質の高い消化器がん診療の均てん化を目指した、専門医制度の評価・育成プログラム構築システムの開発

文献情報

文献番号
201708023A
報告書区分
総括
研究課題名
質の高い消化器がん診療の均てん化を目指した、専門医制度の評価・育成プログラム構築システムの開発
課題番号
H29-がん対策-一般-018
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
今野 弘之(国立大学法人浜松医科大学 )
研究分担者(所属機関)
  • 掛地 吉弘(神戸大学大学院)
  • 丸橋 繁(公立大学法人福島県立医科大学)
  • 瀬戸 泰之(東京大学大学院)
  • 宮田 裕章(慶應義塾大学)
  • 袴田 健一(弘前大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,497,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 消化器外科医は各医療圏における消化器がん医療に中心的な役割を担っており、消化器外科専門医はその中心的存在である。近年の医療の高度化、専門化に即して専門医制度を進化させていくためには、制度自体の評価と改善が不断に実施される必要がある。本研究の目的は、National Clinical Database (以下、NCD)システムを利用して、継続的な評価改善機能を有した専門医育成システムを構築することである。
研究方法
 3年計画の1年目に当たる平成29年度は、先行研究で得た1696施設診療科からのアンケート調査結果と平成27年のNCD mortalityデータの後ろ向き解析により専門医育成プログラムの評価項目を選定し、これらの評価項目をNCD上で前向きに評価するシステムの開発を行った。
 まず、平成27年のNCD登録データを用いて作成されたmortalityに関する8術式(食道切除再建術 (Eso)、幽門側胃切除術 (DG)、胃全摘術 (TG)、結腸右半切除術 (RHC)、低位前方切除術 (LAR)、肝切除術 (Hx)、膵頭十二指腸切除術 (PD)、汎発性腹膜炎手術 (ADP)のリスクモデルを用いて、アンケート参加施設毎のOE比を算出した。アンケート参加施設を術式毎にOE比で3群(A群:OE比<0.5、B群:0.5<OE比<2.0、C群:2.0<OE比)に分け、治療成績の不良な施設群(C群)の背景因子候補をクロス集計から抽出し、多変量解析によりmortalityに有意に関連する因子を同定した。次いで、NCDシステム上で専門医制度前向き評価項目を前向きに評価するプログラムの開発を行った。これらのデータ解析、システム開発はNCDに委託して行った。
結果と考察
(1)アンケートの概要と参加施設のOE比カテゴリー別実施手術件数
 平成28年2月~4月にアンケート調査を行い、1696施設診療科からの回答を得た(回答率57.1%)。主な内容は、1) 診療体制、2)カンファレンス、3) 治療方針の決定方法、4) 入院診療体制、5) Safety Culture、6) 施設機能などに関する合計約50項目である。平成27年の各術式のOE比カテゴリー別手術実施件数は、Eso:A群1954例、B群1325例、C群397例、DG:19854例、4912例、3619例、TG:8268例、1319例、2544例、RHC:9183例、2641例、3745例、LAR:13390例、216例、1846例、Hx:2935例、1155例、348例、PD:4285例、1497例、1047例、ADP:2631例、5229例、240例であった。
(2)手術死亡に影響を与える因子の抽出
 hospital volumeや施設の機能的因子に加え、入院診療体制(主治医単独で診療を行う);Eso、手術適応の決定方法(特定の医師、あるいは主治医のみで決定);DG、Hx、PD、術式の決定方法(特定の医師、あるいは主治医のみで決定);TG、PD、専門医のカバーする領域(カバーされない領域がある);TG、RHC、Cancer Boardの開催なし;Xx、などが手術死亡に有意に影響を与える因子として同定された。
(3)NCD前向き評価システムの開発
 上記で同定した評価項目を最大15項目NCDに実装するための表示条件、入力条件など、システム開発のための調査、検討を行った。
 今回の解析により,Eso、DG、Hx、PDではOE比の良好な施設でより多くの手術が実施されていたが、TG、RHC、LARではOE比が高い施設で行われた手術が多い事が明らかとなり、これらの施設の手術成績の向上は今後の課題と考えられる。OE比の高い施設の背景因子をアンケート調査から拾い出し、これらをNCD リスクモデルに投入することで入院診療体制や手術適応、術式の決定方法など、改善すべき因子が明らかとなった。特に複数の領域をカバーする専門医が参加するカンファレンスで手術適応や術式を決定するプロセスが重要であると考えられる。
 これらの実証的なデータに基づいて選定した専門医制度評価指標をNCDシステムに実装して現行の制度を前向きに評価し、改善点を新たな育成プログラムにfeed backすることで、PDCAサイクルに依拠した専門医育成システムが可能となるものと期待される。
結論
 専門医として標準的な治療を安全に実施するためには、修練を行う施設のカンファレンスによる教育や手術適応、術式決定のプロセス、診療体制の整備など、施設の環境因子が重要である。今後、専門医育成プログラムの評価・改善機能を実装したNCDシステムを構築することで、問題点の抽出、前向き評価、改善計画の策定、プログラムへの反映の流れを継続的に実行可能なフィードバックシステムの構築が期待される。

公開日・更新日

公開日
2018-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,946,000円
(2)補助金確定額
12,293,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,653,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 788,337円
人件費・謝金 0円
旅費 64,590円
その他 7,992,000円
間接経費 3,449,000円
合計 12,293,927円

備考

備考
当初の予定では「NCDを利用した専門医制度評価システムの開発」と「平成27年NCD症例とアンケート調査の解析」をNCDに委託する事としていたが、平成27年NCDデータ解析はすでにNCDで解析されたデータを利用することが出来たため、NCD委託費に余剰が生じた。研究費は927円の自己資金を含む。

公開日・更新日

公開日
2019-01-10
更新日
-