文献情報
文献番号
201711011A
報告書区分
総括
研究課題名
性分化・性成熟疾患群における診療ガイドラインの作成と普及
課題番号
H27-難治等(難)-一般-025
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
研究分担者(所属機関)
- 堀川 玲子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター、内分泌代謝科)
- 位田 忍(大阪母子医療センター、消化器・内分泌科)
- 長谷川 奉延(慶應義塾大学、小児科)
- 鹿島田 健一(東京医科歯科大学、小児科)
- 中井 秀郎(自治医科大学、とちぎ子ども医療センター、小児泌尿器科)
- 深見 真紀(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所、分子内分泌研究部)
- 窪田 正幸(新潟大学大学院医歯学総合研究科、小児外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、小児慢性特定疾病対象とされた性分化・性成熟関連疾患の診療ガイドライン作成である。また、正確かつ迅速な診断法の樹立、難病に必要とされる管理・治療法のまとめと普及、件来・症例登録も重要な課題である。
研究方法
十分な倫理的配慮の下で、(1) 性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類、(2) 尿ステロイドプロフィール解析の有用性、(3) 遺伝子診断法の検討、(4) 外科的治療法の検討、(5) 症例情報登録および検体保存について検討した。
結果と考察
性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類:全ての性分化疾患に共通する概要、診断基準、重症度分類の基本的考えをまとめ、これに基づき、ターナー症候群、マッキューン・オルブライト症候群、精巣形成不全、卵巣形成不全、卵精巣性性分化疾患、混合性性腺異形成症、17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症、5α-還元酵素欠損症、アンドロゲン不応症、アロマターゼ過剰症(エストロゲン過剰症)、アロマターゼ欠損症(アンドロゲン過剰症)、46,XX精巣性性分化疾患の概要、診断基準、重症度分類を共同で作成した。そして、この内容を、日本小児内分泌学会の承認を得た後、日本内分泌学会の基本的承認のもと、厚生労働省が推進する「小児慢性特定疾病と指定難病制度」との参考資料として提出した。さらに、ターナー症候群における成人期の病態に関するデータベースを収集し、まとめた。また、プラダーウイリ症候群における成長ホルモン使用による体組成改善効果のシステマチックレビューを行った。これにより、成長ホルモンは、低身長より、むしろ体組成改善を目的として行われるべきであることが判明した。なお、総排泄腔遺残、総排泄腔外反についてもガイドライン作成を行い、そのの普及と啓発のため、日本小児外科学会とMindsへのホームページ掲載を申請し、承認をうけ掲載された。
尿ステロイドプロフィール解析の有用性:17α水酸化酵素欠損症(17OHD)とP450酸化還元酵素欠損症(PORD)は臨床症状および生化学的所見が類似する。遺伝学的に確定した17OHD6例、PORD34例を対象とし、尿ステロイドプロフィルを用いて検討したところ、両者の生化学的鑑別が可能であった。これにより、副腎疾患の簡便かつ高感度の診断基準が作成された。
遺伝子診断法の検討:46, XY性分化疾患患者と性成熟疾患患者において、多数の既知疾患原因遺伝子変異を同定した。解析結果はデータベースに登録し、さらに主治医を通じて患者に還元した。特記すべき成果として、PROKR2フレームシフト変異およびMKRN3機能喪失変異が中枢性思春期早発症を招きうること、また、SOX2半量不全が合併奇形を伴わない性成熟疾患の原因となることをはじめて明らかとした。また、精子形成障害の原因となるSTX2遺伝子変異を同定した。さらにこれまでに遺伝子診断システムが確立していない46,XX性分化疾患について迅速遺伝子解析法の検討を行った。
臨床遺伝子診断システムの開発と試験運用
かずさDNA研究所と連携し、multiplex PCR法およびを利用した効率的既知疾患責任遺伝子変異スクリーニングシステムを開発した。これまでに集積した日本人患者の変異情報をもとに解析すべき遺伝子を選択し、46,XY性分化疾患および性成熟疾患の次世代シークエンサーパネルを作成した。さらに、継続して遺伝子解析技術を提供するため、倫理基盤、技術基盤、経済基盤の整備を行った。パイロットスタデイとして、上記の2パネルを対象としてNPO法人オーファンネットジャパンを介した遺伝子診断受託の運営を開始した。
さらに、今後、継続して遺伝子診断技術の提供をすることを考え、解析施設をオーファンネットジャパンからかずさ衛生検査所に移管した。
症例情報登録および検体保存:本年度新たに約250の臨床検体が得られた。先行研究で集積された検体と合わせて800以上が集積された。これらの症例の情報は、成育成育希少疾患症例レジストリシステムに登録した。
尿ステロイドプロフィール解析の有用性:17α水酸化酵素欠損症(17OHD)とP450酸化還元酵素欠損症(PORD)は臨床症状および生化学的所見が類似する。遺伝学的に確定した17OHD6例、PORD34例を対象とし、尿ステロイドプロフィルを用いて検討したところ、両者の生化学的鑑別が可能であった。これにより、副腎疾患の簡便かつ高感度の診断基準が作成された。
遺伝子診断法の検討:46, XY性分化疾患患者と性成熟疾患患者において、多数の既知疾患原因遺伝子変異を同定した。解析結果はデータベースに登録し、さらに主治医を通じて患者に還元した。特記すべき成果として、PROKR2フレームシフト変異およびMKRN3機能喪失変異が中枢性思春期早発症を招きうること、また、SOX2半量不全が合併奇形を伴わない性成熟疾患の原因となることをはじめて明らかとした。また、精子形成障害の原因となるSTX2遺伝子変異を同定した。さらにこれまでに遺伝子診断システムが確立していない46,XX性分化疾患について迅速遺伝子解析法の検討を行った。
臨床遺伝子診断システムの開発と試験運用
かずさDNA研究所と連携し、multiplex PCR法およびを利用した効率的既知疾患責任遺伝子変異スクリーニングシステムを開発した。これまでに集積した日本人患者の変異情報をもとに解析すべき遺伝子を選択し、46,XY性分化疾患および性成熟疾患の次世代シークエンサーパネルを作成した。さらに、継続して遺伝子解析技術を提供するため、倫理基盤、技術基盤、経済基盤の整備を行った。パイロットスタデイとして、上記の2パネルを対象としてNPO法人オーファンネットジャパンを介した遺伝子診断受託の運営を開始した。
さらに、今後、継続して遺伝子診断技術の提供をすることを考え、解析施設をオーファンネットジャパンからかずさ衛生検査所に移管した。
症例情報登録および検体保存:本年度新たに約250の臨床検体が得られた。先行研究で集積された検体と合わせて800以上が集積された。これらの症例の情報は、成育成育希少疾患症例レジストリシステムに登録した。
結論
全ての性分化疾患に共通する概要、診断基準、重症度分類の基本的考えをまとめ、これに基づき、12の疾患の概要、診断基準、重症度分類を作成した。また、遺伝的異質性に富む性分化疾患に正確かつ迅速な診断法を樹立する上で、遺伝子診断ならびに尿ステロイド解析の有用性を確認した。さらに、外科的治療法の検討、検体集積体制の整備を行った。これらの成果は、本研究の目的達成に大きく貢献すると期待される。
公開日・更新日
公開日
2018-05-23
更新日
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