炎症性動脈瘤形成症候群の治療法選択に関する研究

文献情報

文献番号
201711019A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性動脈瘤形成症候群の治療法選択に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
勝部 康弘(日本医科大学 武蔵小杉病院)
研究分担者(所属機関)
  • 高月 晋一(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
  • 吉田 恭子(今中 恭子)(三重大学 大学院医学系研究科 実験病理学)
  • 武田 充人(北海道大学 大学院医学研究科 小児発達分野)
  • 大熊 喜彰(国立国際医療研究センター 小児科)
  • 加藤 太一(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 池田 和幸(京都府立医科大学 小児循環器科)
  • 吉兼 由佳子(福岡大学 小児科)
  • 須田 憲治(久留米大学 小児科)
  • 永田 弾(九州大学 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,140,000円
研究者交替、所属機関変更
山村健一郎(平成29年4月1日~29年6月30日)→永田弾(平成29年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
炎症性動脈瘤症候群では、全身性動脈炎を基盤として、弾性板など血管壁構造が破壊され、不可逆的な著しい内腔拡張、すなわち動脈瘤が形成される。特に冠動脈瘤は生命予後に直結する重篤な疾患であるが根治療法はない。ほとんどが小児期に発症し、川崎病に合併することがよく知られてきたが、免疫グロブリン治療の普及により伴い冠動脈瘤発症数は著しく減少した。しかし、その後瘤合併数の著しい減少は見られず、ゆっくりとした減少にとどまっている。第23回川崎病全国調査成績によると、年間約15,000人の患者が発生し、冠動脈後遺症のうち瘤、巨大瘤を併せて年間約100人の新たな冠動脈瘤合併患者が発症する。冠動脈瘤形成を予知する有用な指標はない。そこで免疫グロブリン不応例を初期治療開始前に予測して、より集中強化した初期治療を選択する優れた治療戦略をとることが求められている。本研究課題はバイオマーカーにより免疫グロブリン不応例を治療開始前に予測すること、ガイドライン改訂のための資料の提供することを目的とする。
研究方法
研究方法は2つの方法により行った。①バイオマーカーに関する既存の論文のシステマティックレビュー(研究1)と②バイオマーカーの前方視的研究(研究2)である。
① 研究1 
バイオマーカーを広く検討するため第一段階として、これまで学会、論文等で個々の施設から報告されているバイオマーカーのシステマティックレビューを行い、エビデンスにより分類する。川崎病の診療に精通する研究代表者らにより、川崎病に関連バイオマーカーを列挙し、文献の検索は専門職の司書に依頼してMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、医中誌の4つの文献検索データベースの検索を行った。
② 研究2 
多施設共同前向きコホート研究
対象は川崎病患者。川崎病の診断は厚生労働省川崎病研究班作成(改訂5版)に準拠して行う。入院した川崎病患者を対象とし、初回治療開始前に血中バイオマーカー(TNC、PTX3、sTNFR1)測定のための検体採取を行い、検査結果を臨床経過、治療への反応性(解熱の有無)につき検討する。バイオマーカー測定のために通常の採血検査時に別に約3.0ml程度追加採取する。治療法は基本的には日本小児循環器学会による「川崎病急性期治療のガイドライン」(平成24年改訂版)に沿って行う。
<検査計画スケジュール>
バイオマーカー値測定のための血液検体として、初回治療前に血液約3mlを採取する。バイオマーカーの測定は(株)SRLに依頼する。バイオマーカー以外の一般血液検査も治療前に合わせて行う。検査項目は各施設により異なるが、患者情報(年齢、性別、発症日(発熱日)、治療開始病日、主要症状の項目、など)に加え、以下に示す検査項目はリスクスコア算出のため必須とする。1.血清Na、2.AST、3.好中球比率、4.CRP、5.血小板数
評価の方法
1)主要評価項目(Primary endpoint):
  初回治療への不応※
2)副次的評価項目(Secondary endpoint):
  群馬大学(小林ら)の免疫グロブリン不応例予測スコアとの比較
※初回治療への不応とは、免疫グロブリン投与終了後24時間以上発熱(37.5℃以上)が持続する場合を言う。
統計手法は、初回治療への不応予測の可否についての解析はROC解析にて行い、免疫グロブリン不応例予測スコアとの比較はDeLong検定にて行う。
結果と考察
研究1:システマティックレビューを分担者らに依頼し川崎病バイオマーカー(約30種)に関する論文の評価を行った。現在これらのバイオマーカーの検索ならびに評価が終了し、論文化に向けたまとめ作業を行っている。
研究2:前方視的研究に関しては、倫理委員会で承認を得た施設からおおよそ150例の検体を集積することができた。現在順次測定を行っている。研究成果の一部を第37回日本川崎病学会学術集会(2017年10月)で報告した。また、現在日本川崎病学会が中心となり、「川崎病診断の手引き改訂」作業が進んでいる。この改訂委員会には研究代表者らが委員として参加しており、川崎病バイオマーカーを手引きに反映させ、より良い手引きの改訂につなげていきたい。
結論
バイオマーカーにより川崎病免疫グロブリン不応例・冠動脈病変合併例を治療開始前により高い精度で予測すること、ガイドライン改訂のためのデータを提供することを目的とした研究課題である。本年度はシステマティックレビューに加え、多施設共同前向きコホート研究を行った。研究成果を「川崎病診断の手引き改訂」に盛り込んでいきたい。

公開日・更新日

公開日
2018-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201711019B
報告書区分
総合
研究課題名
炎症性動脈瘤形成症候群の治療法選択に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
勝部 康弘(日本医科大学 武蔵小杉病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐地 勉(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
  • 高月 晋一(東邦大学医療センター大森病院 小児科)
  • 吉田 恭子(今中 恭子)(三重大学大学院医学系研究科 実験病理学)
  • 武田 充人(北海道大学大学院医学系研究科 小児発達医学分野)
  • 大熊 喜彰(国立国際医療研究センター 小児科)
  • 小林 徹(国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター)
  • 加藤 太一(名古屋大学大学院医学系研究科 小児循環器病学)
  • 池田 和幸(京都府立医科大学 小児循環器科)
  • 吉兼 由佳子(福岡大学 小児科)
  • 須田 憲治(久留米大学 小児科)
  • 山村 健一郎(九州大学 小児科)
  • 永田 弾(九州大学 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
炎症性動脈瘤症候群では、全身性動脈炎を基盤として、弾性板など血管壁構造が破壊され、不可逆的な著しい内腔拡張、すなわち動脈瘤が形成される。特に冠動脈瘤は生命予後に直結する重篤な疾患であるが根治療法はない。ほとんどが小児期に発症し、川崎病に合併することがよく知られてきたが、免疫グロブリン治療の普及により伴い冠動脈瘤発症数は著しく減少した。しかし、その後瘤合併数の著しい減少は見られず、ゆっくりとした減少にとどまっている。第23回川崎病全国調査成績によると、年間約15,000人の患者が発生し、冠動脈後遺症のうち瘤、巨大瘤を併せて年間約100人の新たな冠動脈瘤合併患者が発症する。冠動脈瘤形成を予知する有用な指標はない。免疫グロブリン不応例を初期治療開始前に予測して、より集中強化した初期治療を選択する優れた治療戦略をとることが求められている。本研究課題はバイオマーカーにより免疫グロブリン不応例を治療開始前に予測すること、ガイドライン改訂のための資料の提供することを目的とする。
研究方法
研究方法は2つの方法により行った。①バイオマーカーに関する既存の論文のシステマティックレビュー(研究1)と②バイオマーカーの前方視的研究(研究2)である。
① 研究1 
バイオマーカーを広く検討するため第一段階として、これまで学会、論文等で個々の施設から報告されているバイオマーカーのシステマティックレビューを行い、エビデンスにより分類する。川崎病の診療に精通する研究代表者らにより、川崎病に関連バイオマーカーを列挙し、文献の検索は専門職の司書に依頼してMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、医中誌の4つの文献検索データベースの検索を行った。
② 研究2 
多施設共同前向きコホート研究
対象は川崎病患者。川崎病の診断は厚生労働省川崎病研究班作成(改訂5版)に準拠して行う。入院した川崎病患者を対象とし、初回治療開始前に血中バイオマーカー(TNC、PTX3、sTNFR1)測定のための検体採取を行い、検査結果を臨床経過、治療への反応性(解熱の有無)につき検討する。バイオマーカー測定のために通常の採血検査時に別に約3.0ml程度追加採取する。治療法は基本的には日本小児循環器学会による「川崎病急性期治療のガイドライン」(平成24年改訂版)に沿って行う。
<検査計画スケジュール>
バイオマーカー値測定のための血液検体として、初回治療前に血液約3mlを採取する。バイオマーカーの測定は(株)SRLに依頼する。バイオマーカー以外の一般血液検査も治療前に合わせて行う。検査項目は各施設により異なるが、患者情報(年齢、性別、発症日(発熱日)、治療開始病日、主要症状の項目、など)に加え、以下に示す検査項目はリスクスコア算出のため必須とする。1.血清Na、2.AST、3.好中球比率、4.CRP、5.血小板数
評価の方法
1)主要評価項目(Primary endpoint):
  初回治療への不応※
2)副次的評価項目(Secondary endpoint):
群馬大学(小林ら)の免疫グロブリン不応例予測スコアとの比較
※初回治療への不応とは、免疫グロブリン投与終了後24時間以上発熱(37.5℃以上)が持続する場合を言う。
統計手法は、初回治療への不応予測の可否についての解析はROC解析にて行い、免疫グロブリン不応例予測スコアとの比較はDeLong検定にて行う。
結果と考察
研究1:システマティックレビューを分担者らに依頼し川崎病バイオマーカーに関する論文の評価を行った。現在これらのバイオマーカーの検索ならびに評価が終了し、論文化に向けたまとめ作業を行っている。
研究2:前向きコホート研究に関しては、倫理委員会で承認を得た施設からおおよそ150例の検体を集積することができた。現在順次測定を行っている。
研究成果の一部を18th internation vasculitis & ANCA Workshop (2017年3月)ならびに第37回日本川崎病学会学術集会(2017年10月)で報告した。TNCに関する論文もまとめることができた。また、現在日本川崎病学会が中心となり、「川崎病診断の手引き改訂」作業が進んでいる。この改訂委員会には研究代表者らが委員として参加しており、川崎病バイオマーカーを手引きに反映させ、より良い手引きの改訂に繋げていきたい。
結論
バイオマーカーにより川崎病免疫グロブリン不応例・冠動脈病変合併例を治療開始前により高い精度で予測すること、ガイドライン改訂のためのデータを提供することを目的とした研究課題である。2年間の研究期間ではあったがこれまで得られた研究成果をもとに今後さらに誌上での成果報告を目指し、データの取りまとめ、目的達成に努力していく。

公開日・更新日

公開日
2018-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201711019C

収支報告書

文献番号
201711019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,197,000円
(2)補助金確定額
1,197,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 338,596円
人件費・謝金 83,000円
旅費 199,390円
その他 519,014円
間接経費 57,000円
合計 1,197,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-02-21
更新日
-