生活習慣病やアレルギー疾患の新しい予防法確立に資する健康な日本人の腸管免疫と腸内細菌データベースの構築に関する疫学研究

文献情報

文献番号
201709002A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病やアレルギー疾患の新しい予防法確立に資する健康な日本人の腸管免疫と腸内細菌データベースの構築に関する疫学研究
課題番号
H27-循環器等-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宮地 元彦(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤純(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチンマテリアルプロジェクト )
  • 水口賢司(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト )
  • 窪田哲也(国立研究開発法人理化学研究所・代謝恒常性研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食事・栄養状況や身体活動・運動などの生活習慣と免疫疾患・生活習慣病との関係に関するコホート研究から得られたヒト試料を対象に、生活習慣病やアレルギー疾患の新しい予防法確立に資する健康な日本人の腸管免疫と腸内細菌データベースを構築し、生活習慣、腸内細菌叢、腸管免疫、疾患発症との相互関係を明らかにすることを目的とする。
研究方法
首都圏、山口県周南市、新潟県南魚沼市、大阪府に在住する20~80歳までの男女を743名を研究対象者とした。また、腸内細菌叢に関連する生活習慣調査・身体測定を実施した(宮地)。先端解析技術を用いて糞便の腸内細菌叢や免疫指標、血液サンプルの脂肪酸や胆汁酸を網羅的に分析する(國澤、窪田)。それらをデータベース化しバイオインフォマティクス手法を用いて解析する(水口)。
結果と考察
2018年2月末日現在743名の研究参加同意が得られた。そのうち722名の腸内細菌叢のシークエンスが終了し、646名分の免疫指標の測定が完了した。434名の血漿サンプルの脂肪酸、胆汁酸の分析が完了した(窪田)。データベースにこれらのデータを格納し、データ解析した(水口)。腸内細菌叢解析の結果、Firmicutes門、Bacteroidetes門が全体の約9割を占めていた。Enterotype解析の結果、クラスター分けにはBacteroides属、Prevotella属、Faecalibacterium属が主に影響していることが明らかとなり、それぞれのクラスターの割合は約4:1:5であった。細菌群集構造(Bray-Curtis指数)とメタデータとの関連をステップワイズ回帰で分析した結果、19項目が関連し、最も強い要因はコホートの違い(現居住地域)で、運動習慣、座位時間、睡眠時間などの生活習慣や、カリウム摂取量や色の薄い野菜の摂取量などの食事要因に加え、習慣的な排便頻度や採便当日の糞便の形状・色・量など、複数の排便・糞便状況が関連していた。19項目により細菌群集構造の個人差の7.3%が説明された。糞便中の短鎖脂肪酸の測定系を確立し237名について解析した。その結果アセテート、プロピオン酸、吉草酸は有意に男性で高く、乳酸は女性で上昇していた。
結論
4つの研究班により、生活習慣、腸内細菌叢、腸管免疫、疾患発症との相互関係を明らかにするための健康な日本人の腸管免疫と腸内細菌データベースが構築することができた。データベースから得られる知見を今後論文等で公表していく。

公開日・更新日

公開日
2018-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201709002B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣病やアレルギー疾患の新しい予防法確立に資する健康な日本人の腸管免疫と腸内細菌データベースの構築に関する疫学研究
課題番号
H27-循環器等-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
宮地 元彦(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 國澤 純(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチンマテリアルプロジェクト)
  • 水口 賢司(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト)
  • 窪田 哲也(国立研究開発法人理化学研究所 代謝恒常性研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食事・栄養状況や身体活動・運動などの生活習慣と免疫疾患・生活習慣病との関係に関するコホート研究から得られたヒト試料を対象に、生活習慣病やアレルギー疾患の新しい予防法確立に資する健康な日本人の腸管免疫と腸内細菌データベースを構築し、生活習慣、腸内細菌叢、腸管免疫、疾患発症との相互関係を明らかにすることを目的とする。
研究方法
首都圏、山口県周南市、新潟県南魚沼市、大阪府に在住する20~80歳までの男女743名を研究対象者とした。また、腸内細菌叢に関連する生活習慣調査・身体測定を実施した(宮地)。先端解析技術を用いて糞便の腸内細菌叢や免疫指標、血液サンプルの脂肪酸や胆汁酸を網羅的に分析した(國澤、窪田)。それらをデータベース化し、バイオインフォマティクス手法を用いて解析した(水口)。
結果と考察
2018年2月末日現在、首都圏、新潟県南魚沼市、山口県周南市、大阪府に在住する743名の研究参加同意が得られた(宮地)。そのうち722名の腸内細菌DNAのシークエンスが終了し、646名分の免疫指標の測定を完了した(國澤)。434名の血漿サンプルの脂肪酸、胆汁酸を分析、糞便中の短鎖脂肪酸の測定系を確立し237名について解析した(窪田)。データベースにデータを格納し、解析した(水口)。
腸内細菌叢解析の結果、Firmicutes門、Bacteroidetes門が全体の約9割を占めていた。Enterotype解析の結果、クラスター分けにはBacteroides属、Prevotella属、Faecalibacterium属が主に影響していることが明らかとなり、それぞれのクラスターの割合は約4:1:5であった。細菌群集構造(Bray-Curtis指数)とメタデータとの関連をステップワイズ回帰で分析した結果、19項目が関連し、最も強い要因は現居住地域の違いで、運動習慣、座位時間、睡眠時間などの生活習慣や、カリウム摂取量や色の薄い野菜の摂取量などの食事要因に加え、習慣的な排便頻度や採便当日の糞便の形状・色・量など、複数の排便・糞便状況が関連していた。19項目により細菌群集構造の個人差の7.3%が説明された(宮地、水口)。腸内細菌と免疫因子の相関を解析した結果、炎症性サイトカインであるMIP-1βやIL-4と負の相関を示す腸内細菌が同定された(國澤)。男性では、血漿中の善玉の脂肪酸であるn-3系が低く、n-6/n-3系の比率は男性の方が有意に高かった。n-6/n-3系の比率は年齢の増加とともに有意に低下した。糞便中の短鎖脂肪酸のうち、アセテート、プロピオン酸、吉草酸は有意に男性で高く、乳酸は女性で高値であった(窪田)。
結論
3年間の研究により、我が国の健康で自立した成人の腸内細菌叢データベースを生活習慣や生体情報を広範に含むメタデータとともに作成することができた。得られた成果の今後の活用・提供:データベースから得られる知見を今後論文等で公表していくとともに、共同研究契約などに基づき公開していく。

公開日・更新日

公開日
2018-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201709002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
令和3年3月末日までに、4,800名の腸内細菌叢の16SrRNA法によるシークエンスが終了し、メタデータと併せてウエアハウスMANTAへのデータ格納が完了している。このデータベースを分析することにより、生活習慣、腸内細菌叢、腸管免疫、疾患発症との相互関係を明らかにすることが可能となった。
臨床的観点からの成果
疫学研究や大規模臨床研究における多人数を対象として腸内細菌叢研究を実施するための簡便かつ妥当な採便、保存、分析方法、多面的に排便習慣を把握する観察ツール、腸内細菌叢とメタデータ格納・解析することが可能なウエアハウスMANTAを確立し、論文化するとともに、他の研究や臨床での利活用を可能とした。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
腸内細菌叢の構造に、排便状況、年齢、性別が関係することを日本人を対象に初めて論文化した。不整脈や糖尿病と関連する菌について論文化した。大腸がんの要因とされるコリバクチン産生菌の保有の有無に関連する食事、排便状況、代謝産物について論文化した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
商標登録「腸みえるシート」登録第6020435号(2018年2月16日登録)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hosomi K, Ohno H, Murakami H, et al.
Method for preparing DNA from feces in guanidine thiocyanate solution affects 16S rRNA-based profiling of human microbiota diversity.
Sci Rep , 7 (1) , 4339-  (2017)
10.1038/s41598-017-04511-0
原著論文2
Ohno H, Murakami H, Miyachi M, et al.
Validity of an observational assessment tool for multifaceted evaluation of faecal condition
Sci Rep , 9 (1) , 3760-  (2019)
10.1038/s41598-019-40178-5
原著論文3
Tabata T, Yamashita T, Hosomi K et al.
Gut microbial composition in patients with atrial fibrillation: effects of diet and drugs.
Heart Vessels , 36 (1) , 105-114  (2021)
10.1007/s00380-020-01669-y
原著論文4
Watanabe D, Murakami H, Ohno H et al.
Association between dietary intake and the prevalence of tumourigenic bacteria in the gut microbiota of middle-aged Japanese adults.
Sci Rep , 10 (1) , 15221-  (2020)
10.1038/s41598-020-72245-7
原著論文5
Chen YA, Park J, Natsume-Kitatani Y et al.
MANTA, an integrative database and analysis platform that relates microbiome and phenotypic data.
PLoS One , 15 (12) , e0243609-  (2020)
10.1371/journal.pone.0243609
原著論文6
Ohno H, Murakami H, Nakagata T et al.
Investigation of the reproducibility and validity of a questionnaire on usual bowel movement patterns and stool characteristics compared to an evacuation diary.
Nihon Koshu Eisei Zasshi , 68 (2) , 92-104  (2021)
10.11236/jph.20-037
原著論文7
Park J, Kato K, Murakami H et al.
Comprehensive analysis of gut microbiota of a healthy population and covariates affecting microbial variation in two large Japanese cohorts.
BMC Microbiology , 21 (1) , 151-  (2021)
10.1186/s12866-021-02215-
原著論文8
Watanabe D, Murakami H, Ohno H et al.
Stool pattern is associated with not only the prevalence of tumorigenic bacteria isolated from fecal matter but also plasma and fecal fatty acids in healthy Japanese adults.
BMC Microbiology , 21 (1) , 196-  (2021)
10.1186/s12866-021-02255-6

公開日・更新日

公開日
2023-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201709002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
29,846,000円
差引額 [(1)-(2)]
154,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,078,508円
人件費・謝金 14,945,605円
旅費 918,490円
その他 903,687円
間接経費 5,000,000円
合計 29,846,290円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と、支出の「合計」に差である290円は、自己資金から支出した。

公開日・更新日

公開日
2018-11-16
更新日
-