希少がんの病理診断と診療体制の実態とあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201708019A
報告書区分
総括
研究課題名
希少がんの病理診断と診療体制の実態とあり方に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-014
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
西田 俊朗(国立がん研究センター 中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小田 義直(九州大学 医学研究院 形態機能病理学)
  • 吉田 朗彦( 国立がん研究センター  中央病院病理科)
  • 川井 章(国立がん研究センター 中央病院骨軟部腫瘍科)
  • 米盛 勧(国立がん研究センター乳腺・腫瘍内科)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,712,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「希少がん医療・支援のあり方に関する検討会」でも指摘されている通り、希少がんでは幾つかの課題が在り、その一つに必ずしも適正な病理診断がなされていない可能性が指摘されている。一方で、正確な病理診断は希少がん診療を行う上で重要ではあるが、診断の集約化を進めるべきかについては議論がある。そもそもが現在まで本邦における一般診療での病理診断の正確性は未検証である。本研究では希少がん病理診断の正確性(診断の質)検証のために、希少がんの中で一定数を占める軟部肉腫を対象に、国立がん研究センター中央病院および九州大学病院の治療紹介症例の診断見直し、さらに九州大学病院の関連施設における軟部腫瘍(良性を含む)の治療症例全例の見直し、消化管間質腫瘍(GIST)のレジストリ研究協力施設における全例病理診断の見直しを行い診断一致率の検証とその要因解明を行う。また適切でない病理診断の治療への影響を治療変更や医療経済的損失の試算なども含め検討し、今後の希少がん病理診断のあるべき方向性について検討する。 
情報公開で集約化が起こるか、起こった場合にどの様な影響があるか、希少がん対策ワーキンググループ四肢軟部肉腫分科会において専門施設の要件と情報公開の影響を明らかにする。
研究方法
骨軟部腫瘍病理診断一致率の検討に関しては、平成29年度は肉腫治療紹介症例の診断見直し研究とGISTでの中央診断の有用性の検討を行う。
情報公開で集約化に関しては、院内がん登録やナショナルレセプトデータベースなどのデータベースを使い、参加施設と非参加施設、四肢軟部肉腫と他のがん種などの診療集約状況の経年的な変化を比較することで検証する。
最終年度には、これら一次情報と海外の制度調査を総合し、軟部肉腫をモデルとし、希少がんの正確な診断と集約化による治療の最適化など、我が国における希少がん診療提供体制の今後のあり方を提言する。
結果と考察
肉腫治療紹介症例の診断見直し研究では、国立がん研究センター中央病院と九州大学病院両病院での紹介軟部肉腫患者での病理診断に関して、総計373例を見なおし、一致したものが218例(58%)、そのカテゴリー内に最終診断が納まったもの(含有)36例(10%)、何らかの不一致を認めたもの(不一致例)87例(23%)、そしてそれぞれの病院の肉腫専門家でも分類や診断が十分にできなかったもの(分類不能)30例(8%)であった。
GISTでの中央診断の有用性の検討では、一般病院での一般病理医による病理診断と専門医病理医による病理診断の診断一致率をSTAR ReGISTry研究の付随研究で検証した。完全不一致を約4%に、不完全一致を約18%に認めた。
情報公開による影響の検証では、18.2%の患者が40例以上の診療施設で、8.7%の患者が50例以上診療施設で治療が開始されており、情報公開に参加した専門施設53施設における症例シェアは51.6%であった。
結論
肉腫治療紹介症例の診断見直し研究では、一部症例集積がやや不良な部分もあるが、概ね順調に推移しており、計画時1年で終了予定であった研究を30年度に継続することで統計学的に必要な症例数が確保できる見込みである。30年度の集計を加え、病院特殊性や地域性も考慮した解析が必要になるかも知れない。GISTに関する一般施設での病理診断の状況に関しては、前向きレジストリ研究の付随研究として行っているため、比較的順調にデータは揃っている。今後は、一般病理医と専門病理医の病理診断の相違の原因をもう少し明らかにすると共に、病理診断が異なることで発生する必ずしも適切或いは有効で無い治療の費用推定、患者影響度に関して解析する予定である。情報公開による影響の検証に関しては、公開情報を周知すると共に経年的影響も見ていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2018-08-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,325,000円
(2)補助金確定額
11,319,000円
差引額 [(1)-(2)]
6,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,567,524円
人件費・謝金 1,083,070円
旅費 49,240円
その他 6,480円
間接経費 2,613,000円
合計 11,319,314円

備考

備考
314円は自己負担

公開日・更新日

公開日
2019-02-14
更新日
-