文献情報
文献番号
201709007A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病性網膜症・下肢壊疽等の総合的な重症度評価の作成と合併症管理手法に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
羽田 勝計(旭川医科大学 内科学講座 病態代謝内科学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、日本糖尿病学会(前常務理事 申請者、植木浩二郎)を中心に日本糖尿病合併症学会(理事長:申請者)、日本糖尿病眼学会(理事長 小椋祐一郎)などの学会が多面的に協力して、1)糖尿病網膜症と下肢病変に対する実態調査 2)糖尿病網膜症の重症化および下肢病変の多施設前向き大規模コホート研究 3)糖尿病下肢病変(壊疽、潰瘍)の発症や重症化を促進する因子の解析 4)下肢血流障害の早期発見検査法の開発と網膜血流障害と関連性の検討を実行する。そのうえで、これらの検討から我が国発のエビデンスに基づき各学会が協力して、標準化した治療のガイドラインの作成に寄与する。
研究方法
(1)糖尿病網膜症と下肢病変に対する実態調査
(2)糖尿病網膜症の重症化および足病変の多施設前向き大規模コホート研究
(3)糖尿病壊疽の発生や重症化を促進する因子の解析
(4)下肢血流障害の早期発見検査法の開発と、眼(網膜)血流障害と関連性の検討
(2)糖尿病網膜症の重症化および足病変の多施設前向き大規模コホート研究
(3)糖尿病壊疽の発生や重症化を促進する因子の解析
(4)下肢血流障害の早期発見検査法の開発と、眼(網膜)血流障害と関連性の検討
結果と考察
研究の実施経過:
(1)糖尿病網膜症と下肢病変に対する実態調査:概ね良好
実態調査として糖尿病専門施設、糖尿病網膜症専門施設、下肢血行再建施設にアンケート調査を行いその解析を行った。糖尿病専門医教育施設向けのアンケートでは約40%の回答率であったが、現在再調査の依頼をしており、約60%以上の回答率を達成予定である。今回の調査で、糖尿病専門施設でも、硝子体手術は59.6%、フットケアー外来は81.7%、透析予防指導は68.8%の施設に限定されており、網膜症や足病変の予防や早期発見に関して、糖尿病専門施設ですら診療体制が十分整っていない現状が明らかになった。
29年度より健保ビックデータを用いた解析を開始し検討を行った。問題点としては、脱落例(健保からの)や集団の偏り、症例の抽出法(保険病名、処置コードからの)である。30年度は、以上の問題点を補完し、可能なら国保データも解析し検討する。
(2)糖尿病網膜症の重症化および足病変の多施設前向き大規模コホート研究:概ね良好
ベースラインのコホートデータの入力は入力後ほぼ終了してコホート全体の臨床像が明らかになった。29年度より随時、既存コホートのヒストリカルコホートのデータ入力を開始している。30年度にはヒストリカルコホートのデータ入力を終了しデータを解析する。
(3)糖尿病壊疽の発生や重症化を促進する因子の解析:やや遅延
後ろ向き解析については、症例を抽出して解析が完了した。今後、前向き解析についてもプロトコールを作成し、データ収集中。
(4)下肢血流障害の早期発見検査法の開発と、眼(網膜)血流障害と関連性の検討:概ね良好
症例数の積み上げを目指して、一部プロトコール(対象症例のクライテリア)を変更した。また眼血流(網膜血流)測定に対し、OCTアンジオグラフィーを用いることで測定が簡便になり症例数を以前より増やすことが容易になった。今回抗VGEF薬は血中のVEGF濃度を低下させるが、下肢血流は低下させなかった。糖尿病の下肢病変ではVEGFが下肢血流を改善することが知られているが、抗VGEF薬が下肢病変の悪化をきたさない可能性が示唆されたことは、臨床的に意義が深い。
(1)糖尿病網膜症と下肢病変に対する実態調査:概ね良好
実態調査として糖尿病専門施設、糖尿病網膜症専門施設、下肢血行再建施設にアンケート調査を行いその解析を行った。糖尿病専門医教育施設向けのアンケートでは約40%の回答率であったが、現在再調査の依頼をしており、約60%以上の回答率を達成予定である。今回の調査で、糖尿病専門施設でも、硝子体手術は59.6%、フットケアー外来は81.7%、透析予防指導は68.8%の施設に限定されており、網膜症や足病変の予防や早期発見に関して、糖尿病専門施設ですら診療体制が十分整っていない現状が明らかになった。
29年度より健保ビックデータを用いた解析を開始し検討を行った。問題点としては、脱落例(健保からの)や集団の偏り、症例の抽出法(保険病名、処置コードからの)である。30年度は、以上の問題点を補完し、可能なら国保データも解析し検討する。
(2)糖尿病網膜症の重症化および足病変の多施設前向き大規模コホート研究:概ね良好
ベースラインのコホートデータの入力は入力後ほぼ終了してコホート全体の臨床像が明らかになった。29年度より随時、既存コホートのヒストリカルコホートのデータ入力を開始している。30年度にはヒストリカルコホートのデータ入力を終了しデータを解析する。
(3)糖尿病壊疽の発生や重症化を促進する因子の解析:やや遅延
後ろ向き解析については、症例を抽出して解析が完了した。今後、前向き解析についてもプロトコールを作成し、データ収集中。
(4)下肢血流障害の早期発見検査法の開発と、眼(網膜)血流障害と関連性の検討:概ね良好
症例数の積み上げを目指して、一部プロトコール(対象症例のクライテリア)を変更した。また眼血流(網膜血流)測定に対し、OCTアンジオグラフィーを用いることで測定が簡便になり症例数を以前より増やすことが容易になった。今回抗VGEF薬は血中のVEGF濃度を低下させるが、下肢血流は低下させなかった。糖尿病の下肢病変ではVEGFが下肢血流を改善することが知られているが、抗VGEF薬が下肢病変の悪化をきたさない可能性が示唆されたことは、臨床的に意義が深い。
結論
糖尿病の合併症は多岐にわたり、それに関わる専門家は、内科、眼科、血管外科、形成外科など多分野に分散しているため、総合的に合併症を克服するためには集学的な研究が必要になる。本研究では、日本糖尿病学会を中心に、日本糖尿病合併症学会、日本糖尿病眼学会が多面的に協力することで、重症合併症の現状と克服への課題を導き出せることが期待される。
また、糖尿病網膜症の重症化および足病変に対する多施設前向き大規模コホート研究は我が国では初であり、その因子を解析することで、糖尿病治療に対する社会的な啓蒙活動に結びつくと考えられる。さらに得られた結果に基づき、治療介入することで、重症合併症発症・進展を抑制し、社会・医療資源を他の疾患への対策など有効に活用出来る可能性がある。
さらに、糖尿病下肢病変(壊疽、潰瘍)の発生や重症化を促進する因子の解析することで、重症合併症進展抑制における医療体制(病診連携、病病連携、診療科間連携)を構築する。加えて、評価、治療、医療連携のアルゴリズムを提案することができる。
また、糖尿病網膜症の重症化および足病変に対する多施設前向き大規模コホート研究は我が国では初であり、その因子を解析することで、糖尿病治療に対する社会的な啓蒙活動に結びつくと考えられる。さらに得られた結果に基づき、治療介入することで、重症合併症発症・進展を抑制し、社会・医療資源を他の疾患への対策など有効に活用出来る可能性がある。
さらに、糖尿病下肢病変(壊疽、潰瘍)の発生や重症化を促進する因子の解析することで、重症合併症進展抑制における医療体制(病診連携、病病連携、診療科間連携)を構築する。加えて、評価、治療、医療連携のアルゴリズムを提案することができる。
公開日・更新日
公開日
2018-07-05
更新日
-