親子の心の診療を実施するための人材育成方法と診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成に関する研究

文献情報

文献番号
201707010A
報告書区分
総括
研究課題名
親子の心の診療を実施するための人材育成方法と診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-005
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
永光 信一郎(久留米大学 医学部 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 三牧 正和(帝京大学 医学部 小児科学講座)
  • 岡 明(東京大学 医学部 小児科)
  • 川名 敬(日本大学 医学部 産婦人科)
  • 荻田 和秀(りんくう総合医療センター 産婦人科)
  • 山下 洋(九州大学病院 子どものこころ診療部)
  • 堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
  • 岡田あゆみ(土居 あゆみ)(岡山大学病院 小児医療センター 子どものこころ診療部)
  • 道端 伸明(東京大学大学院医学系研究科 ヘルスサービスリサーチ講座)
  • 関口進一郎(慶應義塾大学 医学部 小児科)
  • 村上佳津美(近畿大学医学部 堺病院 心身診療科)
  • 片柳 章子(古賀 章子)(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
  • 大西雄一(東海大学医学部 児童青年精神医学)
  • 内山有子(東洋大学ライフデザイン学部)
  • 山崎 知克(浜松市子どものこころ診療所)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学・ウィメンズヘルス・助産学)
  • 平林 優子(信州大学医学部・保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の子どもを取り巻く社会環境は、少子化、経済格差の拡大、SNSに依存した生活習慣、母子保健課題の地域格差拡大など10年前に比べ大きな変容を認める。子どもの心の問題もライフステージに沿って多彩な様相を呈しており、妊娠期~新生児期は、特定妊婦、要保護児童、虐待死、特別養子縁組の問題を認め、乳幼児期は発達の偏りを軸にした育てにくさの問題、そして思春期には自殺率の上昇や不健康なやせの増加を認めている。これらの問題に共通する点は、それら問題は親を含む家族の心の問題が背景に存在すること、その解決には多職種(小児科医、産婦人科医、精神科医、心理士、保健師、助産師、看護師、養護教諭)と行政の連携が不可欠であることである。本研究の目的は、I. 親子の心の診療に関する課題整理、II. 親子の心の診療に関する様々な専門家による連携体制の構築、III. 親子の心の診療を実施するための人材育成と研修プログラムの開発、IV. 親子の心の診療ガイドライン・保健指導プログラムの作成である。
研究方法
研究期間初年度に、1)福岡県および大分県の全市町村および小児科、産婦人科、精神科の全医療機関の計1,267カ所に親子の心の診療に関する連携課題の実態調査と、2)小児心身医学会に所属する会員500名を無作為に抽出し、子どもの心の問題の診療に関するアンケート調査、3)親子の心の診療が必要な家族の実態調査(860例)、4)子どものこころの診療におけるひとり親家庭の現状(1,388世帯)、5)特別養子縁組の養父母から見た親子支援における意識調査(57組)、6)周産期メンタルヘルスに関する社会的ハイリスク妊婦と家族の支援に関して、助産師に対する半構成的インタビュー、7)思春期の自殺予防対策に関する健やか親子21推進協議会(88団体・学会)の意識調査を実施した。また、既存データの二次利用により、産後2週間検診による要支援褥婦の調査を実施した。
結果と考察
1)調査結果(回収率60.5%):行政機関、医療機関とも山積する母子保健課題に対する危機意識を有し、互いの連携を切望しているが、情報の共有化、具体的連携の在り方の術を有していないことが抽出された。2)調査結果(回収率52%):子どもの心の問題の診療時間の内、親の面談や支援に50%以上の時間を割いていることが全てのライフステージの診療で確認された。親の心の支援や診療の内容は、親、家庭の社会的孤立、子どもの病気への親の対応の苦慮、親自身の問題の3つであった。3)調査結果:小児心身外来を受診した860例の中で母親に精神疾患を認めたものは69例(8%)で支援者がいない場合、子どもの転帰において悪化や中断を多く認めた。4)調査結果:子どものこころの診療所を訪れた1,388世帯の中でひとり親家庭は246世帯(17.7%)あり、子どもにより重症の精神疾患を認め、家族背景でも保護者の精神疾患、被虐待歴などを多く認めた。5)調査結果:監護期間中の公的育児支援が受けにくいことに対する不安が浮き彫りとなった。6)調査結果:周産期メンタルヘルスに関する社会的ハイリスク妊婦と家族の支援において、支援体制の課題、連携の課題、支援者の課題が抽出された。調査結果7(回収率64%):多くの団体・学会が取組める内容として、自殺総合対策大綱に記載されている「SOSの出し方に関する推進」が抽出された。子どもの心の診療には全てのライフステージにおいて、親を含めた家族の心の支援・診療が必要である。子どもが幸せになるためには、親や家族も幸せになれることが必要である。精神疾患を有する家庭やひとり親家庭など、経済的困窮や逆境的境遇から子どものキーパーソン機能を担えなくなった家庭もあり、医療の枠組みだけではなく行政的支援の充実が期待される。さらに周産期領域にはとくに行政機関と医療機関の情報共有の推進が求められ、多職種連携のためのコーディネーターの設置などが期待される。親子の心の診療に携わる人材育成のためにICTやモバイルテクノロジーなどを利用した教育プログラムの開発も今後検討が重要と思われる。

結論
親子の心の診療に関する課題整理として以下の5項目を抽出した。A)親・家族の心の診療の重要性・必要性の共有、B)診療報酬に反映させた親子の心の診療の構築、C)行政機関と医療機関の間での情報共有の推進、D)親子支援の在り方の多職種間相互理解の促進、E)CBT, e-learning等を活用した人材育成の開発。本研究班での目標である「親子の心の診療ガイドライン」作成を次年度に実施し、親子の心の支援が診療報酬に反映されるシステムを構築することが、親子のこころの診療を活性化させると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-05-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201707010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,985,000円
(2)補助金確定額
10,985,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,301,274円
人件費・謝金 267,578円
旅費 1,155,891円
その他 2,670,105円
間接経費 2,535,000円
合計 10,929,848円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
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