唾液検査・質問紙調査・口腔内カメラから成る、新たな歯科のスクリーニング手法と歯科保健サービスの開発、及び歯科保健行動に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
201709027A
報告書区分
総括
研究課題名
唾液検査・質問紙調査・口腔内カメラから成る、新たな歯科のスクリーニング手法と歯科保健サービスの開発、及び歯科保健行動に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H29-循環器等-一般-014
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
中路 重之(国立大学法人弘前大学 大学院医学研究科社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 恒(国立大学法人弘前大学 大学院医学研究科歯科口腔外科学講座)
  • 倉内 静香(国立大学法人弘前大学 大学院医学研究科社会医学講座 )
  • 相馬 優樹(国立大学法人弘前大学 大学院医学研究科社会医学講座 )
  • 翠川 辰行(ライオン株式会社 研究開発本部薬品研究所)
  • 内山 千代子(ライオン株式会社 研究開発本部口腔健康科学研究所)
  • 森田 十誉子(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所 研究部研究開発室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,595,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科疾患の早期発見、早期治療には、集団健診をはじめとした定期的な歯科検診が効果的である。現在、学校や自治体等で実施される集団歯科検診では、一般的に歯科医師による口腔内検査が行なわれているが、検査に係る時間や費用、歯科医師の確保等が課題とされている。
そこで本研究では、唾液検査、質問紙調査、小型カメラを組み合わせた口腔内検査システムの効果を明らかにし、多様な口腔状態に適応できる簡便で安価な歯科スクリーニング手法を開発し、その精度について実際の健診に使用することで評価する。なお、近年では歯科疾患と糖尿病等の生活習慣病との関連や、ロコモや認知症など高齢者の機能低下との関連が示唆されており、口腔の健康づくりは全身の健康づくりにも極めて重要であると考えられており、本研究では開発した手法による全身の健康状態のスクリーニングの可能性についても同時に検証する。
研究方法
本研究では、上述の研究目的を達成するために、(1)口腔内検査システムの構築と妥当性の検討、(2)新規歯科疾患スクリーニング手法の仮設定、(3)集団健診での実地検証による開発手法の精度評価、(4)口腔内検査システムの歯の健康づくりに与える影響の有効性評価、(5)口腔内検査システムと全身性の健康に関わる因子の相関解析、の5つの研究テーマを設定し研究を進めている。2017年度は主に唾液検査、質問紙調査、小型カメラを組み合わせた口腔内検査システムの構築と妥当性の検討について研究を進めた。
研究代表者は、2005年より弘前市岩木地区(旧岩木町)の地域住民を対象とした大規模な住民健診(岩木健康増進プロジェクト)を毎年実施している。本健診には20代から90代までの健常な成人約1,000名が参加し、歯科医師による歯科疾患の有無や病態のレベルの視診による診察も行っており、2017年度の健診において多項目唾液検査システムによる口腔状態の測定と質問紙調査も実施し、その相関について解析を行った。
また、青森県の地元企業の従業員を対象として、多項目唾液検査システム、質問紙調査、口腔内カメラによる測定を行い、新たな歯科疾患のスクリーニング手法の開発と、当手法が歯の健康づくりに与える影響について、半年間の実証結果を踏まえて検討した。
結果と考察
まず、2017年度岩木健康増進プロジェクトにおいて、歯科医師による歯科検診結果(う蝕歯数、歯周病の程度)と唾液検査項目(むし歯菌数、唾液酸性度、唾液緩衝能、白血球数、タンパク質濃度、アンモニア濃度)との関連について解析を行ったところ、男性ではう蝕歯数が唾液酸性度、タンパク質濃度、アンモニア濃度と有意な相関(p<0.05)がみられ、女性では白血球数とタンパク質濃度に有意な相関がみられた。また、歯周病の程度については、男女ともに白血球数、タンパク質濃度と有意な相関がみられた。
次に、平成29年2月から9月にかけて、青森県内の地元企業の就労者を対象として実施した健診プログラムにおいて、多項目唾液検査システムを使用した唾液検査、質問紙調査、小型カメラを組み合わせた口腔内検査を実施した。本検査は健診開始後2時間以内に各受診者に対して結果出力までできることを確認した。当プログラムの実施において、同時に歯科医師による診察も実施しており、2月と9月で歯科検診結果について比較したところ、歯周ポケットの深さ、歯茎からの出血の有無、および歯石の有無において有意な改善が見られた。また、唾液検査の結果を比較したところ、虫歯菌数が有意に減少、唾液緩衝能が有意に低下、白血球数およびタンパク質濃度が有意に減少、アンモニア濃度も有意に減少していた。
同プログラムにおいては、歯科検診や唾液検査と同時に、口腔保健行動への影響に関して分析を行うためのアンケートを実施した。2月と9月の健診を共に受診した65名のうち、17%が新たに歯科医院を受診した。また、歯磨き方法を改善した者は65%に及び、その大半が行動を継続していた。さらに、新たに歯科医院を受診した者としなかったものとの間で歯科検診結果を比較したところ、う蝕歯数が減少傾向、歯茎変色の改善が見られた。
結論
本研究により、構築した口腔内検査システムの有用性が示唆された。今後、口腔内検査システムにより得られたデータと歯科検診結果との関連を詳細に解析することにより、安価で簡便な歯科のスクリーニング手法を開発し、小中学校を始めとする様々な健診に広く活用・普及していく。

公開日・更新日

公開日
2018-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201709027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,673,000円
(2)補助金確定額
4,673,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,488,080円
人件費・謝金 0円
旅費 106,920円
その他 0円
間接経費 1,078,000円
合計 4,673,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-10-31
更新日
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