女性の健康の社会経済学的影響に関する研究

文献情報

文献番号
201710002A
報告書区分
総括
研究課題名
女性の健康の社会経済学的影響に関する研究
課題番号
H29-女性-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 穣(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 知行(東京大学 医学部附属病院)
  • 平池 修(和田 修)(東京大学 医学部附属病院)
  • 五十嵐 中(東京大学 薬学部)
  • 杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康学部)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
20から50代の働き盛りの年齢においても月経困難症、不妊症、子宮内膜症、骨粗鬆症などライフステージごとに出現する特異的疾患が多く、ホルモン変動を意識した特別な管理が必要である。現在、ホルモン変動や女性に多い疾患に注目した女性の健康を支援するための施策は十分になされていない。女性の活躍を推進する施策が必要であり、その裏付けとして特定の疾患をベースにして解析し検討することで、女性の健康を維持増進することがもたらす社会経済的な効果を評価することが必要である。月経不順と月経随伴症候群のQOLへの直接的な影響はまだわかっていないため、働く女性に対するアンケート調査結果に対してQOL調査を行い、月経不順のものが順調なものに対して、どの症状がQOL低下に影響を及ぼしているかについて、定量的な分析を行うこととした。女性活躍を推進する政策や制度が整い、女性が社会で求められる責任が増す一方、家庭内でも依然重い責任を負い、女性における過重(労働)負担の可能性が指摘されている。北欧では、家事ストレスや夫婦間での不平等感が強い女性は健康関連QOLも低い先行研究が既にあるものの、日本では家庭内労働の健康影響を評価した研究はない。
研究方法
子宮内膜症・子宮腺筋症患者については患者の属性を尋ねる調査票と電子カルテ上にある病気の重症度・治療の通院頻度、レセプト上にある支出などと照らし合わせ疾患と経済的損失、QOL状態との相関関係を検討し、関節リウマチ患者については患者の属性や病気による支出などを尋ねる調査票と照らし合わせることで疾患と経済的損失、QOL状態との相関関係を検討する。働く女性と健康に関するアンケート調査は、複数の企業に勤務する女性を対象として行った。本研究では25歳から59歳までの有配偶女性3000名を対象に、家事(家庭)労働ストレス、ワークファミリーコンフリクト、夫や家族の支援の程度を測定し、健康関連指標との関連を調査した。
結果と考察
子宮内膜症・子宮腺筋症女性および関節リウマチ女性に対するアンケートは現在おこなっているところである。効用値に換算可能なインデックス型QOL調査票のうち、経済評価でも使用頻度が高いEQ-5D-3Lを、月経不順の有無、月経随伴症状の詳細とともに調査した。分析は、ホルモン剤の服用がない6682名のうち、EQ5D-3Lから効用値を計算できた6048名を対象とした。効用値については月経が順調なものは平均0.689 (n=4490)、不順なものは平均0.661であり、月経不順なものの効用値が有意に低かった。
仕事をしていない有配偶女性(1000名)のうち210名(21%)、仕事をしている有配偶女性(2000名)のうち379名(19%)が K6≧9点(うつ病や不安障害の可能性が高い)であった。年齢、子供の有無、介護の有無、学歴、世帯年収について多重ロジスティック回帰分析で調整すると、仕事のない女性におけるK6≧9点に対するオッズ比は、家事の量的負担1.41(95%信頼区間:1.26-1.59)、家事のコントロール0.76 (95%信頼区間:0.67-0.86)と家事負担とうつ傾向の関連が認められた。仕事のある女性では、家事負担そのものとK6≧9点との有意な関連はなかったものの、仕事の量的負担のオッズ比1.14(95%信頼区間:1.05-1.23)、同僚の支援のオッズ比0.88(95%信頼区間:0.80-0.95)、Work to Family conflictのオッズ比1.07(95%信頼区間:1.04-1.10)、Family to Work conflict のオッズ比1.07(95%信頼区間:1.04-1.10)と、仕事の負担に加え、両立の負担との関連が見られた。
結論
今年度は、月経不順と月経随伴症状のQOLに対する影響の定量的な分析を行った。この結果は、月経不順と月経随伴症状に対する治療の経済評価の基礎資料となる。今後は、生産性損失のデータと合わせて、それぞれの症状が生産性損失に与える影響を調査する。可能であれば、治療効果のデータを用いて月経不順と月経随伴症状に関する介入の経済評価を行う。また、月経不順と月経随伴症候群以外の疾病に関しても、日本でのQOL評価の現状を調査する。

公開日・更新日

公開日
2018-08-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201710002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,999,000円
(2)補助金確定額
9,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,445,685円
人件費・謝金 172,503円
旅費 2,084,674円
その他 1,989,507円
間接経費 2,307,000円
合計 9,999,369円

備考

備考
超過分は自己資金にて補填

公開日・更新日

公開日
2018-10-30
更新日
-