文献情報
文献番号
201711013A
報告書区分
総括
研究課題名
肥厚性皮膚骨膜症の診療内容の均てん化に基づく重症度判定の策定に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
新関 寛徳(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 感覚器形態外科部 皮膚科)
研究分担者(所属機関)
- 横関 博雄(東京医科歯科大学大学院医学総合研究科)
- 石河 晃(東邦大学医学部 )
- 戸倉 新樹(浜松医科大学医学部)
- 椛島 健治(京都大学大学院医学研究科)
- 種瀬 啓士(慶應義塾大学医学部臨床研究推進センター)
- 関 敦仁(国立成育医療研究センター整形外科)
- 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター整肢療護園)
- 桑原 理充(奈良県立医科大学付属病院形成外科)
- 宮坂 実木子(国立成育医療研究センター放射線診療部)
- 三森 経世(京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学 )
- 久松 理一(杏林大学医学部第三内科学消化器内科 )
- 亀井 宏一(国立成育医療研究センター腎臓リウマチ膠原病科)
- 新井 勝大(国立成育医療研究センター消化器科)
- 堀川 玲子(国立成育医療研究センター内分泌代謝科)
- 工藤 純 (慶應義塾大学医学部遺伝子医学研究室 )
- 井上 永介(聖マリアンナ医科大学・医学部(医学教育文化部門(医学情報額)))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肥厚性皮膚骨膜症(Pachydermoperiostosis, PDP)は、1935年にTouraineが提唱した3主徴による確定診断、臨床分類が現在においても用いられている。すなわち、①ばち指、②骨膜性骨膜肥厚、③皮膚肥厚(頭部脳回転状皮膚を含む)を「完全型」、③において頭部脳回転状皮膚を含まない症例を「不全型」、骨膜性骨肥厚がはっきりしない症例を「初期型」と呼んでいる。この分類は経過、予後、遺伝形式を反映するものではないため、新しい臨床分類の確立が望まれている。
我々が発見した原因遺伝子SLCO2A1を含め2つの原因遺伝子の発見により、病因に関してプロスタグランジン(PG)過剰症であることが知られている。しかし、いまだ遺伝子変異と多様な合併症との関係
(Genotype-Phenotype correlation)は明らかではない。前年度は全国調査(1次)を実施したが、整形外科領域からは患者の報告はなかった。
本年度は1)非特性多発性小腸潰瘍症(CNSU)に着目し、同疾患研究班の協力の下、すでに遺伝子変異が同定されている症例について、PDPおよびその合併症の発症状況の調査を立案、2)皮膚肥厚病理組織において新たな所見を発見、3)初期型の診断に皮膚生検病理が有用であることを示した。
我々が発見した原因遺伝子SLCO2A1を含め2つの原因遺伝子の発見により、病因に関してプロスタグランジン(PG)過剰症であることが知られている。しかし、いまだ遺伝子変異と多様な合併症との関係
(Genotype-Phenotype correlation)は明らかではない。前年度は全国調査(1次)を実施したが、整形外科領域からは患者の報告はなかった。
本年度は1)非特性多発性小腸潰瘍症(CNSU)に着目し、同疾患研究班の協力の下、すでに遺伝子変異が同定されている症例について、PDPおよびその合併症の発症状況の調査を立案、2)皮膚肥厚病理組織において新たな所見を発見、3)初期型の診断に皮膚生検病理が有用であることを示した。
研究方法
1)非特性多発性小腸潰瘍症(CNSU)患者へのアンケート調査:国立成育医療研究センターよりCNSU患者主治医へ患者調査票を送付する。主治医リストは、CNSU遺伝子診断実施施設である九州大学医学部より供与される。2つの機関での倫理審査承認後に実施される予定である。
2)皮膚病理組織検査:通常の皮膚生検を実施した組織について、H&E染色、Elastica van Gieson染色、Alucian Blue染色、CD117(c-Kit)染色を行い、検討した。
3)遺伝子診断:かた通りSanger法にて、SLCO2A1遺伝子変異検索を行い、変異が検出されなかった症例はHPGD遺伝子変異を検討した。
2)皮膚病理組織検査:通常の皮膚生検を実施した組織について、H&E染色、Elastica van Gieson染色、Alucian Blue染色、CD117(c-Kit)染色を行い、検討した。
3)遺伝子診断:かた通りSanger法にて、SLCO2A1遺伝子変異検索を行い、変異が検出されなかった症例はHPGD遺伝子変異を検討した。
結果と考察
研究結果
1)非特性多発性小腸潰瘍症(CNSU)患者へのアンケート調査:現在倫理審査申請中であり、審査承認後ただちに実施開始する。
2)皮膚肥厚病理組織における皮膚病変における病理所見の解析:前額部の正常皮膚と比較して、検討を行った肥厚皮膚の標本では、真皮の浮腫、ムチンの沈着、弾性線維の変性、線維化、脂腺の増生、肥満細胞の浸潤がいずれの症例においても認められた。初期病変においては浮腫やムチンの沈着が強い傾向があり、病期の進行に伴って、弾性線維の変性、線維化、脂腺の増生の所見がめだつ傾向が認められた。また、真皮の浮腫が強い部位ではより多くの肥満細胞が浸潤している傾向が認められた。
3)初期型と診断した症例の検討:3主徴が揃わない段階では、確定診断にいたらないが、皮膚生検をおこなうことにより軽微な変化をとらえることができた。
考察
1) 非特性多発性小腸潰瘍症(CNSU)患者へのアンケート調査:倫理審査の承認を待ち、実施に移る予定である。アンケートの結果、CNSU、PDPの発症年齢、頻度の高い合併症などの特徴が明らかになれば、両者が互いに早期発見、予後マーカーとなりうるであろう。
2) 皮膚肥厚病理組織における皮膚病変における病理所見の解析:真皮浮腫部位にみられる肥満細胞浸潤は、本症における線維化の貴女を考える上で重要である。まだ、他の疾患での検討(真皮浮腫を生じる疾患での肥満細胞浸潤)は検討しえていないので、特異マーカーとなるかは今後の課題である。
3) 初期型と診断した症例の検討:今まで、皮膚肥厚がみられない疾患は肥大性骨関節症という診断を用いる傾向にあったが、特発性と2次性との鑑別が困難であった。今後、皮膚肥厚や骨膜肥厚が明らかでない症例においても前額部の皮膚生検をすることで確定診断に近づくことができる可能性が示された。
1)非特性多発性小腸潰瘍症(CNSU)患者へのアンケート調査:現在倫理審査申請中であり、審査承認後ただちに実施開始する。
2)皮膚肥厚病理組織における皮膚病変における病理所見の解析:前額部の正常皮膚と比較して、検討を行った肥厚皮膚の標本では、真皮の浮腫、ムチンの沈着、弾性線維の変性、線維化、脂腺の増生、肥満細胞の浸潤がいずれの症例においても認められた。初期病変においては浮腫やムチンの沈着が強い傾向があり、病期の進行に伴って、弾性線維の変性、線維化、脂腺の増生の所見がめだつ傾向が認められた。また、真皮の浮腫が強い部位ではより多くの肥満細胞が浸潤している傾向が認められた。
3)初期型と診断した症例の検討:3主徴が揃わない段階では、確定診断にいたらないが、皮膚生検をおこなうことにより軽微な変化をとらえることができた。
考察
1) 非特性多発性小腸潰瘍症(CNSU)患者へのアンケート調査:倫理審査の承認を待ち、実施に移る予定である。アンケートの結果、CNSU、PDPの発症年齢、頻度の高い合併症などの特徴が明らかになれば、両者が互いに早期発見、予後マーカーとなりうるであろう。
2) 皮膚肥厚病理組織における皮膚病変における病理所見の解析:真皮浮腫部位にみられる肥満細胞浸潤は、本症における線維化の貴女を考える上で重要である。まだ、他の疾患での検討(真皮浮腫を生じる疾患での肥満細胞浸潤)は検討しえていないので、特異マーカーとなるかは今後の課題である。
3) 初期型と診断した症例の検討:今まで、皮膚肥厚がみられない疾患は肥大性骨関節症という診断を用いる傾向にあったが、特発性と2次性との鑑別が困難であった。今後、皮膚肥厚や骨膜肥厚が明らかでない症例においても前額部の皮膚生検をすることで確定診断に近づくことができる可能性が示された。
結論
1)非特性多発性小腸潰瘍症(CNSU)患者へのアンケート調査:来年度も継続予定である。
2)皮膚肥厚病理組織における肥満細胞浸潤の検討:新しい疾患マーカーの可能性を示唆しており、皮膚生検の臨床的意義をさらに高めることができた。
3)3主徴が揃わない症例、特に皮膚肥厚が外観上はっきりしない症例でも皮膚生検により診断に近づける可能性が示唆された。
今後は以上の成果のもと、遺伝子診断との組み合わせによりこれまで不十分であった10代での確定診断が期待される。
2)皮膚肥厚病理組織における肥満細胞浸潤の検討:新しい疾患マーカーの可能性を示唆しており、皮膚生検の臨床的意義をさらに高めることができた。
3)3主徴が揃わない症例、特に皮膚肥厚が外観上はっきりしない症例でも皮膚生検により診断に近づける可能性が示唆された。
今後は以上の成果のもと、遺伝子診断との組み合わせによりこれまで不十分であった10代での確定診断が期待される。
公開日・更新日
公開日
2018-06-26
更新日
-