小児の急性脳症・けいれん重積状態の診療指針の確立

文献情報

文献番号
201711012A
報告書区分
総括
研究課題名
小児の急性脳症・けいれん重積状態の診療指針の確立
課題番号
H27-難治等(難)-一般-028
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 前垣 義弘(鳥取大学 医学部)
  • 齋藤 真木子(東京大学 医学部附属病院)
  • 山内 秀雄(埼玉医科大学 医学部)
  • 高梨 潤一(東京女子医科大学 八千代医療センター)
  • 山形 崇倫(自治医科大学 医学部)
  • 佐久間 啓(公益財団法人 東京都医学総合研究所)
  • 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
  • 齋藤 伸治(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 廣瀬 伸一(福岡大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,423,000円
研究者交替、所属機関変更
齋藤真木子(研究分担者)が平成29年7月1日付で東京大学大学院医学系研究科(助教)から東京大学医学部附属病院(特任助教)へ異動した。さらに平成30年1月31日付で退職し、研究班から退いた。

研究報告書(概要版)

研究目的
急性脳症全体に関する総論的研究として水口(研究代表者)は疫学の最新の動向の把握、佐久間(研究分担者)は炎症性神経疾患の鑑別のためのマーカーの探索、齋藤(伸)はてんかん性脳症の機構解明を目指した。個別の症候群に関する各論的研究として、前垣、高梨、山形(研究分担者)はAESDを、齋藤(真)(研究分担者)はANEを、奥村(研究分担者)はMERSを、廣瀬(研究分担者)はSCN1A遺伝子変異に合併する脳症を対象として、診断ないし治療の確立を目指した。
研究方法
総論的研究として水口は急性脳症の疫学に関する全国アンケート調査、佐久間はAERRPSにおける髄液中サイトカイン測定、齋藤(伸)はmTOR系の遺伝子解析と生化学的解析を行った。各論的研究として前垣は脳波の定量的解析、高梨は新しい疾患概念としての興奮毒性型軽症脳症の検討、山形は髄液プロテオーム解析とステロイドパルス療法、齋藤(真)はANEの遺伝、奥村は家族性MERSの遺伝、廣瀬(研究分担者)はSCN1Aの遺伝子型と表現型の相関を研究した。
結果と考察
総論的研究として水口は急性脳症の疫学に関する全国アンケートを実施し、日本全国の小児科専門医研修病院267機関から回答を得た。。佐久間は髄液中の炎症性サイトカイン著増、齋藤(伸)はmTOR系の遺伝子変異と活性亢進を見出した。各論的研究として前垣は脳波のAESD鑑別への応用可能性を示し、高梨は新しい症候群として興奮毒性型軽症脳症を提唱した。山形はAESD早期の診断と治療、齋藤(真)はANEの遺伝的リスクファクターに関する知見を蓄積した。奥村は家族性MERSの原因遺伝子MYRFを同定し、変異の機能解析を行った。廣瀬はSCN1A遺伝子変異について多数例でその全貌を明らかにし、遺伝子型と表現型の相関を解明した。
結論
総論的研究では急性脳症の疫学に関する2回目の全国調査を実施した。各論的研究では急性脳症のそれぞれの症候群における病因、診断、治療に関するエビデンスを蓄積した。

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201711012B
報告書区分
総合
研究課題名
小児の急性脳症・けいれん重積状態の診療指針の確立
課題番号
H27-難治等(難)-一般-028
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 前垣 義弘(鳥取大学 医学部)
  • 齋藤 真木子(東京大学 医学部附属病院)
  • 山内 秀雄(埼玉医科大学 医学部)
  • 高梨 潤一(東京女子医科大学 八千代医療センター)
  • 山形 崇倫(自治医科大学 医学部)
  • 佐久間 啓(公益財団法人 東京都医学総合研究所)
  • 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
  • 齋藤 伸治(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 廣瀬 伸一 (福岡大学 医学部)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部附属病院)
  • 久保田 雅也(国立成育医療研究センター 病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
平成28年度に先天性無痛無汗症とその関連疾患を研究する芳賀信彦と久保田雅也が研究分担者として本研究班に合流したが、平成29年度に別の研究班へ移動した。 平成29年7月1日に齋藤真木子(研究分担者)が東京大学大学院医学系研究科から東京大学医学部附属病院へ移動した。また平成30年1月31日付で退職し、研究班を離れた。

研究報告書(概要版)

研究目的
小児の重症けいれん発作はしばしば発達期の脳を傷害し、知的障害・発達障害・てんかん等の後遺症を生じて、生涯にわたる生活の不自由をもたらす。重症けいれんの代表的な臨床経過として、発作が長時間続くけいれん重積状態(てんかん重積状態)と、発作後に意識障害(昏睡)に陥る急性脳症とがある。両者は小児救急でしばしば遭遇する病態であり、日本の実態に即したガイドライン策定が求められていた。本研究は日本小児神経学会による小児急性脳症診療ガイドライン、小児のけいれん重積状態診療ガイドラインの策定を支援し、必要なエビデンスを供給することを目的として実施した。
研究方法
本研究班は日本小児神経学会のガイドライン統括委員会(担当理事:前垣義弘・研究分担者)の下に設置された小児急性脳症診療ガイドライン策定ワーキンググループ(委員長:水口雅・研究代表者)と小児のけいれん重積状態治療ガイドライン策定ワーキンググループ(委員長:林北見・東京女子医科大学教授)と密接に連携しながら進められた。とりわけ急性脳症診療ガイドライン策定には本研究班の多くの研究分担者(高梨潤一、奥村彰久、山内秀雄、佐久間啓、山形崇倫)が委員として直接関与した。また研究班では急性脳症、けいれん重積状態に関する総論的、各論的研究を行うことにより、ガイドラインの策定ないし改定に必要なエビデンスを収集、蓄積した。
なお平成28年度に先天性無痛無汗症とその関連疾患を研究する芳賀信彦と久保田雅也が本研究班に合流したが、平成29年度に別の研究班へ移動した。
結果と考察
小児急性脳症診療ガイドラインを平成28年度に完成し、2016年7月に出版した。小児のけいれん重積状態治療ガイドラインを平成29年度に完成し、2017年6月に出版した。
急性脳症は複数の症候群の集合体であり、それらの間には共通点と相違点がある。本研究は個別の症候群に関する疫学、病因、診断、治療の研究を進めた。けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)に関する研究では、早期診断・治療の検討を進めるとともに、類縁の軽症型脳症「興奮毒性型急性脳症」を新たな症候群として認識した。難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS)に関する研究では、髄液内サイトカイン変動のパターンを明らかにし、鑑別診断への応用に道を拓いた。可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)に関する研究では家族例における原因遺伝子MYRF、急性壊死性脳症(ANE)の研究ではリスク遺伝子であるCOX10、IL10遺伝子多型とHLA型を同定した。ヒトパレコウイルス3型脳症の日本における実態を解明した。けいれん重積から脳障害に至る過程(てんかん性脳症)に関わりの深いAngelman症候群、mTOR系、SCN1A遺伝子に関する研究で、臨床と遺伝子の相関に関する知見を得た。
結論
小児の急性脳症およびけいれん重積状態の診療の向上及び標準化を目的に、日本小児神経学会と連携して両者のガイドラインを作成するとともに、急性脳症の各症候群の病因、診断、治療に関するエビデンスを蓄積した。

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201711012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
総論的研究として急性脳症の疫学に関する全国アンケートを実施し回答を回収した。髄液中の炎症性サイトカイン著増、mTOR系の遺伝子変異と活性亢進を見出した。各論的研究として脳波のAESD鑑別への応用可能性を示し、新しい症候群として興奮毒性型軽症脳症を提唱した。AESD早期の診断と治療、ANEの遺伝的リスクファクターに関する知見を蓄積した。家族性MERSの原因遺伝子MYRFを同定し、変異の機能解析を行った。SCN1A遺伝子変異について多数例でその全貌を明らかにし、遺伝子型と表現型の相関を解明した。
臨床的観点からの成果
急性脳症は生涯にわたる神経症状を呈しうる難病であるとともに、発症早期には感染症を誘因とした急性疾患としての側面を有する。近年の感染症の動向の変化が急性脳症の発症に影響していないかを検討するため、最近の3年間(2014年4月~2017年10月)における急性脳症の全国疫学調査を実施した。全国から1,255症例が報告され、前回(2010年度)の調査結果との比較検討できるデータベースが構築された。
ガイドライン等の開発
小児のけいれん重積状態治療ガイドラインの策定を支援した。平成27年度にクリニカルクエスチョンの設定とエビデンス(論文)の収集と評価、平成28年度に推奨文の作成を行った(ガイドライン統括委員会担当理事:前垣義弘・研究分担者)。関連学会や患者団体へ外部評価、ならびに小児神経学会の有識者へ査読を依頼し、ガイドラインの最終決定を行った。平成29年度に完成し、同年6月に出版された。
その他行政的観点からの成果
日本小児神経学会のガイドライン策定ワーキンググループと連携して、「急性脳症」と「けいれん重積状態」の2つのガイドラインを、Minds準拠のガイドラインとして策定することができた。しばしば小児救急外来を受診する動機となり、時に小児の死亡や後天的脳障害の原因となるこれらの医学的問題に対する診療の向上と標準化に向けて、大きく進歩することができた。
その他のインパクト
世界中のANEの患者・家族が参加して平成28年に発足した団体ANE internationalが発展し、平成29年に本研究班のアドバイスを受けながらWebサイト(http://aneinternational.org/ane/)を充実させた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ANE internationalウェブサイトにおけるANEに関する啓発

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kurahashi H, Azuma Y, Masuda A,et al.
MYRF is associated with encephalopathy with reversible myelin vacuolization.
Annals of Neurology , 83 (1) , 98-106  (2018)
10.1002/ana.25125
原著論文2
Tsubouchi Y, Itamura S, Saito Y, et al.
Use of high b value diffusion-weighted magnetic resonance imaging in acute encephalopathy/encephalitis during childhood.
Brain and Development , 40 (2) , 116-125  (2018)
10.1016/j.braindev.2017.07.012
原著論文3
Hirai N, Yoshimaru D, Moriyama Y, et al.
Clinically mild infantile encephalopathy associated with excitotoxicity.
Journal of the Neurological Sciences , 373 , 138-141  (2017)
10.1016/j.jns.2016.12.043
原著論文4
Hirai N, Yoshimaru D, Moriyama Y, et al.
A new infectious encephalopathy syndrome, clinically mild encephalopathy associated with excitotoxicity (MEEX).
Journal of the Neurological Sciences , 380 , 27-30  (2017)
10.1016/j.jns.2017.06.045
原著論文5
Ishida S, Yasukawa K, Koizumi M, et al.
Excitotoxicity in encephalopathy associated with STEC O-157 infection.
Brain and Development , 40 (4) , 357-360  (2018)
10.1016/j.braindev.2017.11.008
原著論文6
Negishi Y, Miya F, Hattori A, et al.
A combination of genetic and biochemical analyses for the diagnosis of PI3K-AKT-mTOR pathway-associated megalencephaly.
BMC Medical Genetics , 18 , 4-  (2017)
10.1186/s12881-016-0363-6
原著論文7
Ishii A, Watkins JC, Chen D, et al.
Clinical implications of SCN1A missense and truncation variants in a large Japanese cohort with Dravet syndrome.
Epilepsia , 58 (2) , 282-290  (2017)
10.1111/epi.13639

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
2022-06-03

収支報告書

文献番号
201711012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,049,000円
(2)補助金確定額
7,049,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,596,194円
人件費・謝金 718,653円
旅費 659,060円
その他 449,093円
間接経費 1,626,000円
合計 7,049,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-02-06
更新日
-