文献情報
文献番号
201711027A
報告書区分
総括
研究課題名
脳クレアチン欠乏症候群を中心とした治療可能な知的障害症候群の臨床研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-011
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
和田 敬仁(京都大学大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 小坂 仁(自治医科大学 小児科)
- 後藤知英(神奈川県立こども医療センター)
- 相田典子(神奈川県立こども医療センター)
- 秋山倫之(岡山大学病院)
- 粟屋智就(京都大学)
- 高野亨子(信州大学医学部)
- 露崎 悠(神奈川県立こども医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
840,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は日本における脳クレアチン欠乏症候群(cerebral creatine deficiency syndromes: CCDSs)およびATR-X症候群の診断基準,重症度分類、診療ガイドラインを作成し、症例を登録し、将来の臨床研究や臨床試験のための基盤整備を進めることにある。
脳クレアチン欠乏症候群(cerebral creatine deficiency syndromes: CCDSs)は、脳内クレアチン欠乏により、精神遅滞、言語発達遅滞、てんかんを呈し、グアニジノ酢酸メチル基転移酵素(GAMT)欠損症、アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素(AGAT)欠損症、 クレアチントランスポーター(SLC6A8)欠損症の3疾患からなる。特にSLC6A8欠損症は遺伝性精神遅滞の中では脆弱X症候群やダウン症候群についで、もっとも頻度が高い疾患で、ID男性の0.3-3.5%、アメリカでは42,000人、世界では100万人と推定され、日本では未診断症例が多数存在すると推測される。CCDSsの特徴は、治療法のある精神遅滞であるという点である。
ATR-X症候群はエピジェネティクスの破綻により発症するX連鎖性知的障害症候群の一つである。日本で約100名の患者が診断され、家族会(ATR-X症候群ネットワークジャパン)も存在し、難病指定され、治療法の開発も進められている。
脳クレアチン欠乏症候群(cerebral creatine deficiency syndromes: CCDSs)は、脳内クレアチン欠乏により、精神遅滞、言語発達遅滞、てんかんを呈し、グアニジノ酢酸メチル基転移酵素(GAMT)欠損症、アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素(AGAT)欠損症、 クレアチントランスポーター(SLC6A8)欠損症の3疾患からなる。特にSLC6A8欠損症は遺伝性精神遅滞の中では脆弱X症候群やダウン症候群についで、もっとも頻度が高い疾患で、ID男性の0.3-3.5%、アメリカでは42,000人、世界では100万人と推定され、日本では未診断症例が多数存在すると推測される。CCDSsの特徴は、治療法のある精神遅滞であるという点である。
ATR-X症候群はエピジェネティクスの破綻により発症するX連鎖性知的障害症候群の一つである。日本で約100名の患者が診断され、家族会(ATR-X症候群ネットワークジャパン)も存在し、難病指定され、治療法の開発も進められている。
研究方法
(1)CCDSsにおける脳1H-MR spectroscopy(MRS)MRSの有用性も検討した。
(2)CCDSs)を構成するグアニジノ酢酸メチル基転移酵素(GAMT)欠損症、アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素(AGAT)欠損症、 クレアチントランスポーター(SLC6A8)欠損症の3疾患について、文献検索および自験例の診断・治療経験を基に適切な診療手順を検討した。
(3)2014年度から2016年度の3年間に神奈川県立こども医療センター神経内科の初診患者を対象にして、本邦における脳クレアチン欠乏症の有病率を推定した。
(4)信州大学における知的障がい患者を対象とした外来診療におけるCCDSsの患者の頻度を検討した。
(5)平成28年度に作成したATR-X症候群の診療カードの有用性に関して、アンケート調査を行った。
(6)X連鎖疾患であるATR-X症候群の患者の母親を対象に、保因者診断を受ける際に、影響を与える心理・文化・社会的要因の探索を目的としたアンケート調査を行った。
(7)患者レジストリー制度
(2)CCDSs)を構成するグアニジノ酢酸メチル基転移酵素(GAMT)欠損症、アルギニン・グリシンアミジノ基転移酵素(AGAT)欠損症、 クレアチントランスポーター(SLC6A8)欠損症の3疾患について、文献検索および自験例の診断・治療経験を基に適切な診療手順を検討した。
(3)2014年度から2016年度の3年間に神奈川県立こども医療センター神経内科の初診患者を対象にして、本邦における脳クレアチン欠乏症の有病率を推定した。
(4)信州大学における知的障がい患者を対象とした外来診療におけるCCDSsの患者の頻度を検討した。
(5)平成28年度に作成したATR-X症候群の診療カードの有用性に関して、アンケート調査を行った。
(6)X連鎖疾患であるATR-X症候群の患者の母親を対象に、保因者診断を受ける際に、影響を与える心理・文化・社会的要因の探索を目的としたアンケート調査を行った。
(7)患者レジストリー制度
結果と考察
(1)脳MRIおよび1H-MRSは、脳クレアチン欠乏症候群(Crトランスポーター欠損症)5家系6症例の診断に有用であった。また、世界2例目であるGABAトランスアミナーゼ欠損症の経時的なMRI画像およびMRS定量データと臨床経過を検討して論文にまとめた。
(2)CCDSsの3疾患の診療ハンドブック、診断法の確立、診療ガイドラインを作成した。
(3)当院で遭遇すると期待されるクレアチン輸送体欠損症の症例数は最大で年間0.47~5.48人と推定された。
(4)次世代シークエンサーIon PGMを用いたID関連遺伝子パネル解析(CCDSsの責任遺伝子SLC6A8、GAMT、GATMを含む)を行った18名のうち6名に病的変異を認めた(33.3%)。
(5)15家族を対象に調査を行った。情報提供カードが希少難病疾患の患者さんやご家族の支援に有益であり、この様な情報ツールが安心かつ容易に地域医療を受けるために有効であることが示された。
(6)ATR-X症候群37家系の患者の母親のうち25名(回収率 67.6%)から回答が得られた。
(7)現在までにCCDSsおよびATR-X症候群、それぞれ3名および29名が登録されている。
(2)CCDSsの3疾患の診療ハンドブック、診断法の確立、診療ガイドラインを作成した。
(3)当院で遭遇すると期待されるクレアチン輸送体欠損症の症例数は最大で年間0.47~5.48人と推定された。
(4)次世代シークエンサーIon PGMを用いたID関連遺伝子パネル解析(CCDSsの責任遺伝子SLC6A8、GAMT、GATMを含む)を行った18名のうち6名に病的変異を認めた(33.3%)。
(5)15家族を対象に調査を行った。情報提供カードが希少難病疾患の患者さんやご家族の支援に有益であり、この様な情報ツールが安心かつ容易に地域医療を受けるために有効であることが示された。
(6)ATR-X症候群37家系の患者の母親のうち25名(回収率 67.6%)から回答が得られた。
(7)現在までにCCDSsおよびATR-X症候群、それぞれ3名および29名が登録されている。
結論
研究はほぼ計画通りに実施された。
脳クレアチン欠乏症候群、および、ATR-X症候群の両疾患が平成30年度4月1日以降の小児慢性特定疾病の対象疾患に付け加えられたことは、本研究班の大きな成果と考えられる。
脳クレアチン欠乏症候群、および、ATR-X症候群の両疾患が平成30年度4月1日以降の小児慢性特定疾病の対象疾患に付け加えられたことは、本研究班の大きな成果と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2018-05-28
更新日
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