生まれ年度による罹患リスクに基づいた実効性のある子宮頸癌予防法の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
201708029A
報告書区分
総括
研究課題名
生まれ年度による罹患リスクに基づいた実効性のある子宮頸癌予防法の確立に向けた研究
課題番号
H29-がん対策-一般-024
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 平井 啓(大阪大学 経営企画オフィス)
  • 中山 富雄(大阪国際がんセンター がん対策センター)
  • 宮城 悦子(横浜市立大学 産科学婦人科学)
  • 榎本 隆之(新潟大学 産科学婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,769,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究は、HPVワクチンに関連して厚生労働行政で重要となる、有効性の速やかな評価、勧奨一時差し控え継続の弊害の把握(生まれ年度によるHPV感染・頸癌罹患リスクの違い)、ワクチン導入後世代の検診受診行動の把握とその対策、ワクチンの利益・不利益に関する認識の調査と勧奨再開時の普及手法の開発を目的とした。
研究方法
(1)生まれ年度の頸癌罹患リスク評価とワクチンの有効性検証

(2)ワクチン接種世代における接種者・非接種者の検診受診行動の把握

(3)ワクチン接種世代の接種者・非接種者のリスク認識の調査と、それに基づくワクチンの接種の有無別の検診受診勧奨手法の開発
(3-1)ワクチン接種世代の接種者・非接種者のインタビュー調査
(3-2)ワクチン接種世代の接種者・非接種者のインターネット調査と接種者・非接種者に対する検診受診勧奨リーフレットの作成

(4)ワクチンの利益・不利益の認識の調査と、ワクチン接種勧奨再開後のワクチンの普及(接種率
向上)のための手法の開発
(4-1)ワクチンの認識に関するインタビュー調査・インターネット調査および接種勧奨リーフレットの作成
(4-2)ワクチン接種勧奨リーフレットの効果検証

結果と考察
(1)生まれ年度の頸癌罹患リスク評価とワクチンの有効性検証(2020年3月まで)
すでに、いわき市・川崎市・大津市・大阪市・高槻市・神戸市・岡山市・松山市・福岡市から確定年度分のデータ提供を受け、そのうち、欠損値のないいわき市・高槻市・松山市・福岡市の2010年度~2015年度データで解析を行った。
1990年度~1993年度生まれはワクチン接種の機会のなかった世代(接種率0%)であり、子宮頸がん検診の細胞診異常率は3.96%であったが、1994年度~1995年度生まれ(ワクチン接種率69.3%)では、細胞診異常率が3.01%と有意に低下していた(p=0.014)。特にLSIL以上の異常率は、1990年度~1993年度生まれの2.11%に比し、1994年度~1995年度生まれでは0.58%と有意に低下していた(p<0.001)。  
(2)ワクチン接種世代における接種者・非接種者の検診受診行動の把握)
当調査では2012年度~2017年度の20歳・21歳(1992年度~1996年度生まれ)のワクチン接種者・非接種者別の子宮頸がん検診受診率を解析するが、いわき市および豊中市に協力をいただき、現在両市においてデータ収集中である。当初の予定通り、2019年3月にはデータが確定する。必要症例数は十分満たしている。
(3-1)ワクチン接種世代の接種者・非接種者のインタビュー調査
接種者・非接種者へのインタビュー調査を実施し、ワクチン接種者では健康意識が高い傾向があり、検診受診を合理的に推奨するのが効果的と考えられた。一方、非接種者は健康意識が低い傾向があり、頸がんの身近さ・重篤さを切実に伝えるのが効果的と考えられた。
(4-1)ワクチンの認識に関するインタビュー調査・インターネット調査および接種勧奨リーフレットの作成
すでに、ワクチン接種世代の母親へのインタビュー調査は終了し、子宮頸癌の罹患の身近さや重篤さ(罹患率の上昇や交通事故よりも多い死亡者数などの情報)の訴求が有効である可能性が示唆された。インタビュー調査から得られた知見をもとに、2018年度にはワクチン対象年齢の娘を持つ母親に対するインターネット調査を行い、その結果を踏まえてリーフレットを作成する予定である。

結論
20歳の子宮頸がん検診の結果の経年的な観察により、ワクチン導入によって細胞診異常の頻度が有意に減少していることが明快に示された。今後、更なるデータ集積にて、前がん病変の減少効果も確認する。さらには、ワクチン停止世代での細胞診異常・前がん病変の増加も確認できる予定である。
 ワクチン接種世代の接種者・非接種者の健康意識・検診受診勧奨については、、ワクチン接種者では健康意識が高い傾向があり、検診受診を合理的に推奨するのが効果的と考えられた。一方、非接種者は健康意識が低い傾向があり、頸がんの身近さ・重篤さを切実に伝えるのが効果的と考えられた。
また、ワクチンの認識に関しては、ワクチン接種世代の母親へのインタビュー調査にて、子宮頸癌の罹患の身近さや重篤さ(罹患率の上昇や交通事故よりも多い死亡者数などの情報)の訴求が有効である可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2018-05-15
更新日
2018-09-06

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,499,000円
(2)補助金確定額
7,499,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,137円
人件費・謝金 588,077円
旅費 913,590円
その他 4,247,196円
間接経費 1,730,000円
合計 7,499,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-01-09
更新日
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