文献情報
文献番号
201708015A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者のがん医療の質の向上に資する簡便で効果的な意思決定支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-010
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
小川 朝生(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
研究分担者(所属機関)
- 長島 文夫(杏林大学 医学部 内科学腫瘍科)
- 濱口 哲弥(埼玉医科大学 医学部)
- 海堀 昌樹(関西医科大学 医学部)
- 奥村 泰之(医療経済研究機構 研究部)
- 田代 志門(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター生命倫理研究室)
- 平井 啓(大阪大学 経営企画オフィス)
- 山口 正和(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院 薬剤部)
- 市田 泰彦(国立研究開発法人国立がん研究センター 東病院 薬剤部)
- 渡邉 眞理(神奈川県立保健福祉大学 )
- 稲葉 一人(中京大学 法務大学院 法務研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,491,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢がん患者のがん治療上の課題ならびに、患者・家族の医療ニーズを網羅的に明らかにするとともに、がん診療連携拠点病院において実施可能な簡便で効果的な意思決定支援プログラムを開発し、実施可能性を確認し標準化する事を目的とする。
研究方法
① 患者・介護者のがん体験に関するインタビュー調査
がんの診断を受けた高齢患者とその介護者に対して、がん治療においてどのような体験をし意思決定の場を中心にどのような支援ニーズがあるかを明らかにするために、65歳以上の患者と家族を対象に半構造化面接によるインタビュー調査を実施した。
②高齢者のがん診療を支援する看護師・ソーシャルワーカーが捉える困難感と課題
高齢がん患者の意思決定を支援する看護師とソーシャルワーカーが捉える困難感と課題を明らかにすることを目的に、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センター等に相談員として勤務する看護師およびソーシャルワーカー18名を対象にインタビューを行った。
③高齢者の服薬アドヒアランスに関する調査
高齢者における経口抗がん剤の服薬アドヒアランスを把握するため、後方視的調査を検討した。
④レセプトデータを活用した高齢がん患者の入院治療における実態把握
2016年4月から2017年11月の間に認知症ケア加算の算定をしていた72施設の19086症例を分析対象とした。
⑤治療中断の予測因子の検討
進行肺がん患者216名を対象に、治療開始時の認知機能障害の程度と、治療開始から6か月間における治療中断・延期との関係について予備的に検討した。
⑥進行肺がん患者の治療方針決定時における意思決定能力の評価
進行肺がん患者の治療方針決定時の意思決定能力を評価した。
⑦認知症支援プログラムの効果的な導入方法の検討
現在がん治療に携わる7名の医師にインタビュー調査を実施し、意思決定困難な患者の特徴やその対応について検討を行った。
がんの診断を受けた高齢患者とその介護者に対して、がん治療においてどのような体験をし意思決定の場を中心にどのような支援ニーズがあるかを明らかにするために、65歳以上の患者と家族を対象に半構造化面接によるインタビュー調査を実施した。
②高齢者のがん診療を支援する看護師・ソーシャルワーカーが捉える困難感と課題
高齢がん患者の意思決定を支援する看護師とソーシャルワーカーが捉える困難感と課題を明らかにすることを目的に、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センター等に相談員として勤務する看護師およびソーシャルワーカー18名を対象にインタビューを行った。
③高齢者の服薬アドヒアランスに関する調査
高齢者における経口抗がん剤の服薬アドヒアランスを把握するため、後方視的調査を検討した。
④レセプトデータを活用した高齢がん患者の入院治療における実態把握
2016年4月から2017年11月の間に認知症ケア加算の算定をしていた72施設の19086症例を分析対象とした。
⑤治療中断の予測因子の検討
進行肺がん患者216名を対象に、治療開始時の認知機能障害の程度と、治療開始から6か月間における治療中断・延期との関係について予備的に検討した。
⑥進行肺がん患者の治療方針決定時における意思決定能力の評価
進行肺がん患者の治療方針決定時の意思決定能力を評価した。
⑦認知症支援プログラムの効果的な導入方法の検討
現在がん治療に携わる7名の医師にインタビュー調査を実施し、意思決定困難な患者の特徴やその対応について検討を行った。
結果と考察
高齢がん患者の診療の現状を明らかにするために、医療者ならびに患者・家族を対象とした診療に関する質的調査、アドヒアランスの検討、レセプトデータからの検討を行った。
その結果、
①医療者の観点から、意思決定に関する困難があげられ、その背景には、本人の特性と認知機能等の加齢に伴う要因があること、その特性を把握するためにエキスパートが実践していることは、背景情報のほか、対面時の動作、状況の理解、対面時の情動変化等の態度の確認があること。また看護師・ソーシャルワーカーが支援をするうえで、意向の確認・調整のほか、社会的支援の問題があること
②患者・家族の観点から、治療に関する意思決定について、情報の理解の問題、価値観の問題があること
③治療時には、身体拘束等高齢者特有の問題があること、特に身体拘束は一度実施すると、解除の検討がなされていない可能性があること
が明らかになった。
高齢者のがん治療を検討する上で、若年成人と大きく異なる点に、
①がんが生命予後や苦痛に影響していることの確認
②意思決定能力の評価
③治療目標が本人の意向と沿っていることの確認
の3点がある。今回、われわれの検討においても、
①がん治療の適応の評価(特に、がん治療が医原性フレイルの原因とならないかどうかの判定、フレイルの可逆的な要因の探索と対応)
②意思決定能力の評価
③本人の特性を考慮した意向の確認
の検討が重要となる。
適応の評価については、高齢者のがん診療に関する観察研究があり、一般診療と同様に、IADLやADL、低栄養などが、無治療中断実施割合や生命予後と関連することが報告されている。がん治療では、効果を期待してがん治療を実施したにもかかわらず、有害事象が想定外に強く出た結果、医原性のフレイルを招く結果となることが危惧される。フレイルについては、
①フィジカルなフレイル: 主にサルコペニアの評価
②コグニティブ・フレイル:認知機能のほか、アパシー
③ソーシャルなフレイル:独居、社会的引きこもり
があり、その対応を含めた支援方法の検討が重要である。
その結果、
①医療者の観点から、意思決定に関する困難があげられ、その背景には、本人の特性と認知機能等の加齢に伴う要因があること、その特性を把握するためにエキスパートが実践していることは、背景情報のほか、対面時の動作、状況の理解、対面時の情動変化等の態度の確認があること。また看護師・ソーシャルワーカーが支援をするうえで、意向の確認・調整のほか、社会的支援の問題があること
②患者・家族の観点から、治療に関する意思決定について、情報の理解の問題、価値観の問題があること
③治療時には、身体拘束等高齢者特有の問題があること、特に身体拘束は一度実施すると、解除の検討がなされていない可能性があること
が明らかになった。
高齢者のがん治療を検討する上で、若年成人と大きく異なる点に、
①がんが生命予後や苦痛に影響していることの確認
②意思決定能力の評価
③治療目標が本人の意向と沿っていることの確認
の3点がある。今回、われわれの検討においても、
①がん治療の適応の評価(特に、がん治療が医原性フレイルの原因とならないかどうかの判定、フレイルの可逆的な要因の探索と対応)
②意思決定能力の評価
③本人の特性を考慮した意向の確認
の検討が重要となる。
適応の評価については、高齢者のがん診療に関する観察研究があり、一般診療と同様に、IADLやADL、低栄養などが、無治療中断実施割合や生命予後と関連することが報告されている。がん治療では、効果を期待してがん治療を実施したにもかかわらず、有害事象が想定外に強く出た結果、医原性のフレイルを招く結果となることが危惧される。フレイルについては、
①フィジカルなフレイル: 主にサルコペニアの評価
②コグニティブ・フレイル:認知機能のほか、アパシー
③ソーシャルなフレイル:独居、社会的引きこもり
があり、その対応を含めた支援方法の検討が重要である。
結論
高齢がん患者の意思決定の質の向上を図るための支援の方向性を検討するために、実態把握を目指した。支援方法を検討する上で、治療適応と意思決定能力評価、意向の確認の3点が重要である。
公開日・更新日
公開日
2018-05-29
更新日
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