希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上

文献情報

文献番号
201708018A
報告書区分
総括
研究課題名
希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上
課題番号
H29-がん対策-一般-013
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小寺 泰弘(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 室 圭(愛知県がんセンター・中央病院・部長)
  • 藤原 俊義(岡山大学・医歯薬学総合研究科・教授)
  • 川井 章(国立がん研究センター・中央病院・医長)
  • 小田 義直(九州大学・医学研究院・教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,684,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少癌は1)集約化すべき医療機関の情報が少ない、2)正確な病理診断が困難、3)エビデンスが少ない、4)病態の解明が困難、等の問題を有し診療上不利な状況にある。希少癌の割合は全ての癌種の22%とされ、個々の疾患は稀だが希少癌に罹患すること自体は珍しいことではない。希少がん医療・支援のあり方に関する検討会(厚生労働省健康局)では、希少癌に関する最新情報の収集・提供や診療ガイドラインの策定を進めるために関係機関が密に連携し希少癌特有の課題に対応していく支援体制の構築が必要と提言された。提言を踏まえ、本研究ではニーズが高い癌種を特定し、その各々について診療ガイドライン作成グループ、システマティックレビューチームを組織して診療ガイドラインを作成する。この過程で、可能な範囲で当該希少疾患の診療を専門とする施設やネットワーク、病理診断コンサルテーション体制の探索・構築も行い、診療ガイドラインに情報を掲載する。また、ガイドライン策定の経験を通して、Minds診療ガイドライン作成マニュアルに則ってエビデンスが少ない等希少癌ならではの課題を踏まえた診療ガイドラインを作成する方法の確立を目指す。
研究方法
本研究は、臓器横断的に癌を扱う日本癌治療学会のガイドライン委員会を中心に臓器別の各学会と連携し、可能な限りMinds ver.2に則って希少癌の診療ガイドライン作成に取り組むものである。希少癌に関わる医療相談に応じてきた国立がん研究センター希少がんセンターに蓄積された問い合わせ内容(3年間で9,606件の解析)と、医療ウェブメディアが実施するアクセス情報の網羅的検索によるマッピングデータにより、患者のニーズが高い希少癌を選択して診療ガイドライン作成の候補とする。作成に際しては、作成する希少癌を主に診療している各臓器別の学会と連携し、作成に関わる費用を含めて支援する。
結果と考察
4名の分担研究者に名古屋大学化学療法部の安藤雄一教授、名古屋大学整形外科の西田佳弘特任教授を加えて希少癌ガイドライン統括委員会を設置し、厚生労働科学研究費補助金「希少がんの定義と集約化に向けたデータ収集と試行のための研究」(研究代表者:国立がん研究センターがん対策情報センター東尚弘)と連携確認、役割分担の上、研究を開始した。国立がん研究センター希少がんセンターに蓄積された問い合わせ内容(3年間で9,606件)と、医療ウェブメディアが実施するアクセス情報の網羅的検索によるマッピングデータから、患者や医療従事者のニーズが高い希少癌として軟部肉腫、GIST、小腸癌、肛門癌、陰茎癌、脳腫瘍等がガイドライン作成が望ましい疾患としてリストアップされた。日本癌治療学会・日本胃癌学会によるGIST診療ガイドラインの改定に携わる他、大腸癌研究会、日本泌尿器科学会、日本脳腫瘍学会、日本頭頚部癌学会、日本整形外科学会等のガイドライン委員会と連携し、上記の希少癌をはじめとする希少癌の診療ガイドライン作成作業を開始(一部、開始予定)した。
脳腫瘍については小児上衣下巨細胞性星細胞腫の診療ガイドラインの案が完成し、パブリックコメントを求める状況にある。成人転移性脳腫瘍ガイドラインの改定が終了し、中枢神経原発悪性リンパ腫ガイドラインの改定が開始された。さらに髄芽腫、中枢神経系胚細胞性腫瘍、小児上衣腫、びまん性浸潤性橋神経膠腫、視路・視床下部神経膠腫、成人神経膠腫についても、平成30年度中にその半数を、平成31年度前半には残りのすべてを完成させ、その後出版予定である。
陰茎癌、小腸腫瘍については作成委員長が決定し、委員会メンバーを策定中であり、引き続き連携方法を議論していく。
軟部腫瘍については、これまでの四肢原発の腫瘍に加えて、後腹膜原発の腫瘍も記載を加えることが検討されている。これに先立ち、診療ガイドライン作成にかかわる研修会等の開催、参加を支援した。
頭頚部癌についても頸部食道癌、粘膜悪性黒色腫、聴器癌、頸動脈小体腫瘍、唾液腺導管癌、嗅神経芽細胞腫、腺様嚢胞癌などについてアルゴリズムとCQを作成するという方向性が定まった。
希少癌フラクションを扱うこととなる「進行固形腫瘍患者におけるDNAミスマッチ修復機能欠損検査ガイドラインに関する研究」においてはkick-off meetingと国内での現状把握のためのアンケート調査を行った。
既にガイドラインが存在するGIST診療ガイドラインについても改定ワーキンググループが発足し、本研究班が同グループとは独立したシステミックレビューチームの立ち上げを支援することとした。
結論
年度内に小児上衣下巨細胞性星細胞腫の診療ガイドラインが完成したが、その他の希少癌についてもこの先2年間の研究期間で診療ガイドラインを完成させるべく多くの学会のガイドライン委員会を通じてプロジェクトが動き始めてる。

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,188,000円
(2)補助金確定額
14,910,000円
差引額 [(1)-(2)]
278,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 820,593円
人件費・謝金 661,917円
旅費 2,576,100円
その他 7,348,062円
間接経費 3,504,000円
合計 14,910,672円

備考

備考
差額672円は自己資金。

公開日・更新日

公開日
2018-12-11
更新日
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