周産期(産褥性)心筋症の、早期診断検査確立研究の継続と診断ガイドライン作成

文献情報

文献番号
201711017A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期(産褥性)心筋症の、早期診断検査確立研究の継続と診断ガイドライン作成
課題番号
H28-難治等(難)-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 千津子(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉松 淳(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部 )
  • 池田 智明(三重大学医学部産科婦人科学教室)
  • 植田 初江(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 臨床検査部病理)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
1,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
息切れや浮腫、体重増加など、心不全症状と健常妊産婦の訴える症状は似ているため、産期心筋症は、診断遅延傾向にある。そこで、妊娠高血圧症候群などの周産期心筋症ハイリスク妊産婦を対象にした多施設共同早期診断法開発研究を実施し、産科など普段心不全診療に携わらない医師も簡便に心不全・心筋症を診断できる早期診断法を含めた、診療ガイドラインを作成する。
研究方法
(1)-1 周産期心筋症の早期診断法開発研究
妊娠高血圧症候群などの周産期心筋症ハイリスク妊産婦を対象にし、心機能低下や心不全発症率を多施設共同で検討する。
(1)-2 周産期心筋症の診療ガイドライン策定
平成22年より継続して行っている周産期心筋症症例登録研究(PREACHER)において構築した、学際的全国規模のネットワークから、ガイドライン作成委員会を結成し、国内初の周産期心筋症診療ガイドラインを作成する。
(1)-3 関連学会のガイドライン承認
結果と考察
(1)-1 周産期心筋症の早期診断法開発研究
 平成30年3月現在、19施設参加、2施設倫理委員会申請中。平成29年4月~平成30年3月に新規データ登録症例は230例であった。心機能低下や心不全発症例を認めており、研究は順調に進んでいる。
 また、症例レジストリ、ハイリスク妊婦を対象にした早期診断法開発研究の途中解析報告会を平成29年7月と平成30年3月に開催し、意見交換を行った。
(1)-2 周産期心筋症の診療ガイドライン策定
平成30年2月にガイドライン委員会による読み合わせ後、修正作業を終了した。全95ページ、8万字(引用文献含めず)の疫学・診断から病因、治療まで幅広い内容のガイドラインが完成した。
(1)-3 関連学会の承認
日本産科婦人科学会、日本心不全学会の承認に向けた手続きを現在行っている。承認後は、ダイジェスト版をホームページなどに一般公開し、詳細版を出版の予定である。周産期心筋症診療に大いに役立つものと考える。
結論
早期診断法確立に必要な症例レジストリ、ハイリスク妊婦早期診断の多施設共同研究を継続実施している。
診療ガイドラインを作成し、学会承認を得るための手続きを行っている。

公開日・更新日

公開日
2018-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201711017B
報告書区分
総合
研究課題名
周産期(産褥性)心筋症の、早期診断検査確立研究の継続と診断ガイドライン作成
課題番号
H28-難治等(難)-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 千津子(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉松 淳(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部 )
  • 池田 智明(三重大学医学部産科婦人科学教室)
  • 植田 初江(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 臨床検査部病理)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 息切れや浮腫、体重増加など、心不全症状と健常妊産婦の訴える症状は似ているため、産期心筋症は、診断遅延傾向にある。そこで、妊娠高血圧症候群などの周産期心筋症ハイリスク妊産婦を対象にした多施設共同早期診断法開発研究を実施し、産科など普段心不全診療に携わらない医師も簡便に心不全・心筋症を診断できる早期診断法を含めた、診療ガイドラインを作成する。
研究方法
(1)-1 周産期心筋症の早期診断法開発研究
 妊娠高血圧症候群などの周産期心筋症ハイリスク妊産婦を対象にし、心機能低下や心不全発症率を多施設共同で検討する。
(1)-2 周産期心筋症の診療ガイドライン策定
 平成22年より継続して行っている周産期心筋症症例登録研究(PREACHER)において構築した、学際的全国規模のネットワークから、ガイドライン作成委員会を結成し、国内初の周産期心筋症診療ガイドラインを作成する。
(1)-3 関連学会のガイドライン承認
結果と考察
(1)-1 周産期心筋症の早期診断法開発研究
 妊娠高血圧症候群などの周産期心筋症ハイリスク妊産婦を対象にし、心機能低下や心不全発症を前向きにとらえる多施設共同研究を継続実施した。平成30年3月現在、19施設参加、2施設倫理委員会申請中。データ登録済症例数は443例。当初の想定通り、心機能低下や心不全発症例を認めており、研究は順調に進んでいる。計画通り平成31年9月に新規症例登録終了、平成32年3月に登録終了、解析を行い、早期診断法を確立する。得られた成果は、今回作成した診療ガイドラインを改訂する形で、反映、早期診断による患者予後改善を目指す。
 症例レジストリ、ハイリスク妊婦を対象にした早期診断法開発研究の途中解析報告会を平成28年7月と平成29年3月、7月、平成30年3月に開催し、意見交換を行った。
(1)-2 周産期心筋症の診断ガイドライン策定
 平成28年度、ガイドライン作成委員会を結成した。臨床医のニーズにあわせ、診断ガイドラインではなく診療ガイドライン策定へと変更した(平成28年12月16日の班会議にて決定)。平成29年度、ガイドラインを執筆し、平成30年2月ガイドライン委員会による読み合わせ後、修正作業を終了した。全95ページ、8万字(引用文献含めず)の疫学・診断から病因、治療・予後まで幅広い内容のガイドラインが完成した。
(1)-3 関連学会の承認
 日本産科婦人科学会、日本心不全学会の承認に向けた手続きを現在行っている。承認後は、ダイジェスト版をホームページなどに一般公開し、詳細版を出版の予定である。産科、循環器を含む関連科の医師・医療従事者を対象とし、周産期心筋症診療に大いに役立つものと考える。
結論
 早期診断法確立に必要な症例レジストリ、ハイリスク妊婦早期診断の多施設共同研究を継続実施している。研究は計画通りに進行しており、途中結果報告会を年2回開催し、活発な意見交換を行った。
わが国初の周産期心筋症診療ガイドラインを作成した。学会承認後一般公開し、学会などでの普及活動を精力的に行う。本研究成果は、周産期心筋症の早期診断・予後改善のための大きな礎となった。

公開日・更新日

公開日
2018-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201711017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、妊娠高血圧症候群や多胎など、周産期心筋症の危険因子を持つ妊産婦を対象に心スクリーニング検査を実施し、前向きに心筋症の発症を捉え、スクリーニング検査の有効性を確認出来た。成果は学会報告し、現在英文誌投稿中である。世界初の当該疾患の早期診断法研究のため、学術的・社会的意義は大きい。
臨床的観点からの成果
周産期心筋症は、既往歴のない妊娠女性が突然発症すること、初発症状の息切れ・浮腫などの心不全症状は健常妊産婦も訴える症状であること、循環器と産科の境界領域にある希少疾患のため、疾患認知度が低いこと、などの要因から、診断遅延傾向にある。一方、診断時の心機能が低下しているほど、長期予後が悪いことも知られている。本研究で作成した診療の手引きは、疾患認知度の向上に貢献し、開発した早期診断法は、患者の予後改善に直結する。
ガイドライン等の開発
日本心不全学会と日本産科婦人科学会の監修を経て、疫学・診断から病因、治療・予後まで幅広い内容の「周産期心筋症 診療の手引き」を発刊した(2019年中外医学社)。本邦初の診療の手引きにより、疾患概念を画一化し、疾患概念を普及するのみならず、臨床診療の現場や疾患関連研究における学際的体制の構築に貢献できた。
その他行政的観点からの成果
未曾有の少子化と母体の高年化が進む中、安心安全な妊娠出産を実現する医療は非常に重要である。周産期心筋症は母体間接死亡原因の上位疾患であるが、息切れ、浮腫といった心不全症状が、健常妊産褥婦も訴える症状であるため、診断遅延傾向にある。診断時の心機能の重症度が、その後の予後規定因子である当該疾患において、早期診断が、患者の予後改善、すなわち、母体死亡減少の一助となる。
その他のインパクト
平成28年7月 第3回周産期心筋症ミーティング(富山市)、平成29年3月 第4回(金沢市)、平成29年7月 第5回(横浜市)、平成30年3月 第6回(大阪市)、平成31年3月 第7回(横浜市)
平成30年4月 朝日新聞デジタルに記事掲載
https://www.asahi.com/articles/ASL423W6VL42UBQU00P.html?iref=com_api_bun_iryoulist

発表件数

原著論文(和文)
47件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
32件
H29年度10,H30年度5,R1年度8,R2年度2,R3年度7
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
55件
関連学会でのポスター掲示及びパンフレットの配布(日本循環器学会、地方会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ware JS, Li J, Mazaika E, Yasso CM, DeSouza T, Kamiya CA, et.al
Shared Genetic Predisposition in Peripartum and Dilated Cardiomyopathies
The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE , 374 (3) , 233-241  (2016)
原著論文2
Chizuko A Kamiya
Peripartum Cardiomyopathy From a Genetic Perspective
Circulation Journal , 80 (8) , 1684-1688  (2016)
原著論文3
神谷千津子
周産期心筋症の診断と治療
母体救命アドバンスガイドブック J-MELS公認講習会アドバンスコーステキスト , 273-280  (2017)
原著論文4
神谷千津子
妊娠出産と心臓病~周産期(産褥性)心筋症を中心に考える~
進歩する心臓研究-Tokyo Heart Journal , 68 , 24-30  (2017)
原著論文5
神谷千津子
周産期心筋症
産婦人科の実際 , 67 (1) , 1-5  (2018)
原著論文6
神谷千津子
周産期心筋症と心疾患合併妊娠-周産期心筋症の治療と心疾患合併妊娠の注意点
医学のあゆみ , 266 (13) , 1187-1191  (2018)
原著論文7
神谷千津子
心不全と周産期心筋症
村島温子監修 調剤と情報臨時増刊号 , 25 (7) , 55-63  (2019)
原著論文8
Isogai T,Kamiya C
Worldwide incidence of peripartum cardiomyopathy and overall maternal mortality.
Int Heart J. , 60 (3) , 1-7  (2019)
原著論文9
IkedaT,Kamiya C, Editors
Maternal and Fetal Cardiovascular Disease
- , 1-226  (2019)
原著論文10
厚生労働科学研究難治性疾患政策研究事業 「周産期心筋症ガイドライン作成」班 「特発性心筋症に関する調査研究」班
周産期心筋症診療の手引き
- , 1-120  (2019)
原著論文11
Otani K, Tokudome T, Kamiya CA, Mao Y, Nishimura H, Hasegawa Tet al
Deficiency of Cardiac Natriuretic Peptide Signaling Promotes Peripartum Cardiomyopathy-Like Remodeling in the Mouse Heart
Circulation , 141 (7) , 571-588  (2020)
原著論文12
神谷千津子
周産期(産褥)心筋症
伊藤浩、山下武志編循環器疾患最新の治療 , 229-230  (2020)
原著論文13
Kamiya CA, Shioyama W, Nakagawa W, 他
Cardiovascular disease among pregnant women after anticancer therapy.
J Obstet Gynaecol , 47 (7) , 2278-2290  (2021)
原著論文14
神谷千津子、大谷健太郎
周産期心筋症の最近の話題
循環器内科レビュー , 274-279  (2021)
原著論文15
Goli R, Li J, Brandimarto J, Levine LDet al
Genetic and Phenotypic Landscape of Peripartum Cardiomyopathy.
Circ. J , 143 (19) , 1852-1862  (2021)
原著論文16
神谷千津子
周産期心筋症
治療と診断 , 109 (4) , 551-555  (2021)
原著論文17
神谷千津子
シナリオ3:息が苦しい 周産期心筋症とは
ペリネイタルケア , 40 (7) , 23-27  (2021)
原著論文18
神谷千津子
周産期(産褥性)心筋症
週刊日本医事新報 , 5110 , 38-39  (2022)
原著論文19
伊藤浩編、神谷千津子
周産期心筋症とはどのようなものか?診断と治療up to date
令和の心不全治療ガイド , 157-160  (2022)
原著論文20
神谷千津子
重要な二次性DCM②周産期心筋症
循環器ジャーナル , 70 (1) , 65-71  (2022)

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
2022-06-07

収支報告書

文献番号
201711017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,470,000円
(2)補助金確定額
1,470,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 63,220円
旅費 444,820円
その他 693,569円
間接経費 270,000円
合計 1,471,609円

備考

備考
自己資金 1,609円

公開日・更新日

公開日
2019-03-25
更新日
-