先天性心疾患児の成人期以降も含めた長期予後の把握のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201711001A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性心疾患児の成人期以降も含めた長期予後の把握のあり方に関する研究
課題番号
H27-健やか-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター・教育推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久雄(国立循環器病研究センター・理事長)
  • 安田 聡(国立循環器病研究センター・副院長)
  • 西村 邦宏(国立循環器病研究センター・循環器病統合情報センター)
  • 大内秀雄(国立循環器病研究センター・小児循環器部・成人先天性心疾患科)
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター・小児心臓外科)
  • 吉松 淳(国立循環器病研究センター・周産期婦人科部)
  • 丹羽 公一郎(聖路加国際病院・心血管センター・循環器内科)
  • 安河内聰(長野県立こども病院・循環器センター)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター・病院長)
  • 八尾 厚史(東京大学医学部・保健健康推進本部)
  • 赤木 禎治(岡山大学附属病院・循環器疾患治療部)
  • 市田 蕗子(富山大学医学薬学研究部・学長補佐)
  • 落合 亮太(横浜市立大学・医学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の診断および治療法のめざましい進歩により、既に現在日本には約45万人の成人先天性心疾患患者が存在し、今後も年間約1万人の割合で増加すると見込まれている。患者は成人期に入り年齢を重ねると、疾患特有の遺残症や続発症だけでなく、肥満や高血圧などの生活習慣病の要素が加わり、病態は複雑化する。また女性では、妊娠や出産に際して心機能が悪化するために特別なケアーが必要となる。
 成人先天性心疾患患者数の増加と前述した成人特有の諸問題のため、小児科医だけでの診療には質的にも量的にも限界に達してきている。一方で、循環器内科医の多くは先天性心疾患の分野には不慣れであり、受診した患者を敬遠する傾向にある。さらに、自分の病状を十分理解しないままに思春期以降に診療を中断してしまう患者も多く存在する。そのため、日本における特に成人期の患者の実態は明らかでない。患者の生命予後と生活の質を高めるためには、現在成人患者が全国にどのくらい存在し、どのような病名で、どの科が診療を行っているか、まず患者の実態を明らかにする必要がある。その結果に基づき、全国各地域での問題点を洗い出し、各地域に応じた診療体制を提案し確立してゆく必要がある。
 本研究では患者の実態調査を行うため、日本成人先天性心疾患学会が運営中心である患者登録システム「ACHDネットワーク」を利用することで、患者データベースを確立して全国の成人先天性心疾患患者の実態を把握する。また、全国各地域それぞれの医療事情に応じた成人先天性心疾患の診療体制のモデルを提言して、患者の診療と医療連携、医療行政、社会支援などに役立てる。
研究方法
1. 班研究から立ち上がった循環器内科拠点施設「ACHDネットワーク」(循環器内科拠点施設ネットワーク)を利用して、地域の成人先天性心疾患診療の中核を担う施設を全国に約50カ所認定し、各地域の医療事情に応じた診療連携を実行する。各地域の中核施設やこども病院に情報提供および提言を行い、地域ごとに新たに生じる問題点を収集し、その対策を協議する。
2. 得られた診療データや各地域での問題点を拠点施設において整理する。さらに全国の拠点病院が連携し、「ACHDネットワーク」を介して情報交換、情報収集を行う。
3. 日本循環器学会JROADとDPC情報との組み合わせにより、小児期から成人期までの先天性心疾患患者シームレルな診療情報の取得を目指す。患者の実態調査、とくに複雑先天性心疾患の現状調査(フォンタン術後患者、アイゼンメンガー症候群、感染性心内膜炎、先天性心疾患合併妊娠出産)など実態調査を、日本成人先天性心疾患学会と協力のもとに押し進める。
4. ACHDネットワーク患者登録システムを実際に運営する。この患者登録システム(個票データ)とJROAD-DPCデータを突合し、DPC情報の正確性を検証することで、情報精度の向上に努める。両データベースの突合により、断面的調査であるJROAD(-DPC)を横断的調査(予後追跡)へと整備、患者登録システム(個票データ)は網羅的・悉皆的要素を持たせる。
5. 小児期からの膨大な患者情報のデジタル化、診療情報の共有化の体制を試みる。



結果と考察
「ACHDネットワーク」を用いて、平成29年末までに約7,000人の成人先天性心疾患患者のデータベース(病名、生年月日、合併症、手術歴など記載)を作成した。
 また、「ACHDネットワーク」では、地域の成人先天性心疾患診療の中核を担う施設を全国に約50カ所認定し、各地域の医療事情に応じた診療連携の確立を継続して進めている。これまでに地域に応じた連携体制の構築が順調に進められている長野県や兵庫県や福岡県をモデル地区として、全国の地域ごとのネットワークの構築を押し進めてきた。
 また日本医学研究開発機構の「先天性心疾患の長期予後からみた介入のあり方に関する研究」と協調することにより、「ACHDネットワーク」データベースと、先天性心疾患に関連する他の小児関連のデータベースや、病院診療情報などを統合することによって、患者の小児期から成人期までの連続したデータベースが構築できないかの検証を行った。
結論
成人先天性心疾患患者のレジストリシステムが構築されれば、日本での成人患者の実態が把握でき、それにより全国各地域の医療情勢に適した診療体制および診療連携を構築することができる。その結果、小児専門施設でも循環器内科施設でも受け入れが困難で、不整脈や心不全、妊娠出産の際に病状が急変することのある成人先天性心疾患患者が、安心して通院や入院治療を受けることが可能になる。
最終的には、全国各地域、具体的には都道府県レベルでの診療連携、特に小児科と内科、地域病院と拠点施設の確間の連携の確立をめざす。

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201711001B
報告書区分
総合
研究課題名
先天性心疾患児の成人期以降も含めた長期予後の把握のあり方に関する研究
課題番号
H27-健やか-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター・教育推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久雄(国立循環器病研究センター・理事長)
  • 安田 聡(国立循環器病研究センター・副院長 )
  • 西村 邦宏 (国立循環器病研究センター・循環器病統合情報センター)
  • 大内秀雄(国立循環器病研究センター・小児循環器部・成人先天性心疾患科 )
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター・小児心臓外科 )
  • 吉松 淳(国立循環器病研究センター・周産期婦人科部)
  • 丹羽 公一郎(聖路加国際病院・心血管センター・循環器内科 )
  • 安河内聰 (長野県立こども病院・循環器センター )
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター・病院長)
  • 八尾 厚史(東京大学医学部・保健健康推進本部)
  • 赤木 禎治(岡山大学附属病院・循環器疾患治療部)
  • 市田 蕗子(富山大学医学薬学研究部・学長補佐 )
  • 落合 亮太(横浜市立大学・医学部看護学科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
該当なし

研究報告書(概要版)

研究目的
日本には現在約45万人の先天性心疾患患者患者が存在する(Int J Cardiol. 2011;146:13-6.)。これらの患者は、年齢面から小児科施設で受け入れが困難な一方、複雑な血行動態から内科施設でも敬遠される傾向にある。また一部の患者では、病気に対する理解不足から、思春期以降に診療を自己中断してしまうケースも少なくない。このような理由から、日本における成人先天性心疾患患者の実態の詳細は不明であり、患者に必要な集学的診療体制の確立や、医療・社会保障の充実を妨げてきた。成人先天性心疾患患者を適切に管理し、その生命予後を改善するとともに、生活の質を向上させるには、患者の実態を把握することが必須である。患者レジストリシステムを確立し、全国各地域で患者がどのように分布し診療を受けているかを把握し、診療連携と診療体制を確立する。
 
研究方法
1. 班研究から立ち上がった循環器内科拠点施設「ACHDネットワーク」を利用して、地域の成人先天性心疾患診療の中核を担う施設を全国に約50カ所認定し、各地域の医療事情に応じた診療連携を実行する。本研究班から各地域の中核施設やこども病院に情報提供および提言を行い、地域ごとに新たに生じる問題点を収集し、その対策を協議する。最終的に各地域内でこども病院から拠点施設へ、小児科から内科へ、地域の中核施設から拠点施設への診療連携ネットワークを都道府県レベルで確立する。
2. 得られた診療データや各地域での問題点を拠点施設において整理する。さらに全国の拠点病院が連携し、情報交換、情報収集を行う。
3. 日本循環器学会JROADとDPC情報との組み合わせにより、小児期から成人期までの先天性心疾患患者シームレルな診療情報の取得を目指す。患者の実態調査、とくに複雑先天性心疾患の現状調査(フォンタン術後患者、アイゼンメンガー症候群、感染性心内膜炎、妊娠出産)など実態調査を、日本成人先天性心疾患学会と協力のもとに押し進める。
4. 小児期からの膨大な患者情報のデジタル化、診療情報の共有化の体制を試みる。
5. 各地域(都道府県レベル)での診療連携(小児科と内科、地域病院と拠点施設へ)の確立をめざす。
6.  日本循環器学会そのほかの合計8学会との共同で、「先天性心疾患の成人への移行医療に関する提言」を取りまとめて、発刊する。
結果と考察
「ACHDネットワーク」を利用して、地域の成人先天性心疾患診療の中核を担う施設を全国に約50カ所認定し、各地域の医療事情に応じた診療連携の確立を進めた。今後はこども病院から拠点施設へ、小児科から内科へ、地域の中核施設から拠点施設への移行医療の診療連携ネットワークを都道府県レベルで確立する。
 「ACHDネットワーク患者登録システム」を用いて、平成29年末までに約7,000人の成人先天性心疾患患者のデータベース(病名、生年月日、合併症、手術歴など記載)を作成した。
 「ACHDネットワーク」による患者の診療データベース入力を進めるとともに、今後は日本循環器学会の「JROAD循環器疾患調査システム」と連動して、患者情報、DPCデータからの診療情報、さらには小児慢性特定疾患克服研究事業データを利用して、小児期から成人期までの患者シームレスなデータベースの構築を進めた。
 本研究班と日本成人先天性心疾患学会との連携により、特定の患者の実態調査、成人期以降にとくに問題となるフォンタン術後患者、アイゼンメンガー症候群、先天性心疾患合併妊娠出産、成人先天性疾患患者にみられる血栓塞栓症などの調査を実施している。
 これまでに構築してきた「ACHDネットワーク患者登録システム」の登録をさらに進めるとともに、内容を充実させることで、成人先天性心疾患のデータベースの一部として様々な調査研究や臨床研究に運用できるように整備を進めた。具体的には、ファロー術後患者、フォンタン術後患者、アイゼンメンガー症候群、心疾患合併妊娠出産、未手術症例の予後調査などに、すでに一部使用されている。
 
結論
成人先天性心疾患患者のレジストリシステムが構築されれば、日本での成人患者の実態が把握でき、それにより全国各地域の医療情勢に適した診療体制および診療連携を構築することができる。その結果、小児専門施設でも循環器内科施設でも受け入れが困難で、不整脈や心不全、妊娠出産の際に病状が急変することのある成人先天性心疾患患者が、安心して通院や入院治療を受けることが可能になる。
最終的には、全国各地域、具体的には都道府県レベルでの診療連携、特に小児科と内科、地域病院と拠点施設の確間の連携の確立をめざす。

公開日・更新日

公開日
2018-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201711001C

収支報告書

文献番号
201711001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,825,000円
(2)補助金確定額
6,825,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,776,337円
人件費・謝金 0円
旅費 1,481,432円
その他 1,993,813円
間接経費 1,575,000円
合計 6,826,582円

備考

備考
自己資金 1,582円

公開日・更新日

公開日
2019-03-18
更新日
-