がんの医療提供体制および医療品質の国際比較:高齢者がん医療の質向上に向けた医療体制の整備

文献情報

文献番号
201708014A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの医療提供体制および医療品質の国際比較:高齢者がん医療の質向上に向けた医療体制の整備
課題番号
H29-がん対策-一般-009
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
丸橋 繁(公立大学法人 福島県立医科大学 肝胆膵・移植外科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 掛地 吉弘(神戸大学大学院医学研究科外科学講座 食道胃腸外科学分野)
  • 瀬戸 泰之(東京大学大学院医学系研究科 消化管外科学教室)
  • 後藤 満一(大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター)
  • 今野 弘之(浜松医科大学)
  • 宮田 裕章(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
  • 高橋 新(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
  • 隈丸 拓(東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,414,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国レベルでの大規模データベース(DB)である、NCDを用い、更に新たに安全文化などの因子を含め国際比較解析を行うことにより、高齢者のがん治療における身体機能、認知機能、QOL維持等に関する高齢者特有の課題抽出と生活・医療上のニーズ把握と、これらに基づく診療プログラム(意志決定支援プログラム等)開発と標準化、そして、高齢者がん医療に関する政策に繋がる新たなエビデンスを創出する事を目的とした。
研究方法
本研究では、高齢者指標および安全文化指標を従来のNCD登録項目に新規に加えたパイロット研究を行い、外科治療成績の評価および国際比較を行う。
初年度は、老人医療や安全文化に関する新規項目をNCDデータと共に収集し解析するパイロット研究を開始した。また、米国NSQIPと協力して新規項目を設定し、国際比較が可能なプラットフォームを作成した。平成30 年度(データ登録):老人医療パイロット研究を進め、NCDへ新規追加項目を登録するシステムを開発しデータ登録を行う。また、両国の術後死亡率及び合併症率や入院期間の比較研究を行ない、特徴を明らかにする。平成31 年度(データ解析と論文化):両国のDBから術後合併症や術後死亡のリスクモデルを作成し、高齢者がん外科治療における特徴と我が国が直面する問題点について考察する。身体/認知機能、QOL 維持といった高齢者特有の問題点を考慮した外科治療成績改善方法を明らかにし、実臨床にフィードバックするサポートシステムの構築、ガイドラインの策定を行う。
結果と考察
NCD、ACSNSQIP 双方のデータベースにおけるデータ解析および国際比較研究のプラットフォームの構築として、1)消化器主要手術術後死亡と合併症に関する検討、2)老人医療(消化器外科手術)に関する研究、を開始した。後者は、NSQIP老人外科手術(Geriatric program)における変数(variables)の内容を詳細に検討し、現在NCDに登録している消化器外科主要8術式(食道切除、胃切除、肝切除術、膵頭十二指腸切除、直腸低位前方切除術、結腸右半切除術、急性汎発性腹膜炎手術)を対象に、パイロット研究を行う計画を立案した。症例ごとにデータ入力する前向き研究とし、2018年1月〜12月の症例を対象に登録を開始した。登録項目は、我が国の実情に合わせて、またDPC入力項目も参考にして選択枝を設定し、NSQIP (geriatric program)における20項目のうちの19項目を含めた合計25項目とした。登録には、NCDによるシステム開発を行い、全国22施設で登録が開始されている。
一方、安全文化などの医療安全因子(ソフト因子)の情報収集も同時に行っている。安全文化指標としては、レジリエンス指標としての、①手術適応決定方法、②術前コンサルテーションの有無、③術後合併症に対するカンファレンス開催の有無、の3項目を採用した。
現在、NCD登録されている消化器外科主要術式の項目(variables)はほぼNSQIPと互換性があるため、日米の比較が容易である。全国の症例登録数は、約4000例を見込んでおり、参加施設も大学病院から市中病院まで満遍なく分布している。データの確定は平成31年3月を予定しており、データ解析は平成31年度になる予定である。データには、これまで得ることができなかった術後せん妄の有無、褥瘡、術前後の身体機能情報、退院先の情報が得られることになり、これらの因子と医療安全に関する情報とを組み合わせた、高齢者のがん治療における身体機能、認知機能、QOL維持等に関する高齢者特有の課題抽出と生活・医療上のニーズ把握が可能になると考えられる。また、日米比較により、我が国における特徴を正確に評価することが可能となることが期待される。さらには、これらに基づく診療プログラム(意志決定支援プログラム等)開発を行う予定である。
さらに、本研究を基盤として、必要な老人外科手術評価因子をNCD登録システムに含め、全国レベルでのデータ解析を元に、高齢者がん医療に関する政策に繋がる新たなエビデンスを創出することが可能となることが期待される。
結論
本研究の初年度として、老人外科手術評価プログラム及び医療安全因子評価を含めたNCD、ACSNSQIP国際比較研究のプラットフォームの構築を行い、全国22施設で、NCD登録システムを用いたパイロット研究を開始された。高齢者のがん治療における身体機能、認知機能、QOL維持等に関する高齢者特有の課題抽出と生活・医療上のニーズ把握を目指して、初年度の研究が執り行われた。今後、NSQIPとの共同研究プロジェクトの継続と、データの集積、解析等を進め、診療プログラム(意志決定支援プログラム等)開発と標準化を目標に、本事業を進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2018-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,638,000円
(2)補助金確定額
9,614,000円
差引額 [(1)-(2)]
24,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 203,688円
人件費・謝金 1,292,668円
旅費 1,258,770円
その他 4,635,823円
間接経費 2,224,000円
合計 9,614,949円

備考

備考
研究は予定通り進捗しているが、旅費等予定額を下回り、交付額と確定額に差額が生じた。
補助金確定額と支出合計額の際949円については、自己資金より支出している。

公開日・更新日

公開日
2019-02-20
更新日
-