文献情報
文献番号
201708006A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的根拠に基づくがん種別・年代別検診手法の受診者にわかりやすい勧奨方法の開発に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
中山 富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部)
研究分担者(所属機関)
- 加茂 憲一(札幌医科大学医療人材育成センター)
- 伊藤 ゆり(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部)
- 福井 敬祐(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部)
- 雑賀 公美子(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,968,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢化が進む中でがん検診の高齢者受診が増加してきた。特に胃・大腸がん検診は侵襲性の高い内視鏡検査がスクリーニング・精密検査・治療で必須であり、高齢者受診の増加は偶発症のリスクが増し危険である。本研究は胃・大腸がんに焦点をしぼり、個別受診勧奨の対象者を「最適化対象年齢層」として定義し、数理統計モデルを用いてその検討を行うこと、およびその提案に対する対象外年齢(高齢者)への提示法の検討を行うことを目的とした。
研究方法
(研究A)初年度は平成28年度厚生労働科学研究費がん政策研究加茂班で作成した大腸がんマイクロシミュレーション・モデルの改変を行った。〇自然史を30~70歳から30-90歳に延長、〇検診手法に大腸内視鏡検査を追加、〇年齢階級別の大腸内視鏡偶発症データを追加、〇国民生活基礎調査を用いて性・年齢階級・検診手法別の受診率データを追加した。(研究B)最適化対象年齢層から外れると考えられる高齢の検診受診者8名に健康意識、余命のインタビューを行い、利益・不利益バランスの観点から検診中止を推奨する様々なメッセージを示し、反応を聴取した。また最適化対象年齢層の中核となる50-60歳代の国民健康保険加入者で検診未受診者6名に過去の検診受診歴、検診受診のバリアについて聴取した。
結果と考察
(研究A)性・年齢階級別の受診パターンとして生涯検診を受診しない絶対未受診者というグループを設定した。本モデルは予備実験から10~100万人規模では結果のバラツキが大きいことから1000万人規模のシナリオでのシミュレーションを要した。このためスーパーコンピューターでの分析を次年度に計画し、プログラム言語の修正を行っている。
(研究B)75~87歳の男女8名へのインタビューではがん検診の利益は十分理解していたが、不利益が自分に起こりえることを全く受け入れられなかった。様々なパターンの検診中止メッセージに対しては動揺を感じ、医療費削減のための高齢者切り捨てと誤解したり、余命は異なるので年齢で一律に切られるのはいやだと答えていた。一方50-69歳の国民健康保険加入者で検診未受診者6名に対するインタビュー調査では会社勤めの頃は毎年検診を受診していたが退職後は特別な理由がないまま未受診が継続していた。健康・検診に対する知識が乏しくかかりつけ医での年1-2回の血液検査ですべての健康が維持されると誤解していた。
(研究B)75~87歳の男女8名へのインタビューではがん検診の利益は十分理解していたが、不利益が自分に起こりえることを全く受け入れられなかった。様々なパターンの検診中止メッセージに対しては動揺を感じ、医療費削減のための高齢者切り捨てと誤解したり、余命は異なるので年齢で一律に切られるのはいやだと答えていた。一方50-69歳の国民健康保険加入者で検診未受診者6名に対するインタビュー調査では会社勤めの頃は毎年検診を受診していたが退職後は特別な理由がないまま未受診が継続していた。健康・検診に対する知識が乏しくかかりつけ医での年1-2回の血液検査ですべての健康が維持されると誤解していた。
結論
研究Aの大腸がんのマイクロシミュレーション・モデルは平成30年夏までに年齢階級別に、利益と不利益を併記する形で大腸がん検診の最適化対象年齢層を示すことが可能と考えられた。研究Bのインタビュー調査では高齢者の健康や余命に関する意識が強すぎて即時的な予防活動の中止メッセージは受け入れがたいと考えられた。検診の対象者のコアとなる年齢層に受診勧奨とともに終了年齢も伝えその年齢になったら自発的に検診受診を制限する方向が望ましいと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2018-05-25
更新日
-