成人眼科検診の有用性、実施可能性に関する研究

文献情報

文献番号
201709006A
報告書区分
総括
研究課題名
成人眼科検診の有用性、実施可能性に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
山田 昌和(杏林大学 医学部 眼科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 平塚 義宗(順天堂大学 医学部眼科学講座)
  • 川崎 良(大阪大学 医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学)視覚情報制御学寄附講座)
  • 田村 寛(京都大学 国際高等教育院附属データ科学イノベーション教育研究センター)
  • 中野 匡(東京慈恵会医科大学 眼科学講座)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 高野 繁(公益社団法人日本眼科医会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,600,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者:川崎 良   山形大学医学部公衆衛生学講座(平成29年4月1日-平成29年9月30日)→  大阪大学医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)視覚情報制御学寄附講座(平成29年10月1日-平成30年3月31日) 研究分担者:田村 寛  京都大学医学研究科・医療情報企画部(平成29年4月1日-平成29年9月30日)→  京都大学国際高等教育院附属データ科学イノベーション教育研究センター(平成29年10月1日-平成30年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
 視覚障害の原因疾患として、緑内障、糖尿病網膜症、変性近視、黄斑変性、白内障が主要なものであり、この5つの疾患で視覚障害の75%を占めている。これらは加齢・変性疾患であり、特に緑内障は40歳以上の有病率が5%と高く、初期には自覚症状に乏しく徐々に不可逆的に進行する。従って、緑内障を中心とした成人眼疾患を早期に発見するための眼科検診プログラムが重要と考えられる。
 現状では成人眼科検診の制度を持つ自治体はごく少数であり、検診の形式も様々である。また、現行の自治体での眼科検診では検診結果の把握にとどまっており、精密検査結果の把握、事後評価が課題となっている。どのような検診のスキームが精度、医学的効果、費用対効果に優れているか比較検討することが必要である。
研究方法
 本研究は2つのステップで構成される。最初のステップは、眼科検診で発見される緑内障など慢性眼疾患の有病割合とその重症度を調査する疫学研究であり、次のステップは眼科検診の精度評価のための研究であり、最初のステップで得られた臨床データを用いる。
 1番目のステップ:眼科医療機関(クリニック)を特定健診を契機に検診目的で受診した対象者に包括的眼科検査を行う。緑内障を中心とした視覚障害の原因となる慢性眼疾患の有病割合とその重症度を検討する。
 2番目のステップ:1番目のステップによって包括的眼科検査の結果が揃った多数例のデータセットが用意される。このデータセットには静的視野検査も含まれており、緑内障の有無を含めて正常か否かの確定診断のついたデータとなる。各々のデータを複数の眼科専門医に提示して、正常と要精密検査の判定を行ってもらう。データの提示は、眼底写真だけ、眼底写真に光干渉断層計(OCT)を加えた場合、包括的眼科検診として視力、屈折、細隙灯顕微鏡検査、眼圧、眼底検査のデータを提示した場合、の3つのパターンとする。各々の判定結果から、眼底写真撮影と眼底写真+OCT、包括的眼科検診の3つの検診スキームの精度評価を行う。
結果と考察
 本年度は包括的眼科検査による眼科検査データの収集を行った。島根県松江市、宮城県仙台市、東京都世田谷区の3地域の合計16の施設(眼科クリニック)を研究参加施設とし、特定健診の施行時期に合わせて平成29年6月から12月まで実際の症例登録を行った。対象には研究参加に先立って、説明文書を用いて本研究の目的、内容、意義、参加の利益、不利益を説明し、文書で同意を得た。
 症例登録は順調に進み、最終的に1,478例と当初の目標以上の症例登録を得ることができた。データ固定を行った1,365例のうち、緑内障ありが11.4%と高い有病率を示し、40歳代で8.8%、50歳代で10.3%、60歳代で10.3%、70歳代で13.3%であった。病型は正常眼圧緑内障が71.1%を占め、閉塞隅角緑内障は3.4%と少数であった。今後、眼科検診で発見された緑内障以外の慢性眼疾患の有病率とその重症度、危険因子などについても詳細に検討していく予定である。
登録された症例のデータベースと電子画像を統合し、段階的に画像を提示するシステムを開発した。スクリーニング方式として3つの異なる方式で、段階的に情報を提示できるようにした。来年度にはこれらの臨床情報と画像を組み合わせた提示・閲覧システムを用いて研究を進める。すなわち、眼科専門医、非専門医の再判定を行い、各々の検診スキームの感度と特異度を計算し、ROC曲線による精度分析を行う予定である。
結論
 眼科検診で発見される緑内障など慢性眼疾患の有病割合とその重症度を調査する疫学研究を実施した。特定健診を契機に眼底検査目的で眼科医療機関を受診した者を対象とした包括的眼科検診であり、症例登録は島根県松江市、宮城県仙台市、東京都世田谷区の3地域の合計16の眼科医療施設で実施され、1,478例の症例が登録された。データ固定が終了した1,365例では緑内障ありが11.4%と従来の本邦の疫学研究よりも高い有病率が示された。
 本研究で得られた臨床データセットを用いて、来年度に成人眼科検診の精度と実施可能性を検討して行く予定である。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201709006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,880,000円
(2)補助金確定額
9,880,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 586,063円
人件費・謝金 4,033,677円
旅費 755,380円
その他 2,229,909円
間接経費 2,280,000円
合計 9,885,029円

備考

備考
収入と支出に差異があるのは自己負担しているため

公開日・更新日

公開日
2019-03-19
更新日
-