妊婦健康診査および妊娠届を活用したハイリスク妊産婦の把握と効果的な保健指導のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201707001A
報告書区分
総括
研究課題名
妊婦健康診査および妊娠届を活用したハイリスク妊産婦の把握と効果的な保健指導のあり方に関する研究
課題番号
H27-健やか-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
光田 信明(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 産科)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201707001B
報告書区分
総合
研究課題名
妊婦健康診査および妊娠届を活用したハイリスク妊産婦の把握と効果的な保健指導のあり方に関する研究
課題番号
H27-健やか-一般-001
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
光田 信明(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 産科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 勝之(日本産婦人科医会 会長)
  • 佐藤 拓代(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 母子保健調査室 室長)
  • 松田 義雄(独立行政法人地域医療機能推進機構 三島総合病院 院長)
  • 上野 昌江(大阪府立大学 地域保健学域看護学類長 教授)
  • 山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター・保健センター長)
  • 板倉 敦夫(学校法人順天堂順天堂大学産婦人科学講座 教授)
  • 小川 正樹(東京女子医科大学病院 産婦人科 母体胎児医学科 教授)
  • 荻田 和秀(りんくう総合医療センター周産期センター産科医療センター長兼 産婦人科部長)
  • 立花 良之(独立行政法人国立成育医療研究センターこころの診療部 乳幼児メンタルヘルス診療科 医長 )
  • 藤原 武男(東京医科歯科大学大学院  医歯学総合研究科国際健康推進医学分野 教授)
  • 倉澤 健太郎(横浜市立大学大学院 医学研究科・生殖成育病態医学 講師)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
妊娠届、妊婦健康診査、出産状況等から子育て困難(児童虐待を含めた)を見いだせる要因を明らかにし、その支援対策を検討することを目的とした。
研究方法
・社会的ハイリスク妊娠(SHP)の定義作成
・SHPから出生した児の予後調査
・妊娠届時と妊婦健康診査時のアセスメント結果を突合(子育て困難感)
・産婦健診(2週間)によるハイリスク母児の把握
・母子保健担当保健師へのアンケート調査
・MHP妊娠チェックリストの有用性の検証
・MH不調妊婦への保健指導開発
・産後うつ病FUに関する文献的検討
結果と考察
特定妊婦からの要保護・支援児童は47.2%であり、その他に比して有意に高頻度であった。
出生児が要対協登録の割合はハイリスク症例18.3%に対し、コントロール症例では1.4%であった。
SHP把握が出生後の児童虐待登録と大きな関連性があると示された。
児童相談所入所児童の母親のハイリスク要因として精神科疾患は相対危険度が極めて高かった。
妊娠中の高血圧、児の先天性疾患が有意であることからSHPとMHPの関与を検討した。

大阪府アセスメントシートの大部分が要保護・要支援の有意関連因子であることが示された。
モデル問診を活用することで、妊娠届出書のリスク評価スコアが低い場合にも15%程度が、医療機関での相談継続対象。出生後の支援はロウリスク群7.0%、ハイリスク群16.2%、スーパーハイリスク群:100%であった。特定妊婦を全例要対協で取扱い26%であった。妊娠届出時に困りごと・悩み・不安があると回答した母親は1.5歳、3歳時にも、子育て困難感が高くなることが明らかとなった。

SHPの定義、特定妊婦との区別、職種間の使用言語の統一等も今後の課題となる。

支援が必要な妊婦の見極めにおいて保健師が重視していることとしては「きょうだい児に対して不適切な育児をしている」「心療内科、精神科への通院歴がある」などが多かった。妊婦に対する保健指導としては「妊娠中から支援することを伝える」「SOSを発信してもらえる関係をつくる」などが多かった。大阪府#8000のデータの中から“親の心の相談”を分析した所、生後2週目の相談が252/618件(0ヵ月児の40.8%)と最も多く、1ヶ月健診に向けて減少していた。産後2週間健診の受診率は70%(542/775)に達し、育児困難事例の発見は2名であった。また、見守りが必要な産婦の中に未受診があり、従来の保健師による訪問事業も依然重要であると考える。産科合併症の中で頻度が高い3疾患の頻度は切迫早産320症例(19.8%)、妊娠高血圧症候群79症例(4.9%), 前期破水57症例(3.5%)であった。JSOG-DBに基づく「医学的」チェックリストでも、1次施設において十分リスク症例を抽出できる可能性が示された。子宮頸部手術後妊娠の早産率26.2%は、未施行妊娠の10.7% に比して、有意に高値(Risk ratio:2.44)を示した。子宮頸部手術後妊娠に社会的ハイリスクが多いと考えられる。母体基礎情報で補正し、多重ロジスティック回帰分析にてSHPと関連する医学的なリスクを検討したところ、慢性高血圧(aOR6.3)、子宮収縮抑制剤使用(aOR1.7)が有意な因子として抽出された。産褥婦人は糖尿病、血液疾患、肝疾患、甲状腺、消化器疾患などでは非常に高率に長期間にわたりフォローアップされているが、特に精神疾患では、フォロー率が低い(0%)ことが明らかとされた。
MHに問題があり介入が必要な妊産婦の頻度は全国で4%と推計された。妊産婦への対応は、助産師(87.4%)や産婦人科医師(53.0%)が行い、臨床心理士(14.3%)、精神科医師(22.4%)への紹介は低かった。専門職の確保と、効率的な管理システムの構築が急務になっている。精神疾患と早産が関連する可能性が推察された。「母子保健MH指導者研修」を作成し、研修前後にアンケートを実施した結果、MH不調の妊産褥婦の対応件数、母子保健関係者の妊産褥婦への対応件数、特定妊婦への対応件数がいずれも統計的に有意に増加した。文献的レビューより、産褥うつ病に代表される妊婦の精神神経疾患は出産後1年程度のフォローアップが実施されるべきである。
平成29年11月東京都で公開シンポジウムを実施。591名の参加があり、テレビ等のマスコミ報道もなされた。
結論
SHP把握は妊娠届、妊婦健診があり、アセスメントすることで出生後の子育て困難(児童虐待)を推測することが可能。妊娠中、産婦健診、乳幼児健診(4ヶ月、1.5歳、3歳)に母児に必要な支援を届けるためには医療・保健・福祉の切れ目ない連携が必要であることが実証的に示された。母親のMHは特に重要な要因であり、精神科も含めた支援体制作りが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2018-11-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-20
更新日
2018-11-01

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201707001C

収支報告書

文献番号
201707001Z