抗がん剤治療中止時の医療従事者によるがん患者の意思決定支援プログラムの開発

文献情報

文献番号
201708022A
報告書区分
総括
研究課題名
抗がん剤治療中止時の医療従事者によるがん患者の意思決定支援プログラムの開発
課題番号
H29-がん対策-一般-017
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
内富 庸介(国立研究開発法人 国立がん研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森 雅紀(聖隷三方原病院)
  • 藤森 麻衣子(国立研究開発法人 国立がん研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
10,187,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
H26-28年度厚生労働科学研究費補助金がん政策研究事業における患者意向調査結果(Umezawa, Uchitomi, Cancer, 2015)を踏まえ、抗がん剤治療中止を伝える医師と患者双方の負担軽減を目指し、医療従事者によるがん患者の意思決定支援プログラムを開発することを目的とする。
研究1
抗がん剤治療中止後の療養に関する患者と医師の話し合いの際に使用するQPL(教育資材)を作成する。

研究2
QPL(教育資材)を使った医療従事者によるがん患者の意思決定支援プログラムを開発することを目的とする。

研究3
腫瘍医あるいは緩和ケア医が予後告知、心肺停止時の心肺蘇生、ホスピスへの紹介について説明する時にどのような伝え方が望ましいかに関する患者の意向を系統的に探索することを目的とする。
研究方法
研究1

1)文献レビュー
文献検索エンジン(PubMed、PsychInfoなど)を用いて、該当論文を系統的にレビューし、QPLの項目の内容を検討する。

2)フォーカスグループインタビュー(FGI)
QPLを作成するにあたり、先行研究(Clayton et al., 2003)に基づきフォーカスグループインタビュー(FGI)を行う。データの解析については、ICレコーダーの記録をもとに、3人のがん専門スタッフが内容分析を行う。

研究2
1)文献レビュー
文献検索エンジン(PubMed、PsychInfoなど)を用いて、該当論文を系統的にレビューし、患者支援プログラム及び、医療従事者への指導者講習の構造および内容を検討する。

2)フォーカスグループインタビュー(FGI)
研究1と同様にFGIを行い、教育方法を作成するために必要な意思決定の仕方、望まれる支援法等についての検討を行う。得られた結果を当該領域専門家5名によりデルファイ法を用いてコンセンサスを得てプログラムを確定する。

研究3
1) 先行研究、10名のがん治療医・緩和ケア医の議論を通じて調査票を作成する。EOLdに関する台詞は、各台詞で伝えたい概念を明確にする。
2) がんサバイバー4名を対象としたパイロット調査を行い、調査票の文言を修正する。
3) 現在がんのために通院中の20歳以上の患者を対象に、Web調査を実施する。
4) 「全く好ましくない~非常に好ましい」の6件法で回答を求める。
5) 解析は記述統計を行い、意向の回答に関しては平均値(1~6)を求める。
結果と考察
研究1
FGIをがん患者5名、家族4名、遺族3名、医師6名の18名で行った。インタビューから、QPLの項目は1.今後について、2.治療について、3.生活について、4.症状について、5.緩和ケアについて、6.診断について、7.家族について、8.表記方法について、9.精神面/心理面、10.主治医について、カテゴリーに分けた。その分けられたリストから先行研究の質問項目を参考に項目を選びだし冊子の形式とした。選び出した質問項目は、患者、臨床腫瘍医(5名)が内容を確認した。ア.診断、イ.治療、ウ.症状、エ.生活、オ.標準的な抗がん治療の後、カ.家族、キ.こころ、ク.価値観の8つの構成要素で冊子を作成するに至った。
 
研究2
FGIはがん患者5名、家族4名、遺族3名、医師6名の18名で行った。QPLを用いた介入方法に関して、1.QPLを渡す時期、2.QPLの体裁、3.誰からQPLを渡すか、4.誰にQPLを渡すか、5.QPLに必要な項目、6.QPLを用いたコミュニケーションを促進するための介入方法の6つのカテゴリーが抽出された。それらをもとに、ア.患者・家族への介入時期、イ.介入の時間と場所、ウ.介入の面談内容、エ.介入に際しての注意点を検討し介入マニュアル(教育方法)を作成した。

研究3
2018年2月に調査を行い、計412人が回答した。その結果 1.告知の際には、数字に幅を加えるなど不確実性が具体的にイメージできるように伝える 2.数字や幅による期間だけではなく、その中で「最善を望みながらも、備えはしておく」ことを提案する台詞が患者に好まれる 3.EOLdを行う際は、患者にとってPositiveな意味づけが伝わる言葉(positive statement)を加えるほど好ましいということであった。
結論
研究1
今後は、QPLを予備的に有用性を評価するためのパイロット試験を行う。
研究2
今後は、プログラムの実施可能性と予備的に有用性を評価するためにパイロット試験を行う。
研究3
本研究で取得した知見を基礎資料として、今後より検証的な実験心理学的研究を行うなど、抗がん剤治療中止時の医療従事者によるがん患者の意思決定支援プログラムの開発に資する研究が求められる。

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,243,000円
(2)補助金確定額
11,316,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,927,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,119,770円
人件費・謝金 2,777,881円
旅費 333,606円
その他 3,029,489円
間接経費 3,056,000円
合計 11,316,746円

備考

備考
予定していた人材が確保できなかったため。746円については自己資金。

公開日・更新日

公開日
2018-11-27
更新日
-