文献情報
文献番号
201711005A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期心筋症の心電図学的抽出基準、心臓超音波学的診断基準の作成と遺伝学的検査を反映した診療ガイドライン作成に関する研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-019
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
- 堀米 仁志(筑波大学医学医療系 小児内科学)
- 大野 聖子(国立循環器病研究センター 分子生物学部)
- 住友 直方(埼玉医科大学国際医療センター)
- 市田 蕗子(富山大学大学院 医学薬学研究部)
- 長嶋 正實(愛知県済生会リハビリテーション病院)
- 緒方 裕光(女子栄養大学 疫学・生物統計学研究室)
- 堀江 稔(滋賀医科大学 呼吸循環器内科)
- 蒔田 直昌(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
- 牛ノ濱 大也(大濠こどもクリニック)
- 田内 宣生(愛知県済生会リハビリテーション病院)
- 佐藤 誠一(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)
- 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
- 岩本 眞理(済生会横浜市東部病院こどもセンター)
- 太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域医学系)
- 立野 滋(千葉県循環器センター 小児科)
- 小垣 滋豊(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 野村 裕一(鹿児島市立病院 小児科)
- 畑 忠善(藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科)
- 泉田 直己(医療法人社団永泉会 曙町クリニック)
- 廣野 恵一(富山大学大学院 医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,707,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健常児48,401名の心電図データ、628名の心臓超音波データと、心筋症患児 376名{肥大型心筋症 (HCM) 135名、拡張型心筋症 (DCM) 91名、左室心筋緻密化障害 (LVNC) 106名}のデータから、現在まで存在しなかった小児期心筋症の抽出基準/診断基準を作成し、遺伝学的検査を含めた患児情報から診療ガイドラインを作成する。拘束型心筋症、催不整脈性右室心筋症患児データも収集し、暫定案を作成する。
研究方法
1. QRS波高基準による肥大型心筋症の早期診断に関する検討;[1-1] 健常児48,401名の心電図を用いて、小1・中1・高1の男女別に心電図波高によるHCM抽出基準値を作成した。[1-2] 小学4年以降に診断されたHCM患児12例の小学1年の心電図を用い、上記抽出基準で診断可能か検討した。2. 心電図所見、心エコー所見の出現時期に関する肥大型心筋症2症例の検討;16歳時、15歳時に心筋バイオプシで確認された肥大型心筋症患児の心電図所見、心臓超音波所見を後方視的に検討した。3. 小児期拡張型心筋症の心エコー指標の推移と予後;本研究班に所属する16施設から小児期DCM症例のデータを収集し、解析した。調査項目は、診断時年齢、診断の契機、臨床的特徴、遺伝的背景、心エコー所見、臨床経過、治療内容と予後等であった。死亡、心移植、院外心停止例を予後不良例とした。4. 心筋緻密化障害に関する研究;小児期LVNC症例のデータを収集し、解析した。調査項目は前述した。5. 小児の拘束型心筋症の疫学調査に関する研究;小児期拘束型症例のデータを収集し、解析した。調査項目は前述した。6. 小児の不整脈原性右室心筋症の疫学調査に関する研究;小児期不整脈原性右室心筋症例のデータを収集し、解析した。調査項目は前述した。7. LMNA心筋症における遺伝子変異に基づくリスク分類;45家系77人のLMNA変異キャリアを対象とした。対象者の遺伝子解析時の年齢は45±17歳で、平均49カ月間の経過観察を行った。8. 家族性心臓伝導障害の新規遺伝子に関する研究;原因遺伝子不明の日本人洞不全症候群・房室ブロック31家系に対して心疾患関連457遺伝子のターゲットエクソン解析をおこない、ヨーロッパの孤発性房室ブロック15家系に対してトリオ全エクソン解析を行った。
結果と考察
1. 12例中、(RV3+SV3)基準により4例、Cornell基準(RaVL+SV3)により3例診断可能であった。V3基準を満たした4例は突然死例、院外心停止例、中学1時心室壁厚が既に19mmあった例、および母親がHCMの例であった。2. 16歳時、15歳時診断された男児2例は小学1年時既に心電図上異常所見があったが、心臓超音波検査は2例とも正常であった。3. 91例(M/F=51/38, 不明2例)収集した。乳児期に発症のピーク(32例)があった。乳児期診断例の多くはその後左室機能が改善/正常化した。予後不良例が24例あった。4. 105例(M/F=67/38)収集した。心検抽出例は43%であった。予後不良例は6%であった。心電図上、fragmented QRS, J波が重要と考えられた。5. 25例(M/F=14/11)収集した。40%が心検で抽出され、予後不良例が52%を占めた。遺伝学的検査も重要と考えられた。6. 14例(M/F=7/7)収集した。65%が心検で抽出され、予後不良例が14%を占めた。遺伝学的検査も必要と考えられた。7. 不整脈原性右室心筋症は稀な疾患であるが、予後は不良であり、早期発見、治療が重要である。8. truncating mutationキャリアの方がmissense mutationキャリアより発症年齢が若く、低心機能であり、遺伝学的解析予後予測に有用であった。9. Cx45遺伝子GJC1は、顔面頭蓋骨・歯・手指形骨成異常を伴う進行性心房伝導障害という、新規の遺伝性不整脈の原因遺伝子である。
結論
健常児48,401名の心電図データ、628名の心臓超音波データ、心筋症患児 376名の心電図・心臓超音波所見、および遺伝学的検査を併用することにより、感度・特異度を考慮した抽出/診断基準作成と予後予測が可能と考えられた。このことは小児期心筋症の早期診断、早期介入が行え、次世代を担う子どもの健全育成と心身障害発生予防に大きく貢献する。
公開日・更新日
公開日
2018-06-05
更新日
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