文献情報
文献番号
201711029A
報告書区分
総括
研究課題名
短腸症の重症度分類・集学的小腸リハビリテーション指針作成に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-013
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 俊治(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 田口 智章(九州大学 大学院医学研究院)
- 位田 忍(地方独立法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター)
- 中島 淳(横浜市立大学 医学研究科)
- 増本 幸二(筑波大学 医学医療系)
- 渡辺 稔彦(国立成育医療研究センター 外科)
- 新開 真人(神奈川県立こども医療センター 外科)
- 和田 基(東北大学 大学院医学系研究科)
- 上野 豪久(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 横井 暁子(兵庫県立こども病院 小児外科)
- 奥山 宏臣(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 吉丸 耕一朗(九州大学 大学病院)
- 高橋 良彰(九州大学 大学院医学研究院)
- 江角 元史郎(九州大学 大学院医学研究院)
- 柳 佑典(九州大学 大学病院)
- 松藤 凡(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
短腸症は、先天性に腸が短いか後天性に小腸の大量切除を余儀なくされた結果生じる腸管不全であり長期的医療ケアを必要としている。本研究では、全国の短腸症症例登録システムを構築し、以下の点について指針作成を行う。(1)短腸症の疾患概念、診断基準、重症度評価基準の作成(2)小腸リハビリテーションプログラムの実態調査とガイドライン作成(3)患者および家族会への情報提供、社会福祉支援体制の見直し、以上3つの課題を柱として短腸症に関する診療の質の向上に貢献することを目的としている。
研究方法
1.短腸症の疾患概念、診断基準、重症度評価基準の作成
短腸症の診断基準、予後予測因子は明確にはわかっていない。重篤な合併症を来すrisk factorを大規模調査により評価を行い、短腸症の重症度分類を規定する。
2.小腸リハビリテーションプログラムの実態調査とガイドライン作成
・中心静脈カテーテル管理、栄養管理指針の作成
・外科的治療指針の作成
・腸管不全関連肝機能障害への対策
3.患者および家族会への情報提供、社会福祉支援体制の見直し
短腸症の診断基準、予後予測因子は明確にはわかっていない。重篤な合併症を来すrisk factorを大規模調査により評価を行い、短腸症の重症度分類を規定する。
2.小腸リハビリテーションプログラムの実態調査とガイドライン作成
・中心静脈カテーテル管理、栄養管理指針の作成
・外科的治療指針の作成
・腸管不全関連肝機能障害への対策
3.患者および家族会への情報提供、社会福祉支援体制の見直し
結果と考察
平成29年5月13日に全体会議を行い、①重症度分類についての策定、②短腸症の診療アルゴリズムの策定、③短腸症治療に関わるCQの策定、これらの項目について今後の課題点とその対策についてディスカッションした。
1)短腸症に対する治療のアルゴリズムとして以下のフローチャートを作成した。
短腸症に対する治療アルゴリズムを作成し以下の5点に大別して検討することとした。①重症度分類の評価法、②経静脈栄養管理、③栄養状態評価項目、PN離脱基準、④外科的手術介入の適応、タイミング、術式別生存率、⑤新規治療としてホルモン療法や腸管再生などの問題とした。
また、上記に基づくCQとして以下の5つのCQを作成した。エンドポイントはPN依存度を下げることを達成することとした。
CQ1. 短腸症のPN依存度を下げるために、早期経腸栄養法は有効か?
CQ2. 短腸症のPN依存度を下げるために、外科的治療介入は有効か?
CQ3. 短腸症のPN依存度を下げるために、薬物療法は有効か?
CQ4. 短腸症管理における合併症を少なくするために、何が有効か?
CQ5. 短腸症管理においてPN離脱を検討するために、必要な評価項目は何か?
以上のCQに対し、特にCQ2:腸管延長術(STEP, LILT)、小腸移植など、CQ3:プロバイオティクス、成長ホルモン、GLP2製剤など、CQ4:オメガベン、SMOF、カテーテル管理法など、CQ5:成長評価、シトルリンなどのサブ項目を選定した。
2)短腸症の定義と重症度分類
現行の診断基準および重症度分類は以下の通りである。
<診断基準>
以下の項目を満たすもの
1. 腸回転異常、小腸閉鎖、壊死性腸炎、腹壁異常などの先天的の腸疾患や外傷や腸間膜血栓症や腸間膜根部腫瘍のため小腸大量切除を受けたもの
2. 小腸の残存腸管が75cm未満であること
3. 乳幼児期は小腸の残存腸管が30cm未満であること
4. クローン病、潰瘍性大腸炎、ヒルシュスプルング病を除外する
<重症度分類>
静脈栄養を必要とすることにより,日常生活が著しく障害されており,かつ以下の5項目のうち,少なくとも1項目以上を満たすものを,重症例とする。
1. 静脈栄養への依存性が高く,あらゆる手段をもってしても離脱が期待できない
2. 中心静脈アクセスルートが減少している
3. 頻回なカテーテル関連血流感染症を来す
4. 肝障害や腎障害などを合併している
5. 難治性の下痢など著しいQOLの低下
3)小腸リハビリテーションの現状と課題
重篤な合併症の一つに小腸機能不全肝機能障害(Intestinal failure associated liver disease : IFALD)がある。IFALDに対してω3系脂肪乳剤(Omegaven®)が登場し、欧米では安全で有効であると報告されているが、本邦では未承認であり、その使用経験と効果についての報告は少ない。今後本研究班でエビデンスを確立し承認へ向けた土台づくりが必要である。
短腸症の栄養管理や外科的治療の介入の目標は初期のTPN主体の管理から徐々に経腸栄養の比率を増加させ、最終的にはTPNから離脱し、経口栄養で自立させていくことである。そのためにどういう治療戦略が推奨されるのか、近年その重要性が広く認識されている小腸リハビリテーションについて、その指針作成は急務であると考えられる。
1)短腸症に対する治療のアルゴリズムとして以下のフローチャートを作成した。
短腸症に対する治療アルゴリズムを作成し以下の5点に大別して検討することとした。①重症度分類の評価法、②経静脈栄養管理、③栄養状態評価項目、PN離脱基準、④外科的手術介入の適応、タイミング、術式別生存率、⑤新規治療としてホルモン療法や腸管再生などの問題とした。
また、上記に基づくCQとして以下の5つのCQを作成した。エンドポイントはPN依存度を下げることを達成することとした。
CQ1. 短腸症のPN依存度を下げるために、早期経腸栄養法は有効か?
CQ2. 短腸症のPN依存度を下げるために、外科的治療介入は有効か?
CQ3. 短腸症のPN依存度を下げるために、薬物療法は有効か?
CQ4. 短腸症管理における合併症を少なくするために、何が有効か?
CQ5. 短腸症管理においてPN離脱を検討するために、必要な評価項目は何か?
以上のCQに対し、特にCQ2:腸管延長術(STEP, LILT)、小腸移植など、CQ3:プロバイオティクス、成長ホルモン、GLP2製剤など、CQ4:オメガベン、SMOF、カテーテル管理法など、CQ5:成長評価、シトルリンなどのサブ項目を選定した。
2)短腸症の定義と重症度分類
現行の診断基準および重症度分類は以下の通りである。
<診断基準>
以下の項目を満たすもの
1. 腸回転異常、小腸閉鎖、壊死性腸炎、腹壁異常などの先天的の腸疾患や外傷や腸間膜血栓症や腸間膜根部腫瘍のため小腸大量切除を受けたもの
2. 小腸の残存腸管が75cm未満であること
3. 乳幼児期は小腸の残存腸管が30cm未満であること
4. クローン病、潰瘍性大腸炎、ヒルシュスプルング病を除外する
<重症度分類>
静脈栄養を必要とすることにより,日常生活が著しく障害されており,かつ以下の5項目のうち,少なくとも1項目以上を満たすものを,重症例とする。
1. 静脈栄養への依存性が高く,あらゆる手段をもってしても離脱が期待できない
2. 中心静脈アクセスルートが減少している
3. 頻回なカテーテル関連血流感染症を来す
4. 肝障害や腎障害などを合併している
5. 難治性の下痢など著しいQOLの低下
3)小腸リハビリテーションの現状と課題
重篤な合併症の一つに小腸機能不全肝機能障害(Intestinal failure associated liver disease : IFALD)がある。IFALDに対してω3系脂肪乳剤(Omegaven®)が登場し、欧米では安全で有効であると報告されているが、本邦では未承認であり、その使用経験と効果についての報告は少ない。今後本研究班でエビデンスを確立し承認へ向けた土台づくりが必要である。
短腸症の栄養管理や外科的治療の介入の目標は初期のTPN主体の管理から徐々に経腸栄養の比率を増加させ、最終的にはTPNから離脱し、経口栄養で自立させていくことである。そのためにどういう治療戦略が推奨されるのか、近年その重要性が広く認識されている小腸リハビリテーションについて、その指針作成は急務であると考えられる。
結論
本研究班において診断基準および重症度分類、小腸リハビリテーション指針作成は今後の短腸症医療の向上を図るための成果目標として必須である。
公開日・更新日
公開日
2018-05-30
更新日
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