小児がん拠点病院等の連携による移行期を含めた小児がん医療提供体制整備に関する研究

文献情報

文献番号
201708012A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がん拠点病院等の連携による移行期を含めた小児がん医療提供体制整備に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-007
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 井口 晶裕(北海道大学病院 小児科)
  • 笹原 洋二(東北大学大学院 医学系研究科 発生・発達医学講座 小児病態学分野)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター 血液腫瘍科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学 医学部 脳神経外科)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科)
  • 後藤 裕明(地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 血液・再生医療科)
  • 高橋 義行(名古屋大学大学院 医学系研究科小児科学)
  • 平山 雅浩(国立大学法人三重大学大学院 医学系研究科小児科学分野)
  • 足立 壮一(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻)
  • 家原 知子(京都府立医科大学大学院 医学研究科小児科学)
  • 井上 雅美(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 血液・腫瘍科)
  • 藤崎 弘之(地方独立行政法人 大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 小阪 嘉之(兵庫県立こども病院 小児がん医療センター、血液・腫瘍内科)
  • 小林 正夫(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科小児科学)
  • 田口 智章(九州大学大学院 医学研究院小児外科学分野)
  • 瀧本 哲也(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臨床研究センター 疾患登録管理室)
  • 小俣 智子(武蔵野大学 人間科学部社会福祉学科)
  • 佐藤 真理(順天堂大学大学院 医学研究科 電子医療情報管理学講座)
  • 小川 千登世(国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
13,164,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、拠点病院及び小児がん診療病院における診療連携方法の確立を研究し、チーム医療を推進することで、真に機能する連携のあり方を検討し、長期にわたるフォローアップのしくみを構築することを目的とする。
研究方法
 関東甲信越ブロックで作成した小児がん拠点病院・診療病院の診療実績を収集し公開するシステムを全国展開し解析する。旧松本班で策定したQIをブラッシュアップし、診療の質の見える化を行い、問題点を整理する。小児がんに対する早期相試験の体制整備に関しては、実施施設において求められる施設基準を策定し、小児がん拠点病院と小児がん診療病院等より早期相試験実施可能施設を検討する。また、小児がんに関連する医療者、患者会、製薬会社、規制当局の意見交換のための会議を実施、小児がんに対する薬剤開発の要望を収集する。脳腫瘍診療に関しては、学会登録から拠点病院における実態調査を行い、集約化を探る。長期フォローアップに関しては、小児がん経験者、患者会からのニーズ調査を行い、医療と支援の両面での理想的な長期フォローアップ体制の構築の参考とする。
結果と考察
 今年度は、小児がん拠点病院・診療病院の診療実績を収集し公開するシステムを全国展開した。学会登録データの解析から、小児がん拠点病院制定後、日本の小児がん診療は診療病院数の減少、多診療施設での診療数の増加が認められており、集約化の方向に進んでいることが示された。血液腫瘍よりも固形腫瘍の方が、集約化はより進んでいることが明らかとなった。おそらく、固形腫瘍に関しては複数の診療科が関与するため、小規模の病院で診療することが困難であることが影響していると考えられた。この傾向が、都市部と地方部で同じであるのか、さらには学会登録と情報公開資料による差異はないのか、などが今後検討すべき課題であると考える。情報公開のシステムにより、拠点病院と診療病院の役割が明確化されることが期待される。
 今年度はさらに、旧松本班で策定したQIの改定を行い、「指標算定ワーキンググループ」および「診療録管理士ワーキンググループ」を発足させた。QI指標そのものは、診療情報管理士等の専門職による測定が望ましく、診療録管理士ワーキングの設置により、データの均質化が得られると期待される。QIの測定によって、地域、がん種に応じた診療体制、連携の成熟度、診療の質を含めた評価を可視化することができ、標準治療提供を中心とした、日本の小児がん医療全体の質の向上に寄与することができると考えられた。それぞれの小児がん拠点病院が、自施設の医療の質を自律的に向上させる仕組みに寄与することができ、日本全体の小児がん診療レベルを底上げすることが期待できると考えられた。
 早期相試験実施体制の整備に関しては、患者会、製薬企業、PMDAなどの規制当局、医療者によって意見交換会を開催した。詳細は別報告を参照のこと。
 移行期医療を含めた長期フォローアップ体制を確立するため、小児がん経験者、患者会からのニーズ調査を行った。小児科でのフォローアップよりも、自身の病歴・治療歴・晩期合併症のリスク等を的確に把握した上で、その時の自身の現状に即した適切なアドバイス・治療をしてくれるフォローアップ先への紹介と受診の連携を求める声が多いことがわかった。また、小児がん患者の就職をうまく行うために、復学支援の重要性が明らかになった。今後、小児がん経験者へのインタビュー調査を実施し、さらに患者目線での長期フォローアップ体制の整備を進める計画である。
結論
 小児がん拠点病院を中心とした患者動態調査、QIの作成、小児がん経験者の実態調査などにより、小児がん医療の実態を明らかにすることができた。小児がん患者の集約化と均てん化は、進行していることが明らかとなったが、今後、地方と都市部での違いも明らかにする必要があると考えられた。長期フォローアップに関しては、小児科と成人診療科の連携、フォローアッププログラムの作成が重要であり、復学支援など退院後早期に行う支援が、その後の就職などに影響する可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,113,000円
(2)補助金確定額
16,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
153,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,903,404円
人件費・謝金 3,704,127円
旅費 3,066,650円
その他 1,337,704円
間接経費 3,949,000円
合計 16,960,885円

備考

備考
研究費には885円の自己資金を含む。

公開日・更新日

公開日
2019-01-10
更新日
-