血細胞移植により、骨髄不全発症例の予後は著しく改善されたが、特に成人後に固形がんを発症する例が増加しており、その対策の確立が急務と考えられた。CDAは、22例に遺伝子診断を行い、5例でI型、1例でvariant型の責任遺伝子の変異を確認した。遺伝子変異が確認されなかった12症例について、次世代シークエンサーによる新規責任遺伝子の探索を行い、4例で溶血性貧血の原因遺伝子の変異を確認した。DKCや不全型DKCで発見されたTERT変異、TERC変異の中にはテロメラーゼ活性に障害を与えずDKCの原因遺伝子でない変異が認められた。DKCの診断において遺伝子変異をその診断の根拠とする場合には注意が必要であることが示唆された。SDSは、これまでに計45例の患者が同定され、発症数は2.7例/年、男女比は2.2:1であった。最も多い変異は183-184TA>CT/258+2T>C変異で73%を占め、次に258+2T>C/258+2T>C変異が6.6%であった。3例(6%)の患者では白血病に進展した。CTPでは、15例の先天性血小板減少症を疑う症例について系統的鑑別診断解析を施行し、MYH9異常症8例、2B型von Willebrand病1例、TUBB1異常症1例の診断に至った。
 本年度は、本研究班で得られたデータをもとに、悪性腫瘍の合併を考慮した重症度分類の改訂を行った。「2017年度版診療ガイドライン」を日本小児血液・がん学会の認証を受けた後、同学会の編集書籍として、平成29年10月に診断と治療社より出版した。
結論
正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行い、先天性骨髄不全のより精度の高い疾患データベースの構築を推進し、学会認定の診療ガイドラインを作成した。遺伝性骨髄不全の診断は必ずしも容易ではなく、中央診断、遺伝子診断を行うことによりその診断の精度が上昇したと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201711031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,492,956円
人件費・謝金 0円
旅費 703,314円
その他 2,342,856円
間接経費 3,461,000円
合計 15,000,126円

備考

備考
自己資金125円,利息1円

公開日・更新日

公開日
2019-03-25
更新日
-