健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究

文献情報

文献番号
201709010A
報告書区分
総括
研究課題名
健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-008
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院)
  • 村上 義孝(東邦大学 医学部)
  • 近藤 尚己(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 田淵 貴大(大阪国際がんセンター がん対策センター)
  • 相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1に、健康寿命(日常生活に制限のない期間の平均)の全国値と都道府県値の推移を分析して、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」と「健康寿命の都道府県格差の縮小」という健康日本21(第二次)の目標の達成状況を明らかにする。第2に、コホート研究により生活習慣等と健康寿命との関連を分析し、どの生活習慣をどの程度改善させることで健康寿命は何年延びるかを明らかにする。第3に、生活習慣や社会経済状況が生活習慣病の地域格差にどのような影響を及ぼしているかを明らかにする。第4に、効果的な生活習慣改善につながる健康増進対策の優良事例を全国から収集し、その効果と実施方法を明らかにする。
研究方法
厚生労働省「国民生活基礎調査」データを分析して、日常生活に制限のない期間の平均(健康寿命)について全国値と各都道府県値を算定し、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」及び「健康寿命の都道府県格差の縮小」という健康日本21(第二次)の目標の達成状況を検討した。コホート研究データを用いて、健診成績(喫煙・血圧・BMI)が健康寿命(介護保険非該当での平均生存期間)に及ぼす影響を検討した。行政データを用いて3歳児う蝕有病率の市町村格差やメタボリックシンドローム該当率などの都道府県格差の推移を検討した。保健事業の企画立案について289市町村と47都道府県を対象にアンケート調査を行った。すべての研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し、所属施設の倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
健康寿命の全国推移と都道府県格差の算定・評価に関する研究:平成22年から同28年までの間で、平均寿命は男性1.43年(79.55年→80.98年)・女性0.84年(86.30年→87.14年)の増加であったのに対して、健康寿命は男性1.72年(70.42年→72.14年)・女性1.17年(73.62年→74.79年)の増加であり、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」という目標は男女とも達成中と判定された。47都道府県の間の健康寿命のバラツキの大きさを示す指標である地域格差指標は、平成22、25、28年それぞれ、男性は0.58、0.47、0.37年(片側トレンドp=0.001)、女性では各0.65、0.61、0.53年(同p=0.041)で、いずれも有意な縮小が見られた。すなわち「健康寿命の都道府県格差の縮小」という目標は、男女とも達成中と判定された。
健康寿命の延伸可能性に関する研究:肥満・血圧レベルによらず、喫煙群の健康寿命(介護保険非該当での生存期間)は非喫煙群に比べて短かった。BMI 25~27の者と比較して、健康寿命(介護保険非該当での生存期間)はBMI 19未満では1.6年短く、BMI 19~21で1.2年短く、BMI21~23で0.6年短く、BMI 29以上では1.3年短かった。これらの差は統計学的に有意であった。
生活習慣病の地域格差の要因に関する研究:茨城県内の3歳児う蝕有病者率の市町村間格差は減少傾向であることが分かった。都道府県格差では、75歳未満のがん年齢調整死亡率の格差は増加傾向、メタボリックシンドローム該当者割合の格差は横ばい、自殺死亡率の格差は減少傾向であった。
効果的な生活習慣改善につながる優良事例に関する研究:市町村のポピュレーションアプローチは啓発型や教室型が中心であった。他機関との連携、事業評価、評価の活用方法に課題があった。多くの都道府県が健康格差縮小に着目した健康日本21計画を策定し、特定健診データ等から格差を把握しているが、格差の視点において経済状況、生活環境等が考慮されていなかった。優良市町村では、予算確保の工夫、市の実態に沿った事業計画、幅広い機関との連携、他事業への横展開が図られていた。
結論
「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」という健康日本21(第二次)の目標は、男女とも達成中と判定された。「健康寿命の都道府県格差の縮小」という健康日本21(第二次)の目標も、男女とも達成中と判定された。肥満・高血圧レベルによらず、喫煙群の健康寿命は非喫煙群より短かった。BMI25~27に比べて、BMI23未満・同29以上の者で健康寿命が有意に短かった。都道府県格差の最近の動向は、75歳未満のがん年齢調整死亡率で増加傾向、メタボリックシンドローム該当者割合で横ばい、自殺死亡率で減少傾向であった。保健事業の優良事例では、実態に沿った事業計画、幅広い機関との連携、他事業への横展開に工夫されていることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
2019-01-30

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201709010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,500,000円
(2)補助金確定額
19,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,799,657円
人件費・謝金 6,702,240円
旅費 1,088,120円
その他 2,409,986円
間接経費 4,500,000円
合計 19,500,003円

備考

備考
分担研究者・横山徹爾(国立保健医療科学院)の自己負担金 3円

公開日・更新日

公開日
2018-11-02
更新日
-