文献情報
文献番号
201711008A
報告書区分
総括
研究課題名
単心室循環症候群の予後に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-022
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
中西 敏雄(学校法人 東京女子医科大学 医学部循環器小児科)
研究分担者(所属機関)
- 杉山 央(学校法人 東京女子医科大学 医学部循環器小児科 )
- 稲井 慶(学校法人 東京女子医科大学 医学部循環器小児科 )
- 小野 博(国立成育医療研究センター 循環器科)
- 新居正基(静岡県立こども病院 循環器科)
- 白石 公(国立循環器病研究センター 小児循環器診療部)
- 大月審一(岡山大学 医学部小児循環器科)
- 犬塚 亮(東京大学医学部附属病院 小児科)
- 丹羽公一郎(聖路加国際大学病院 循環器内科)
- 小垣滋豊(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 武田充人(北海道大学大学院医学研究科小児発達医学分野 小児科学)
- 八尾厚史(東京大学医学部附属病院 循環器内科)
- 市田蕗子(富山大学大学院医学薬学研究部 小児科)
- 安河内聰(長野県立こども病院 循環器センター 小児循環器)
- 嘉川忠博(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 小児科)
- 松山 裕(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 生物統計学分野)
- 三谷義英(三重大学医学部附属病院 周産母子センター)
- 笠原真悟(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 坂本喜三郎(独立行政法人静岡県立病院機構 静岡県立こども病院 心臓血管外科)
- 赤木禎治(岡山大学病院 成人先天性心疾患センター)
- 住友直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
- 山岸敬幸(慶應義塾大学 医学部小児科)
- 先崎秀明(埼玉医科大学 総合医療センター)
- 賀藤 均(国立成育医療研究センター)
- 相馬 桂(東京大学医学部附属病院 循環器内科)
- 小山耕太郎(岩手医科大学 医学部循環器小児科)
- 平田康隆(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
- 椎名由美(聖路加国際病院 循環器内科)
- 市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
- 中野俊秀(福岡市立こども病院 心臓血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,849,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
単心室循環症候群は、重度の慢性低酸素血症、多呼吸、易疲労感などの慢性心不全症状を呈し、長期の療養を必要とする。手術が不可能で、姑息手術しかできないこともある。いまだ単心室循環症候群の治療方法は確立していない。本研究では、我が国の先天性心疾患を診療している主要施設による多施設共同の疫学研究により、単心室循環症候群、およびそれを構成する疾患の、病態、重症度、自然歴、非自然歴、死亡の頻度、生活の質(QOL)を明らかにする。
研究方法
各分担研究者は、所属する施設の単心室循環症候群(疾患としては三尖弁閉鎖症、純型肺動脈閉鎖症、左心低形成症候群、単心室症)の患者、過去30年間の全症例の登録を行う。病歴、病態、治療、予後などに関するデータ、具体的には、心臓エコー、心臓カテーテルなどの生理検査データ、血管造影データ、肺動脈の大きさ、肺血管抵抗、心機能、房室弁逆流の有無、程度、血液検査データ、手術内容、内服薬などに関するデータを収集する。
結果と考察
2010年以前にfontan手術を施行され、術後在院死せずに退院した患者を対象に、研究協力施設から計1286人のfontan患者のデータ収集を行った。クリーニングされたデータを用いて予備的なデータ解析を施行し、以下の7つのプロジェクトについて統計学的見地を踏まえ解析計画を作成した。
1.Fontan患者の長期生命予後に関する解析
2.Fonan術後の蛋白漏出性胃腸症の危険因子に関する解析
3.Fontan関連肝臓病変の危険因子に関する解析
4.Fontan術後の妊娠についての調査
5.Fontan術後の不整脈の危険因子に関する解析
6.Fontan術後の血栓・梗塞・出血イベントの危険因子に関する解析
7.Fontan手術時の開窓作成の有無による予後の違いについての検討
現在、解析計画書に基づいて解析を行っている。
1.Fontan患者の長期生命予後に関する解析
これまでのデータ解析の結果、死亡を含めた重症合併症は術後30年で90%に発生していることがわかった。死亡は術後30年で20%に発生していた。心機能不全は術後30年で30%に発生していた。
2.Fonan術後の蛋白漏出性胃腸症の危険因子に関する解析
Fonan術後の蛋白漏出性胃腸症は術後20年で8%に発生していることがわかった。ただ、最良の治療法は未確定のままであった。
3.Fontan関連肝臓病変の危険因子に関する解析
肝線維症は術後30年で80%に発生していた。肝硬変は術後30年で20%に発生していた。肝がんは術後30年で約5%に発生していた。肝硬変の発生危険因子は、疾患では修正大血管転位症、純型肺動脈閉鎖症、房室中隔欠損症、内臓錯位で、病態としては肺動脈低形成、低心拍出であった。
4.Fontan術後の妊娠についての調査
Fontan術後の妊娠は9妊娠9出産であった。1例を除き全員帝王切開であった。出血などの合併症が多かった。一方、児は、低出生体重であったが、合併症無く成長していた。
5.Fontan術後の不整脈の危険因子に関する解析
術後20年で50%に心房頻拍や心房細動が発生していた。不整脈はTCPC型の手術に比べ、心房肺動脈結合(APC)型の手術に多く発生していた。
6.Fontan術後の血栓・梗塞・出血イベントの危険因子に関する解析
血栓は術後30年で約10%に、塞栓症は術後30年で10%に発生していた。ワーファリン服用で血栓の発生頻度が減るか興味のあるところであったが、本研究では、その結論を得ることは困難であった。
1.Fontan患者の長期生命予後に関する解析
2.Fonan術後の蛋白漏出性胃腸症の危険因子に関する解析
3.Fontan関連肝臓病変の危険因子に関する解析
4.Fontan術後の妊娠についての調査
5.Fontan術後の不整脈の危険因子に関する解析
6.Fontan術後の血栓・梗塞・出血イベントの危険因子に関する解析
7.Fontan手術時の開窓作成の有無による予後の違いについての検討
現在、解析計画書に基づいて解析を行っている。
1.Fontan患者の長期生命予後に関する解析
これまでのデータ解析の結果、死亡を含めた重症合併症は術後30年で90%に発生していることがわかった。死亡は術後30年で20%に発生していた。心機能不全は術後30年で30%に発生していた。
2.Fonan術後の蛋白漏出性胃腸症の危険因子に関する解析
Fonan術後の蛋白漏出性胃腸症は術後20年で8%に発生していることがわかった。ただ、最良の治療法は未確定のままであった。
3.Fontan関連肝臓病変の危険因子に関する解析
肝線維症は術後30年で80%に発生していた。肝硬変は術後30年で20%に発生していた。肝がんは術後30年で約5%に発生していた。肝硬変の発生危険因子は、疾患では修正大血管転位症、純型肺動脈閉鎖症、房室中隔欠損症、内臓錯位で、病態としては肺動脈低形成、低心拍出であった。
4.Fontan術後の妊娠についての調査
Fontan術後の妊娠は9妊娠9出産であった。1例を除き全員帝王切開であった。出血などの合併症が多かった。一方、児は、低出生体重であったが、合併症無く成長していた。
5.Fontan術後の不整脈の危険因子に関する解析
術後20年で50%に心房頻拍や心房細動が発生していた。不整脈はTCPC型の手術に比べ、心房肺動脈結合(APC)型の手術に多く発生していた。
6.Fontan術後の血栓・梗塞・出血イベントの危険因子に関する解析
血栓は術後30年で約10%に、塞栓症は術後30年で10%に発生していた。ワーファリン服用で血栓の発生頻度が減るか興味のあるところであったが、本研究では、その結論を得ることは困難であった。
結論
本研究は、今までに我が国で行われたフォンタン術後患者の調査のなかで最大の患者数を持つものとなった。本研究により、フォンタン術後に高頻度に重大な合併症が発生していることがわかった。フォンタン術後、比較的短期間のうちは、患者は元気で無症状で過ごす。患者や家族は、心臓疾患は治癒したかに錯覚する。しかし、成人して20歳台後半から30歳台になると、様々な重症合併症が出現してくる。結婚し家庭を持つ年代の患者に訪れる悲劇である。現在のところ、これら合併症はフォンタン手術が持つ宿命と考えられている。今回の研究でも、治療法や管理法で合併症を防ぐ方策は見つからなかった。しかし、無症状のうちから心不全治療や肺血管拡張薬を開始するなどの治療法は残されている。また、合併症の発生を予知、ないし早期発見する方法が見つかれば、よりよい患者管理ができる可能性がある。心不全治療や肺血管拡張薬の効果に関する今後の研究が望まれる。また単心室循環症候群の医療システムの向上にむけてさらなる研究が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2018-06-13
更新日
-