市民によるAEDのさらなる使用促進とAED関連情報の取扱いについての研究

文献情報

文献番号
201709022A
報告書区分
総括
研究課題名
市民によるAEDのさらなる使用促進とAED関連情報の取扱いについての研究
課題番号
H29-循環器等-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 哲也(帝京大学 医学部救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 丸川征四郎(医誠会病院)
  • 畑中 哲生(救急振興財団救急救命九州研修所)
  • 石見 拓(京都大学環境安全保健機構健康管理部門)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野)
  • 田邉 晴山(救急振興財団救急救命東京研修所)
  • 森村 尚登(東京大学医学部附属病院)
  • 中原 慎二(帝京大学医学部)
  • 太田 邦雄(金沢大学医薬保健研究域医学系小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,846,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年の市民によるAED使用の認可以降、市中で利用可能なAED(PAD)設置が広がりをみせているが、その有効活用や管理に関しての検証は十分に行われておらず、MC体制下での検証の状況も明らかではない。救急蘇生統計によると、一般市民により心肺停止の時点が目撃されていてもAEDの使用に至らなかった事例が多く存在しており、市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子を明らかにした上で、適正配置や救命講習の内容の改善、MC体制下での適切な検証によりAEDの有効活用が推進されると考えられる。そこで本研究では、基礎データとしてのAEDの普及状況に係わる調査、公共場所で市民によるAED使用事例に関する調査、市民によるAEDの積極的な活用を阻害する因子に関する意識調査の検討、通信指令員が心停止を疑った際に事前に登録された心停止現場付近にいる救命ボランティアに対しての心停止発生通知システムの実地調査における検討、AEDの内部記録情報を含めた市民によるAED使用事例の事後検証体制構築に関する検討、児童生徒の院外心停止の調査を実施した。
研究方法
AEDの普及状況に係わる調査では、製造販売業者の協力のもとで当年度のAED販売台数(PAD・医療機関・消防機関別)、把握されている廃棄台数の取りまとめを継続し、合わせて耐用年数についての調査も行った。公共場所での市民によるAEDの使用事例に関する調査では、対象地域(神戸市、大阪市および名古屋市)の消防機関より、2016-2017年の対象期間に各消防機関が対応した、公共場所(住宅や老人ホームなどの居住施設は含めない)で発生した心停止傷病者について、現場でのAED有無/電極パッド装着/ショック適応/ショックボタン押下の有無について調査を行い、傷病者背景や発生時間、発生場所等との解析を行った。市民によるAEDの活用を阻害する因子についての意識調査にあたり、先行研究では調査対象がCPRやAEDを実施した人に限られ、救命行動を起こせなかった人が含まれていなかった。人が倒れた現場に居合わせながら救命行動を起こせなかった人も対象に加える意識調査を行うべく、質問票の検討を行った。心停止発生通知システムの実地調査における検討では、モデル地域である尾張旭市での実運用を通じて検討を進めている。2018年4月以降の登録ボランティアの増員に際して、新規登録のため救命講習を受講する市民に対し、登録の際に障壁となる課題の抽出、救命処置と個人情報保護に関わる講習会の効果検証を行うため、講習会内容等について検討を進めた。AEDの内部記録情報を含めた市民によるAED使用事例の事後検証体制構築に関する検討では、まず消防庁によるアンケート調査などにより検証の現状を明らかにすることとした。児童生徒の院外心停止の調査では、小児循環器修練施設を対象に一次調査を行った。
結果と考察
AEDの普及状況に係わる調査では、平成29年12月現在わが国の累計販売台数はおよそ94万台となり、うちPADが83%(78.4万台)を占めた。各年ごとの新規販売台数をみると、PADのものはここ数年およそ8万6~7千台で横ばいであったが、再度増加に転じおよそ9万6千台で過去最高となった。なお本調査は販売台数の調査であり、設置台数とは異なる。設置台数の把握には、販売台数や廃棄台数、耐用期間を勘案しての推定が必要となる。AEDは薬事法に規定する高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器でもあり、わが国全体でより正確な設置台数の把握ができる体制構築が望まれる。公共場所での市民によるAEDの使用事例に関する調査では、対象となった心停止は558例、市民によりAEDが持参されたのは92例(16.5%)であり、うちパッド貼付は89例(96.7%)、そのうちショック適応は35例(39.3%)、うち34例(97.1%)で実際に電気ショックが実施された。AEDの内部記録情報を含めた市民によるAED使用事例の事後検証体制構築に関する検討では、消防庁によるアンケート調査(平成26年度)より、全国の消防本部の38.9%(292本部)で市民によるAED使用事例の効果の検証が行われていなかった。この際の効果の検証には、AEDによる救命効果の検証と、適正使用の検証があるが、どの検証が、どの程度実施されているかは不明である。また検証の実施には多くの情報が必要となるが、特に医療機関での診療に関する情報と、AEDの内部記録情報についてはその入手に障壁がある。
結論
以上の研究をさらに推し進め、市民によるAED使用事例の集積、AED使用を阻害する因子の把握や心停止発生の早期の通知システム、児童生徒の心停止の発生状況の把握からAED適正配置の検討、内部記録情報を含めた事後検証体制の構築と合わせて、AEDの有効活用が推進されると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201709022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,999,000円
(2)補助金確定額
4,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 114,178円
人件費・謝金 1,994,946円
旅費 857,164円
その他 879,712円
間接経費 1,153,000円
合計 4,999,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
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