ATL/HTLV-1キャリア診療中核施設群の構築によるATLコホート研究

文献情報

文献番号
201708034A
報告書区分
総括
研究課題名
ATL/HTLV-1キャリア診療中核施設群の構築によるATLコホート研究
課題番号
H29-がん政策-指定-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(東京大学大学院 新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻病態医療科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 俊樹(聖マリアンナ医科大学大学院 先端医療開発学)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村総合病院 血液内科)
  • 高 起良(大阪鉄道病院 血液内科)
  • 岩永 正子(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 小林 誠一郎(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,846,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
indolent ATLは、現在の標準診療方針は無治療経過観察であるが、予後は良好ではなく、新たな治療薬剤の開発と治療方針の検討が強く求められている。そのためには専門家のネットワークにより登録されたindolent ATLのコホートを構築し、病態解析、治療方針とその予後についての質の高い情報を収集していくことが不可欠である。そこで本研究ではHTLV-1感染者コホート研究であるJSPFADに登録された症例をベースにindolent ATLのデータベースを構築して前向きに運用を進め、臨床情報の収集、および病態解明のためのサンプルの収集を行い、indolent ATL研究のプラットホームを構築する。またindolent ATLと無症候性キャリアの境界の検討からハイリスクキャリアの概念の確立を目指す。データベース構築と併行してHTLV-1関連疾患診療の拠点化を目指す。
研究方法
JSPFADデータ登録ウェブサイトと連結されたindolent ATL データ登録用のウェブサイトを業務委託企業と協議しながら構築を進めた。事務局を設置し、すでにJSPFADに登録されている症例の中からIndolent ATL症例を抽出し、上記集積項目データの収集を開始した。ハイリスクグループの同定のために、これまでに東京大学医科学研究所附属病院でJSPFADに登録したindolent ATL、キャリア症例について基礎的な解析を加えることとし、フローサイトメトリー(HAS解析)によるCD7dim/CADM1+集団(D)およびCD7-/CADM1+集団(N)の比率により、4グループに分け、各グループの症例で異常リンパ球数、末梢血中プロウイルス量(PVL)を解析するとともに、全身化学療法施行への移行、キャリアの場合はATLへの進展について経過を観察し、各グループ間で比較した。DS集積サンプルにおける解析を行うためにJSPFADサンプルで解析可能であることを検証し、準備を実施した。本研究のベースとなるJSPFADに一定数の患者登録を行っている施設をHTLV-1キャリア対策の中核診療施設として位置づけネットワークを構築することによりHTLV-1対策施設の拠点化の基盤整備を行った。
結果と考察
Indolent ATLは典型的な希少がんであり、データレジストリーを構築して症例の集積を行いコホート化する手法が病態の解明と治療法の開発には有用と考えられる。本研究ではJSPFAD(HTLV-1感染者コホート共同研究班)レジストリーに紐づける形でindolent ATLに特化したDS(データスト―レージ)の構築と、JSPFADの特徴である血液サンプルの収集を合わせたユニークなindolent ATLのレジストリーシステムの構築を行った。システムの構築は完了し、既登録95例分のデータの収集は終了した。来年度以降残った症例、および新規に登録される症例の入力が進められる予定である。近年、特に難病、希少疾患領域でデータストーレージ化によるデータの共有化と研究の加速化が試みられている。現在難病レジストリーシステムRADAR-Jの構築が進められているが、本システムもRADAR-Jに統合することでより汎用性の高いDSに発展していくことが期待される。Indolent ATLにおけるハイリスク症例の同定、および発症ハイリスクキャリアの概念を検討するため、JSPFADに登録されHAS解析が行われている74例(無症候性キャリア48例、くすぶり型ATL15例、慢性型ATL11例)を対象にHASパターンと予後の関連について解析を行った。その結果CADM1/CD7発現レベルにより急転ハイリスク例、およびATL発症ハイリスクキャリアが抽出できることが明らかになった。今後本DSに登録される症例多数例で前向きに検証するためJSPFAD検体でHAS-Flowが実施可能であることの検証を行った。本システムの一つの特徴は、上記のごとくサンプルが収集されることである。関連研究班との連携により、これらの症例のサンプルを用いて、病態の解明、新たなリスク因子マーカーの解明などを行っていくことが可能で、AMED創薬基盤推進研究事業臨床エビデンスに基づいた創薬ターゲット研究山岸班との連携が開始される予定である。HTLV-1関連疾患診療中核施設群の構築のため、班会議において学会登録施設候補施設を交えて拠点施設要件を検討し、日本HTLV-1学会に答申することで拠点化の推進に貢献した。
結論
Indolent ATLの病態解明、新規治療の研究に資するプラットホームになる、JSPFADデータ登録ウェブサイトと連動するIndolent ATL データストーレージを開発するとともに
HTLV-1関連疾患対応拠点制度の構築を行った。

公開日・更新日

公開日
2018-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,499,000円
(2)補助金確定額
11,499,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,032,596円
人件費・謝金 681,935円
旅費 1,145,360円
その他 2,986,109円
間接経費 2,653,000円
合計 11,499,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-11-05
更新日
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