ゲノム情報を活用した遺伝性乳癌卵巣癌診療の標準化と先制医療実装にむけたエビデンス構築に関する研究

文献情報

文献番号
201708008A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報を活用した遺伝性乳癌卵巣癌診療の標準化と先制医療実装にむけたエビデンス構築に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-003
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部 遺伝医学)
研究分担者(所属機関)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学 医学部 産婦人科学)
  • 新井 正美(がん研究所有明病院 遺伝子診療部 )
  • 高田 史男(北里大学大学院医療系研究科 臨床遺伝医学)
  • 戸崎 光宏(相良病院附属ブレストセンター )
  • 中村 清吾(昭和大学 医学部 乳腺外科学 )
  • 福嶋 義光(信州大学 医学部)
  • 真野 俊樹(多摩大学 医療・介護ソリューション研究所)
  • 三木 義男(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 山内 英子(聖路加国際病院 ブレストセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,938,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性乳癌卵巣癌(以下HBOC)のわが国における実態調査と診療の標準化と均てん化、先制医療実装を実現するため,わが国において必要な診療連携体制の整備,エビデンス構築を行うとともに,社会に向けた情報発信を展開する.
研究方法
1:わが国のBRCA遺伝子変異の特徴、対側乳がんの発症率、リスク低減手術の実態を明らかにするため、既存のシステムを更に充実させ、施設認定事業とも連携して2000例を目標に症例登録を進め、データベースを作成する。
2:日本乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)との連携のもとで、特に教育事業および登録事業に重きを置き、施設認定事業を進める。
3:全国的な臨床試験を介してリスク低減手術をとりまく基盤整備の構築と観察・治療効果および安全性の評価などの評価を行う。
4:海外の関連団体や専門家を対象とした実態調査を行う。
5:海外実態調査や海外の実情を参考にしつつ、医療経済学的に適切な普及や保険収載のあり方を考察する。
6:BRCA1及び2に病的変異を認めない家族性乳癌卵巣癌症例を対象とし、他の遺伝子変異を高分解能融解曲線分析等により解析する。
7:急速なHBOC医療案きょうの変化に合わせ、2017年に策定した診療の手引きの改訂の準備に着手する。
8:遺伝性腫瘍診療を提供している施設を対象に、遺伝医療専門職の従事の実態、遺伝カウンセリングや遺伝子診断等、遺伝医療の提供体制の実態調査を行い課題を抽出する。
結果と考察
1:診療連携体制の構築今年度は35の医療機関から2366名のBRCA検査受検者を登録した.遺伝子変異陽性率は20.1%,VUSは7.2%に認められた.
2:JOHBOCと協同で基幹施設申請の受付を行い,基幹23施設,連携13施設,協力24施設より申請を受けた.
3:25例のMRI検診を実施し,症例数を蓄積している.リスク低減乳癌切除術(RRM)およびリスク低減卵管卵巣摘術術(RRSO)の有効性を検証するため,これらの手術後の癌発症を調査した.
4:英国の医療体制を調査する目的で,ロンドンRoyal Marsden Hospitalを訪問し,情報収集を行った.
5:BRCA1/2変異陽性女性において,1)年1回のマンモグラフィとMRIを実施した場合,2)年1回のマンモグラフィと6か月に1回の超音波検査を実施した場合について,両者の費用対効果を比較することとし,解析は現在進行中である.
6:HBOCのクライテリアを満たしながらBRCA変異を認めない日本人におけるRAD51C変異の頻度はおそらく西欧人と同等であり,BRIP1については西欧人とは頻度が異なることが示唆された.
7:2017年10月にHBOC診療の手引きを刊行したところであるが,早急に改訂版作成作業に入ることとした.JOHBOCとの連携で作業を行うほうが継続性という点でもより望ましいと判断し,現在JOHBOCと今後の作業工程について打ち合わせを進めている.
8:アンケート項目はほぼ確定した.来年度には北里大学医学部・病院倫理委員会 観察・疫学研究審査委員会に研究申請を行い,上記アンケート調査を実施する.
9:市民啓発を目的とした公開講座を3回開催した.また本研究班の活動内容内容を紹介し,HBOCについての情報を提供するためのホームページを開設した.


結論
HBOCに関するエビデンスを構築するための症例の集積は順調に進んでおり,全国の診療連携体制も稼働を始めたことから,今後さらに症例集積は進むものと予測している.またこれまでとは異なる形でのHBOC診断例が増えていくことをふまえ,医療現場や一般市民に向けた啓発活動を展開していく必要を認識している.

公開日・更新日

公開日
2018-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,619,000円
(2)補助金確定額
11,619,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,850,571円
人件費・謝金 1,594,210円
旅費 1,051,770円
その他 2,445,236円
間接経費 2,681,000円
合計 11,622,787円

備考

備考
3,787円は自己資金より支出。

公開日・更新日

公開日
2019-03-15
更新日
-