がん患者に対するアピアランスケアの均てん化と指導者教育プログラムの構築に向けた研究

文献情報

文献番号
201708032A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者に対するアピアランスケアの均てん化と指導者教育プログラムの構築に向けた研究
課題番号
H29-がん対策-一般-027
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
野澤 桂子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 飯野 京子(国立国際医療研究センター 国立看護大学校 成人看護学)
  • 藤間 勝子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センター )
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 乳腺・腫瘍内科)
  • 森 文子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 看護部)
  • 菊地 克子(東北大学病院 皮膚科 )
  • 宮本 慎平(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 形成外科 )
  • 全田 貞幹(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院 放射線治療科)
  • 八巻 知香子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
仕事を持ちながら通院する患者も32.5万人存在する時代,医療の場においても,外見の変化に対する患者支援が強く求められるようになっている。にもかかわらず,医療者には,アピアランスケアについての正しい知識や公平な情報がなく,また,個々の患者支援のために必要な支援のあり方を学ぶ場もないため,患者指導に困難を感じている状況も明らかになっている。
そこで,本研究は,基礎的な情報や支援方法をeラーニング化して,希望する医療者が学べるようにすること(研究1:アピアランスケアに関するeラーニング用基礎教育資材の開発を目指した研究)で,アピアランスケアの標準化及び均てん化を図るとともに,より高度な対応を求められるケースに対処できる指導者の養成(研究2:アピアランスケアを行う指導者教育プログラムの構築に向けた研究)を目指すこととした。初年度の29年度は基礎教育内容の検証のための各種実態調査,30年度は試案作成,31年度は実施と評価を中心に研究を実施し,教育プログラム用コンテンツを開発する予定である。
研究方法
本年度は,平成29年9月末に課題の採択がなされた後,研究プロセスから患者の意見を反映すべきであるとの評価委員の指導を受け,患者会代表ら5名の研究協力者を加えて,研究に着手した。分担研究者及び研究協力者が合議の上,パイロット調査を実施し,その後,平成30年2-3月にかけて,①全国がん診療連携拠点病院の医療者に対する郵送質問紙調査 744名(2025名,回収率36.7%),②がん患者1034名(男性518名・女性516名)と③一般人1030名(男性515名・女性515名)に対するインターネット調査を実施して,回答を得た。なお,患者の選択に関しては,可能な限りがん患者の男女別部位別罹患率(最新がん統計2017)に比例するよう,本調査対象候補者から無作為に抽出した。
結果と考察
医療者を対象とした調査(アピアランスケア研修会における教育内容の検証・評価に関する研究)によれば,アピアランス支援について医療職が行う必要性について,6段階の回答のうち「とてもある」54.1%,「ある」39.2%であった。しかし,医療者としての適切な支援の自信については,「とてもある」1.5%,「ある」13.0%であった。アピアランス支援のe-learning研修については,92.8%が希望していた。すなわち,医療者は,アピアランスケアを提供する必要があると考えてはいるものの,実際に患者を支援する自信は低く,その多くが正確な知識や適切なスキルを学びたいと考えていた。そのため,地方でのアピアランスケア研修会の開催を希望する声も多く,今後は,支援方法の普及のためにも,e-learningが検討すべき課題であることが示された。
患者を対象とした調査(がん治療に伴う外見の変化とその対処に関する実態調査)では,患者の58.1%,半数以上が外見の変化を体験しているが,疾患により体験頻度に差があること,性別や年齢により苦痛を感じる程度に差があること,医療者に対する対処方法の情報提供への期待が大きいこと(95.5%が肯定)などが示された。また,実際に必要だったにもかかわらず十分に提供がなされなかった情報として「職場や学校へ復帰する時の対処方法」(18.8%),「スキンケアの方法」(16.9%),「周囲の人への外見変化についての説明方法」(16.8%),「爪障害への対処方法」(16.4%)など,症状への対処方法だけでなく,対人関係が円滑に行くための説明方法が挙げられ,がん患者が直面する状況や支援すべき課題が示された。
一般人を対象とした調査(一般人を対象としたがん治療に伴う外見の変化とその対処に関する意識調査)では,がんによる外見変化として,頭髪の脱毛が広く認知されていた。また,外見の変化により,仕事や学校生活が阻害されると考える人も多く,罹患早期の適切な介入によって社会参加への不安を軽減させる必要が示唆された。そして,若年女性と高齢男性の約3割が,外見が変わるならば抗がん剤を用いたくないと答えており,外見変化は治療選択にも大きく影響する可能性も示された。さらに,対処方法の情報は病院から得られると半数以上が考えており,その期待は高い。医療者は情報源として利用希望・信頼度共に高いが,反面,病院が提供するパンフレットやWEBサイトの信頼度は患者団体や患者個人が発信するインターネット情報より低く,情報提供では,単に資材を配布するだけでなく,医療者の介入が必要であると考えられる。
結論
以上の事項に関する本格的な解析は今後の課題である。しかし,医療者・患者・一般人の3つの視点からアピアランスケアを捉える本研究により,医療者対象アピアランスケアの研修教育内容を検討するに際しての,基礎資料になりうる貴重なデータを収集することができた。

公開日・更新日

公開日
2018-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-08-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,004,000円
(2)補助金確定額
4,004,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 114,253円
人件費・謝金 687,676円
旅費 80,886円
その他 2,205,242円
間接経費 924,000円
合計 4,012,057円

備考

備考
8,057円自己資金

公開日・更新日

公開日
2019-01-10
更新日
-