健康診査・保健指導の有効性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201709005A
報告書区分
総括
研究課題名
健康診査・保健指導の有効性評価に関する研究
課題番号
H28-循環器等-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 磯 博康(大阪大学医学系研究科)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座)
  • 津下 一代(公益財団法人愛知県健康づくり振興事業団あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学医学部)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター予防健診部)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
  • 小池 創一(自治医科大学地域医療学センター)
  • 古井 祐司(東京大学政策ビジョン研究センター)
  • 立石 清一郎(産業医科大学保健センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では予測される将来の健康リスクを把握し早期予防につながる施策とするために、健診や関連した事後指導等の評価方法を検討する。なお評価方法は保健事業における実行性を鑑みて設計するものとし、長期的、多角的な視点から有効性を検証する。
研究方法
(1)研究体制の整備
研究フィールドとなる保険者や自治体、関連学会・研究班等との必要な連携を図る。研究分担者等それぞれが数千から十万人規模のフィールドを構築しており、子どもから大人、高齢者を意識した研究フィールドの確保、ステークホルダとの連携を進めている。本研究班では「健診のあり方の検討」「施策実行性の検討」の課題に応じて2つの分科会を設けている。
(2)健診のあり方の検討
予測される発症リスクをスクリーニングしリスク軽減を図る早期の予防介入につながる評価指標および評価方法を検討する。
(3)施策実行性の検討
生涯を通じた健康づくりを推進する視点から、働き盛り世代から退職高齢者に移行する過程での課題が明確でない現状を鑑み、定年等による新規国保加入者や国保連が行う保険者支援の実態を明らかにする目的で自計式質問紙調査を実施した。また予防教育の早期開始と家族単位での生活習慣の改善を促すために、学習指導要領に準拠しデータヘルスに基づく予防啓発プログラムを作成し、モデル小学校で模擬授業を実施した。
結果と考察
(1)健診のあり方の検討;成人を対象とした循環器疾患や糖尿病予防を対象とした健診制度検証し、現状の制度で期待される効果、今後充実させるべき方向性、事業実施のあり方についての知見が示された。1)ライフコース・ヘルスケアの視点から妊婦健診、乳幼児健診、学校健診を検討した結果、アウトカムである健康事象、経年的に追跡する項目、年齢ステージごとに重要な項目を各健診の標準化やデータの保管の状況も加味して検討する必要性が示唆された。一方、健診の標準化やデータの保管、各種健診との突合の課題については、次世代医療基盤法等の動向もみながら検討する必要がある。2)思い出し法による20歳時体重を用いた分析では、中高年期の健康状態との関連が示され簡便かつ有用性が高いことが提示された。また体重変化の聞き取りは保健指導に活用できること、40歳未満者への健康対策として「体重を増加させない」ことの重要性が示唆された。3)60歳前後での退職者の退職後の死亡状況を調査したところ、退職後の早期死亡を予防する上で、適正な体重コントロール、禁煙指導、代謝異常の管理を中心に、職域から地域への移行を通じた継続指導が重要であることが示された。4)ナショナルデータベースを用いて2008年での特定健診の受診者を対象に特定健診・保健指導の効果を分析した結果、メタボリック・シンドローム、肥満、心血管リスクを長期的に軽減できる可能性が示された。5)肝機能の検査項目を用いて算出される脂肪肝の指標Fatty liver index (FLI)の特定健診における有効性について検証したところ、性別や耐糖能異常の有無に関わらず脂肪肝の指標であるFLIが5年後までの糖尿病発症と関連した。これよりFLIがより早期の段階での糖尿病発症の予測マーカーである可能性が示唆され今後特定健診においてその有用性が期待できると考えられた。6)嘱託産業医の業務内容および保健指導のカットオフ値を検討したところ、主業務は健康上のリスク管理であり保健指導の優先順位は低いこと、有所見値や保健指導実施値、作業関連疾患予防値についてはそれぞれ関連性が見られなかったが、作業関連疾患予防値のカットオフ値は概ね高めに設定されていた。
(2)施策実行性の検討;国保移行者に関する構造的な課題が抽出され、予防啓発プログラムについては、実施スキームの受容性と意識・行動変容に資する可能性が示唆された。1)保険者調査から国保移行者の健康状態や受療行動の特徴、国保移行前の保険者に求めたい取り組み、国保移行者への取り組み内容等の実態が明らかになるとともに、保険者を越えて生活習慣病の重症化予防に向けた取組を行うことの重要性を示唆する所見が得られた。2)学校教育に適用、試行した予防啓発プログラムに関しては、受容性のある実施スキームであること、児童の意識・行動変容に資するプログラム内容であることが示された。
結論
本研究では成人を対象に行われている循環器疾患や糖尿病予防を対象とした健診制度について検証し、現状の制度で期待される効果、今後充実させるべき方向性、事業実施のあり方についての知見が示された。また生涯を通じた予防・健康づくりを実現する上での「国保移行者」に関する構造的な課題が抽出され、予防教育の早期開始と家族単位での生活習慣の改善を促す目的で試行した予防啓発プログラムについては、実施スキームの受容性と意識・行動変容に資する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201709005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,500,000円
(2)補助金確定額
19,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,924,277円
人件費・謝金 5,674,121円
旅費 2,112,524円
その他 4,295,723円
間接経費 4,500,000円
合計 19,506,645円

備考

備考
補助金確定額と研究費支出の差額は、自己資金より支出した。

公開日・更新日

公開日
2018-10-12
更新日
-