小児期に発症する遺伝性腫瘍に対するがんゲノム医療体制実装のための研究

文献情報

文献番号
201708007A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期に発症する遺伝性腫瘍に対するがんゲノム医療体制実装のための研究
課題番号
H29-がん対策-一般-002
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
熊本 忠史(国立研究開発法人国立がん研究センター (1)中央病院小児腫瘍科、(2)中央病院遺伝診療部門)
研究分担者(所属機関)
  • 中川原 章(佐賀医療センター好生館)
  • 恒松 由記子(順天堂大学医学部小児科学講座)
  • 金子 安比古(埼玉県立がんセンター血液内科)
  • 鈴木 茂伸(国立がん研究センター中央病院眼腫瘍科)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
  • 田尻 達郎(京都府立医科大学医学研究科小児腫瘍外科)
  • 中野 嘉子(国立がん研究センター研究所脳腫瘍連携研究分野)
  • 真部 淳(聖路加国際大学聖路加国際病院小児科)
  • 高木 正稔(東京医科歯科大学院医歯学総合研究科茨城県小児・周産期地域医療学講座)
  • 服部 浩佳(名古屋医療センター臨床研究センター予防治療研究室)
  • 宮坂 実木子(国立成育医療研究センター小児放射線診断科)
  • 野崎 太希(聖路加国際大学聖路加国際病院放射線診断科)
  • 滝田 順子(東京大学大学院医学系研究科生殖・発達・医学専攻小児医学講座)
  • 舩戸 道徳(長良医療センター第二小児科、再生医療研究室)
  • 伊藤 道哉(東北医科薬科大学医学部)
  • 田村 智英子(FMC東京クリニック医療情報遺伝カウンセリング)
  • 田代 志門(国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理研究室)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター臨床研究開発センター)
  • 濱島 ちさと(国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理研究室小児慢性特定疾病情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,398,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国においてがんゲノム医療提供体制を実装するために、特に小児期およびAYA世代に発症する遺伝性腫瘍に焦点を当て、それらを横断的に扱う診療ガイドライン(GL)を整備し、政策として提言することである。これを達成するため、(1)小児に遺伝学的検査を実施する際の小児およびその家族に対する遺伝カウンセリングを横断的に扱ったGL、(2)多岐に渡る遺伝性腫瘍を個別に扱ったGLの整備を主要研究目標とした。
研究方法
(1)小児に遺伝学的検査を実施する際の小児およびその家族に対する遺伝カウンセリングを横断的に扱ったGLの整備:
田村を主研究担当者としたLFS班(熊本、恒松、中野、田代、掛江)グループ会議において、LFSに対する遺伝カウンセリングの整備を開始した。国内外の遺伝性腫瘍の指針、研究などを吟味して、遺伝カウンセリングの要点をまとめ、また、LFS患者およびその家族に対する説明文書・アセント文書を作成することとした。
(2)多岐に渡る遺伝性腫瘍を個別に扱ったGLの整備:
(2-1)LFSの診療GLの作成:濱島の指導の下、LFS班グループ会議でAnalytic Framework (AF)およびClinical Question (CQ)を作成し、有識者会議(全体会議)での評価を経たのちに、Systematic Review (SR)班(濱島他研究協力者3名)においてSRを行い、Evidence Reportを作成する。これに基づいてCQに対する推奨・GLを作成する。
(2-2)遺伝性網膜芽細胞腫(RB)のGL作成:LFSのGL作成手順を参考に(RB)班(鈴木、服部、熊本)グループ会議にてAFとCQを作成、SR班によるSRの後に、GLを作成する。
(2-3) 多岐にわたる遺伝性腫瘍のGLの整備:米国がん学会がClinical Cancer Research誌に公表した小児期/AYA世代に発症する遺伝性腫瘍の推奨サーベイランス法を中心とした、フォローアップとケアの基準に関する17件の論文のうち15件について、26名の担当者を配置し、レビューワークを行った。これらを論文化し邦文雑誌に投稿する。
結果と考察
(1)LFSの遺伝カウンセリングの留意事項をまとめた「リー・フラウメニー症候群の遺伝カウンセリングの手引き」、および、患者およびその家族への説明文書「リー・フラウメニー症候群について」の草案を作成した。
(2-1)AFとCQを作成し、SR班にてAbstract Reviewを行った。現在選択した文献の全文Reviewを実施している。
(2-2)平成30年度に開始予定
(2-3)15件の論文のレビューワークを実施し、有識者会議での評価を終了した。現在、論文化を行っている。

近年、次世代シークエンサー解析により小児がん患者の約10%に既知のがん易罹患性遺伝子(CPG)の生殖細胞系列病的バリアントが検出されたとする報告が続き、遺伝的背景を持つ小児がんは従来考えられていたより多いと想定されている。本邦でも研究や個人向けゲノム解析サービス等のパネル診断検査が普及すると、本人および血縁者の、いわゆるIncidental/Secondary findings (IF/SF)例が出現し、アットリスクにある小児が問題となる。またがん以外の疾患の小児のCPG病的バリアントのIF/SF例も含めるとCPG病的バリアントを有する小児はわが国でも増加するものと推測される。このような遺伝学的診断技術の進歩に対し、個々の遺伝性腫瘍の診断、治療、フォローアップ体制は未整備である。各学会・研究会における本研究の経過報告では、臨床医の本研究に対する強い興味・期待が明らかとなった。
本研究においては、多岐にわたる小児遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリング、診療ガイドラインの整備を目標としているが、小児遺伝性腫瘍において最も高頻度に診断されるであろうLFSを中心にこれらの整備を開始したことは妥当であると考える。他の小児遺伝性腫瘍についても米国がん学会の推奨サーベイランス法を中心としたフォローアップ、ケアの基準をレビューし論文化、公表することは、臨床医の遺伝性腫瘍診療に一定の基準を知らしめることとなり、有意義であると考える。
結論
LFSの遺伝カウンセリングの留意事項をまとめた「リー・フラウメニー症候群の遺伝カウンセリングの手引き」、および、LFS患者およびその家族への説明文書「リー・フラウメニー症候群について」の草案を作成した。
診療GLの整備研究では、LFSのAFとQCを作成し、SRを実施中である。また米国がん学会が策定した推奨サーベイランス、ケアの基準のレビューワークを完了し、現在論文化作業中である。
以上の研究は我が国のゲノム医療診療体制を実装するための基盤整備につながる。

公開日・更新日

公開日
2018-07-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201708007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,617,000円
(2)補助金確定額
8,169,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,448,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,274,813円
人件費・謝金 2,528,804円
旅費 1,652,680円
その他 494,310円
間接経費 2,219,000円
合計 8,169,607円

備考

備考
自己資金:607円

公開日・更新日

公開日
2018-11-14
更新日
2018-12-07