地域包括ケアにおけるがん診療連携体制の構築に資する医療連携と機能分化に関する研究

文献情報

文献番号
201708028A
報告書区分
総括
研究課題名
地域包括ケアにおけるがん診療連携体制の構築に資する医療連携と機能分化に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-023
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒尾 晴惠(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
  • 川越 正平(あおぞら診療所 在宅診療所)
  • 浜野 淳(筑波大学医学医療系臨床医学域)
  • 後藤 功一(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,378,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の高齢化は、諸外国に類を見ないスピードで進行し、医療や介護の需要がさらに増加する。特に都市部において超高齢社会への対応が急務となっている。がん診療拠点病院(以下、拠点病院)において抗がん治療を受けている患者は約6割、がんによる死亡のうち拠点病院以外での死亡は6割であり、拠点病院を中心としたがんに限定した連携体制では不十分であり、拠点病院以外の病院やかかりつけ医、高齢者向け施設との連携に基づいて行う地域完結型の包括的ながん診療連携体制が必要となる。一方で、包括的ながん診療連携モデルは乏しく、地域包括ケアシステムを基盤としたがん診療連携モデルの構築が必要である。
 本研究では、地域包括ケアシステムを基盤とした診断・治療・併存症の治療・終末期ケアまでを含む包括的ながん診療連携モデルの開発を行うことを目的とする。
研究方法
 研究は、地域包括ケアシステムにおけるがん診療連携に関して、医療者を対象としたインタビューの質的調査および質問紙調査による量的調査を行う。
 はじめに緩和ケアおよび在宅医療に先進的に取り組んでいる東葛北部医療圏の拠点病院および拠点病院以外の病院、かかりつけ医、在宅医療機関、緩和ケア病棟、各市医師会、各市行政担当部門、高齢者向け施設の担当者にインタビュー調査を行い、質的分析を行う。次いで、質的研究をもとに、2年次に実施する実態調査の質問紙を作成し、当該地域における実態調査を行い、量的分析を行う。質問紙は、がん診療連携に関する現状、好ましい取り組み、課題、連携先に求めること、自機関で担当できること、課題に対する解決策についてなど多面的な内容を尋ねるものとする。
 最終的には、地域包括ケアにおける望ましいがん診療連携についてのガイドを作成し、ガイドブックに基づく連携モデルの実施可能性および予備的な効果を検討することを目標とする。
 また、緩和ケア病棟で最期を迎えた進行がん患者の遺族を対象とした自記式質問紙調査の結果の分析を行う。
(倫理面への配慮)
すべての研究者はヘルシンキ宣言および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に従って本研究を実施する。個人情報および診療情報などのプライバシーに関する情報は、個人の人格尊重の理念の下厳重に保護され慎重に取り扱われるべきものと認識して必要な管理対策を講じ、プライバシー保護に務める。
結果と考察
【結果】
 初年度は、地域包括ケアにおけるがん診療連携に関する質的研究を行った。研究方法で対象とした施設の担当者86名にインタビュー調査を行った。医療機関では医師・歯科医師・看護師・医療メディカルソーシャルワーカー・理学療法士など、介護施設や介護事業所においては介護福祉士や介護支援専門員など、多職種を対象とした。調査する内容は、がんに対する診療・がん以外の併存疾患に対する診療および外来・入院、検査・診断・治療・終末期ケアと多面的に調査を行った。インタビュー調査の結果を質的に分析し、がん診療連携に関する現状および望ましい取り組み、課題、連携先に求めること、自機関で担当できること、などの内容の抽出を行った。
 また、緩和ケア病棟で最期を迎えた進行がん患者の遺族を対象とした自記式質問紙調査により、緩和ケア病棟で最期を迎えた進行がん患者の家族のうち、42.2%が何らかの家族内の葛藤を経験していた。家族内の葛藤が増える要因として、家族の年齢が若いこと、家族内で意見を強く主張する方がいること、病気後に家族内でのコミュニケーションが十分にとれていなかったことなどが示唆された。
【考察】
 多職種、多機関にわたるインタビュー調査であるために対象者は多くなったものの、幅広い意見を収集することが可能であったと考えられる。平成29年度は質的分析を22名まで終了し、引き続き実施予定である。得られたデータから、がんの治療状況を考慮した、がん診療連携に関する現状および望ましい取り組み、課題、連携先に求めること、自機関で担当できること、などが明らかになり、抽出された課題や解決策が抽出され、地域連携の問題に関しての検討が可能となる。
 また、家族内の葛藤は、緩和ケア病棟だけで発生することではなく、治療の早期から患者・家族が感じていることであるため、地域包括ケアにおけるがん診療連携体制の構築においては、治療における医療連携、機能分化だけでなく、家族ケアにおける医療連携、機能分化も必要であると考えられる。
結論
初年度は、医療従事者および介護従事者86名を対象にインタビュー調査を完遂し、質的研究を行った。今後量的研究を行う予定である。また、進行がん患者の遺族を対象とした自記式質問紙調査により、約40%の遺族が家族内の葛藤を経験していることを明らかにし、家族内の葛藤が増える要因を分析した。

公開日・更新日

公開日
2018-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,291,000円
(2)補助金確定額
8,291,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,737,034円
人件費・謝金 1,490,198円
旅費 217,819円
その他 932,949円
間接経費 1,913,000円
合計 8,291,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-03-27
更新日
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