Treacher Collins 症候群の診断と医療的ケアと社会的支援

文献情報

文献番号
201711021A
報告書区分
総括
研究課題名
Treacher Collins 症候群の診断と医療的ケアと社会的支援
課題番号
H28-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 朝戸 裕貴(獨協医科大学 )
  • 守本 倫子(国立成育医療研究センター)
  • 浅沼 聡(埼玉県立小児医療センター)
  • 仲野 敦子(千葉県こども病院)
  • 坂田 英明(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・臨床研究センター)
  • 加我 牧子(東京都立東部療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Treacher Collinsは、先天奇形により①耳疾患による難聴、②呼吸障害、③咀嚼・嚥下障害の3つの大きな機能障害のいずれか、あるいは複数合併していることが少なくない。乳幼児期・小児期の医学的ケアが必要となることが少なくない。
われわれは1994年より両側小耳症・外耳道閉鎖症に対しての患者・両親との交流を目的として「青空の会・TCの会」を年1回開催してきた。2018年で青空の会は24年目(第13回)、TCの会は2000年より18年目(第12回)となる。難病指定の条件の一つは成人になって医療が必要であることが含まれるとの厚生労働省の見解があり、今回は成人年齢を越えたフォローアップ中の症例の現状を取り上げ、問題点を取り上げることにした。
研究方法
現在20歳~60歳のTreacher Collins症候群19例について、難聴児、呼吸器障害、咀嚼・嚥下障害の3つの合併の有無を取り上げ、それぞれに外科手術的対応の有無、形成外科的手術の有無、その他について検討した。
結果と考察
1.難聴症例は18例(95%)。耳科学的手術すなわち外耳道形成あるいは中耳奇形に対する聴力改善術を受けたもの5例。
2.呼吸障害は1例で永久気管孔作成。
3.咀嚼・嚥下障害のための栄養チューブ留置は1症例もなかった。ただし現在生存していれば成人を迎えたであろう小学校の給食で窒息死した1例があり、検討する価値がある。
結論
われわれのTCの会は両側小耳症・外耳道閉鎖症あるいは中耳奇形による難聴を対象としている。そのためわれわれが小児期よりフォローし、20歳以上の成人を迎えた症例のほとんどは難聴に対して補聴をしている例である。外耳道形成術・鼓室形成術で聴力が改善しても十分な聴力でないために補聴器を使用している。われわれがフォローアップしている19歳以下の症例では、10歳前後に耳介形成・外耳道形成を希望した症例が少なくない。なお、平成27年7月に厚生労働省の障害者総合支援法の疾患に「両側小耳症・外耳道閉鎖症」が加わり障害者手帳を保持していなくても補聴器の交付対象となったのは大きな進歩である。
下顎の低形成による気道狭窄のため永久気管孔の症例が1例いる。現在生存していれば成人に達していたであろう1例が嚥下障害に伴う給食の誤飲で亡くなった1例はTreacher Collinsの医療的ケアを考える際に教訓として記憶に残し注意すべきである。


公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201711021B
報告書区分
総合
研究課題名
Treacher Collins 症候群の診断と医療的ケアと社会的支援
課題番号
H28-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 朝戸 裕貴(獨協医科大学)
  • 守本 倫子(国立成育医療研究センター)
  • 浅沼 聡(埼玉県立小児医療センター)
  • 仲野 敦子(千葉県こども病院)
  • 坂田 英明(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター)
  • 加我 牧子(東京都立東部療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Treacher Collins症候群の診断・治療の実態を調べ、診断の指針の作成、重症度分類の作成、そして治療指針を作成すべく研究班の班員の属する病院での取り組みについて現状を探る。さらに成人期の症例がどのような困難に直面しているか調べ、症状の進行の有無についても調べ、医療を必要としているか調べる。
研究方法
研究班の7病院においてフォローアップ中のTreacher Collins症候群の診断・治療の医学的問題の実態調査を実施し、その集計に基づいてどのような症状に対して、どのような治療を行っているか、就学後の通学と学校教育における支援の実態はどのようであるか、形成外科的手術はどのような症状に対して、どのような手術をしているか、成人期になってどのような医療が行われているか調査する。
結果と考察
各病院でそれぞれ異なる医療が行われていることがわかった。1.顔面のマイナー奇形に対する形成手術、2.両側小耳症・外耳道閉鎖症に対する骨導補聴器による補聴あるいは耳介形成術・外耳道形成術、3.気道閉塞に対する気管切開と気道管理リハビリテーション、4.咀嚼・嚥下、構音障害に対する手術あるいはリハビリテーション、5.成人期では形成手術、心理的問題に対する対応などに取り組んでいることがわかった。以上に基づいて、a.症状の分類、b.耳鼻咽喉科学的立場よりの重症度分類、c.治療指針を本研究班の案として作成した。
幼少期のTreacher Collins症候群の症状はそれぞれ異なっており、その異なる症状に対して各病院で医療に取り組んでいることがわかった。成人期のTreacher Collins症候群は幼少期とは異なることがわかった。恐らくそれまでに治療を受け安定した生活をおくっているように見かけ上は見えるが、心理的にはTreacher Collins症候群で生まれたことに負い目を感じながら生活をしていることがわかった点は本研究での重要な成果の一つである。一方、学童期では学校で医療的ケアが可能なところが少なく、平等に教育を受けることが可能な地域はまだ少ないことがわかった。もう一つの本研究の大きな成果である。

結論
本研究によりa.Treacher Collins症候群の症状の分類(案)、b.耳鼻咽喉科学的立場からの重症度分類(案)、c.治療指針(案)を作成し提案した。

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201711021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は現在のTreacher Collins症候群症例が各小児病院の耳鼻科および大学病院の形成外科でどのような診断と治療が行われ、成人期にはどのような医療を必要としているか判明したことは、大きな視点で本症候群に対して取り組む必要があることがわかった。
臨床的観点からの成果
各病院では取り組みが異なり、両側小耳症・外耳道閉鎖症に対する骨導補聴と形成外科手術、呼吸障害、嚥下障害、顔面奇形の整容手術など多方面にわたることがわかった。それぞれの治療法についても現状がわかったことは臨床的な大きな成果であった。
ガイドライン等の開発
両側小耳症・外耳道閉鎖症並びにTreacher Collins症候群の重症度分類案、診療指針案を作成した。作成した報告集は臨床の実際に有用なマニュアルとなった。各病院で利用するだけの価値のあるものを作成したので活用を期待したい。
その他行政的観点からの成果
本症候群は難治疾患の一つに加える必要性について、作成したガイドラインを考慮しながら行政的観点を形成するにあたって成果を上げることができた。
その他のインパクト
両側小耳症・外耳道閉鎖症並びにTreacher Collins症候群の患者の会(青空の会・TCの会)を2017年11月27日(日)と2018年2月4日(日)、2019年2月3日(日)、2020年2月2日(日)に開催した。以降はCOVID-19の影響で休会となっている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
平成28年11月27日第12回青空の会・第11回TCの会平成30年2月4日第13回青空の会・第12回TCの会、平成31年2月3日第14回青空の会・第13回TCの会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-04
更新日
2022-06-03

収支報告書

文献番号
201711021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,200,000円
(2)補助金確定額
1,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 536,790円
人件費・謝金 0円
旅費 8,000円
その他 379,210円
間接経費 276,000円
合計 1,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-03-07
更新日
-